リウマトイド因子陰性多発性関節炎
目次
概要
リウマトイド因子陰性多発性関節炎は、関節リウマチのうち血液検査でリウマトイド因子(RF)が陰性の群を指す臨床概念です。しばしば抗CCP抗体(ACPA)も陰性で、こうした二重陰性例は疾患の多様性が大きく、診断と管理に慎重さが求められます。
臨床像はRF陽性の関節リウマチと重なる部分が多く、対称性の手指・足趾の関節炎、朝のこわばり、全身倦怠などがみられます。一方で骨びらんの進行が比較的緩徐な例もありますが、必ずしも軽症とは限りません。
分類には2010年ACR/EULAR分類基準が用いられ、抗体陰性でも臨床・画像・炎症所見の点数が一定に達すれば関節リウマチと分類されます。早期診断・早期治療が長期転帰を左右します。
治療方針は原則として陽性例と同じく、メトトレキサートを中心とした疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の早期導入と、寛解もしくは低疾患活動性を目標とするtreat-to-target戦略が推奨されます。
参考文献
症状と診断
典型的には、手の中手指節(MCP)関節や近位指節(PIP)関節、足趾の中足趾節(MTP)関節に対称性の腫脹と圧痛が出現します。朝のこわばりは30分以上持続することが多く、日常生活動作に支障を来します。
全身症状として疲労感や微熱、食欲低下などがみられることもあります。抗体陰性例では関節外症状は比較的少ない傾向が報告されていますが、個人差が大きく一般化はできません。
診断では、関節所見の診察に加え、CRPや赤沈などの炎症反応、超音波やMRIでの滑膜炎所見が重要です。RFやACPAが陰性でも、画像所見が診断の助けになります。
鑑別としては、乾癬性関節炎、反応性関節炎、結晶誘発性関節炎、変形性関節症などを考慮します。特にHLA-B27関連の脊椎関節炎との区別が必要になることがあります。
参考文献
発生機序
関節リウマチは自己免疫により滑膜が慢性的に炎症を起こし、肉芽様組織(パンヌス)が形成され、軟骨・骨の破壊に至る疾患です。TNF、IL-6、IL-1といったサイトカインが中心的役割を果たします。
抗体陰性群では自己抗体が病態のドライバーでない分、自然免疫や滑膜の線維芽細胞様細胞、T細胞の亢進など、別の経路の寄与が相対的に大きい可能性が示唆されています。
遺伝的素因と環境因子(喫煙、肥満、微生物叢、粉じん曝露など)が相互作用し、関節局所での炎症誘導・維持に至るのが大まかな枠組みです。
抗体陽性RAで強いHLA-DRB1共有エピトープの関与は陰性群では相対的に弱く、病態生物学も一部異なることがゲノム研究から示されています。
参考文献
遺伝的要因
関節リウマチ全体では遺伝率は中等度(概ね50%前後)とされますが、ACPA陰性群ではより低い(約20%前後)と推定する研究があります。家族内集積はあるものの、環境の影響も大きいと考えられます。
抗体陽性で強いHLA-DRB1共有エピトープの影響は、陰性群では弱まります。その一方で、東アジアではPADI4、世界的にはSTAT4、TNFAIP3など非HLA遺伝子が両群で関与しうることが示されています。
PTPN22は欧州系集団で強い関連が知られますが、日本人では主要変異が稀なため関連は限定的です。これは民族差による遺伝背景の違いを反映します。
ACPA陰性特異的な感受性座位も報告されていますが、効果量は小さく、多因子性であることが示唆されています。
参考文献
環境的要因
喫煙はACPA陽性RAの強い危険因子ですが、陰性RAでは関連が弱いか一貫しないとする報告が多いです。それでも喫煙は多くの疾患で不利益が大きく、禁煙は強く推奨されます。
肥満は炎症環境を助長し、特に女性でACPA陰性RAのリスク上昇と関連する可能性が報告されています。体重管理は予防と治療両面で重要です。
歯周病やPorphyromonas gingivalisなどの口腔細菌叢との関連も注目されています。歯科的ケアは全身の炎症負荷低減に寄与する可能性があります。
シリカ粉じん曝露、低教育歴、ホルモン要因などもリスク修飾因子とされますが、効果の大きさは集団や研究により異なります。
参考文献

