シェーグレン症候群/シカ症候群
目次
定義と概念
シェーグレン症候群は、自分の免疫が唾液腺や涙腺などの外分泌腺を主に攻撃し、口や目の乾燥(シカ:sicca)をきたす自己免疫疾患です。原発性と、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど他疾患に合併する続発性に分けられます。
シカ症候群という用語は、必ずしも自己免疫が証明されていない乾燥症状の総称としても使われ、薬剤や加齢、局所疾患など多様な原因が含まれます。そのため、シカ=シェーグレンとは限らず、鑑別が重要です。
本症は全身疾患であり、腺外臓器(肺、腎、末梢神経、皮膚、関節など)も障害されることがあります。慢性の倦怠感や痛み、発熱など全身症状も認められ、生活の質に大きく影響します。
診断と管理には、リウマチ・膠原病内科、眼科、歯科口腔外科の連携が望まれます。乾燥症状だけでなく、腺外病変や合併症の有無を系統的に評価する必要があります。
参考文献
主要症状
代表的な症状は口腔乾燥と眼乾燥です。口内のネバつき、飲み込みにくさ、味覚変化、虫歯・口腔カンジダ症の増加、反復する耳下腺腫脹などがみられます。
眼では、異物感、ゴロゴロする痛み、充血、視力の揺らぎなどがあり、重症例では角膜障害を生じます。涙や唾液の分泌低下により粘膜のバリア機能が損なわれます。
腺外症状として、関節痛・関節炎、皮疹、レイノー現象、末梢神経障害、間質性肺疾患、腎尿細管性アシドーシス、血管炎などが報告されています。
長期的にはB細胞活性化が背景となるリンパ腫(特にMALTリンパ腫)のリスクが一般より高く、歯科・耳鼻科・眼科と連携しつつ定期的な観察が推奨されます。
参考文献
- EULAR management recommendations for Sjögren’s syndrome (2020 update)
- Nature Reviews Disease Primers: Primary Sjögren’s syndrome
診断と検査
2016年ACR/EULAR分類基準が臨床と研究の共通言語として広く用いられています。抗SSA/Ro抗体、口唇小唾液腺生検(フォーカススコア)、シルマーテストや角結膜染色、唾液分泌量などの項目を総合して判定します。
乾燥症状は薬剤性や加齢性でも起こるため、薬歴と他疾患の鑑別が不可欠です。甲状腺疾患、C型肝炎、サルコイドーシス、IgG4関連疾患などを念頭に置きます。
血液検査では抗SSA/Ro・抗SSB/La抗体、リウマトイド因子、低補体血症、高IgG血症、クリオグロブリン血症などが参考になります。
眼科では角膜フルオレセイン染色、リスアミン緑などの染色評価、歯科では唾液腺造影や超音波、唾液腺シンチグラフィが補助的に用いられることがあります。
参考文献
病因・病態
遺伝素因(HLA-DR/DQ、IRF5、STAT4、TNIP1、BLKなど)と環境要因(感染、ホルモン、喫煙/薬剤など)が相互作用し、Ⅰ型インターフェロンシグネチャーやBAFF上昇を伴う自己免疫が成立すると考えられます。
外分泌腺上皮が抗原提示能を持つ“epithelitis”として関与し、上皮内に異所性リンパ濾胞が形成され、自己反応性B細胞が分化・抗体産生します。
自己抗体(抗SSA/Ro、抗SSB/La)は診断や病態の目印ですが、疾患成立の一側面であり、全ての患者で一致しません。
慢性炎症は腺組織の破壊と機能低下をもたらし、腺外臓器の血管炎や線維化、末梢神経障害など多彩な臨床表現型につながります。
参考文献
治療と予後
治療の基本は乾燥症状の対症療法(人工涙液、点眼薬、唾液分泌促進薬)と、腺外病変に対する全身治療(ヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬、場合により生物学的製剤)です。
眼科ではヒアルロン酸、ジクアホソル、レバミピド、局所シクロスポリンなどが用いられ、口腔ではピロカルピンやセビメリン、歯科的口腔衛生管理が重要です。
重症の腺外病変(肺、腎、神経、血管炎など)ではステロイドや免疫抑制薬、選択的にリツキシマブ等が検討されます。エビデンスは病型により異なります。
長期予後は適切な多職種管理で改善が期待できますが、リンパ腫などの合併症リスク評価と生活の質の支援が欠かせません。
参考文献

