Vermis Crus VI 小脳の灰白質の容積
目次
名称と解剖学的背景
Vermis Crus VIという表現は、実務では「小脳虫部(vermis)のVI葉(Lobule VI)」を指すことが多く、研究グループやアトラスにより命名がわずかに異なります。一般にCrusは半球側のCrus I/IIを指すため、虫部VI(Vermis VI)と読み替えるのが妥当です。
虫部VIは小脳の正中構造で、姿勢・体幹制御や眼球運動の調節に関わる回路と強く機能結合します。上位運動領域や脳幹小脳路と結びつき、感覚運動処理のハブとして働きます。
解剖学的には小脳上面の後上裂近傍に位置し、隣接する虫部VおよびVIIと連続します。組織学的にはプルキンエ細胞層、顆粒層、分子層からなる灰白質が層状に配列します。
研究ではSUITやCERES、FreeSurferなどのアトラスを用いて虫部VIの境界を定め、体積や厚み、灰白質密度の定量指標を得ます。
参考文献
測定と定量化の基礎
体積は主にT1強調MRIからの組織分節により推定し、灰白質・白質・髄液の確率モデルとバイアス補正、平滑化を組み合わせて算出されます。
ボクセルベース形態計測(VBM)は空間正規化後のボクセル単位の灰白質濃度差を統計比較する手法で、群間比較や加齢変化の解析に用いられます。
アトラスベースのロバストな小脳特化正規化(SUITなど)は、小脳の折り畳み形態の個体差を補正し、虫部VIの再現性ある抽出に有用です。
定量値は頭蓋内容積や年齢・性別・スキャナ差で補正し、zスコア化して解釈するのが推奨されます。
参考文献
遺伝と環境の寄与
大規模UK Biobankの画像遺伝学では、小脳灰白質の多くのロバール体積に中高程度のSNP遺伝率が示され、虫部VIを含む小脳領域でおおむね0.4〜0.7の範囲が報告されています。
古典的双生児研究でも小脳体積に高い遺伝寄与が示唆され、残余分散は共有・非共有環境や測定誤差が担います。
個別ロイの点推定はアトラスや前処理に依存し、研究間で幅があるため、幅を持ったレンジとして解釈するのが安全です。
結論として、虫部VI灰白質体積の分散の約40〜70%を遺伝、30〜60%を環境・誤差が占めると見積もるのが妥当です。
参考文献
- Genome-wide association studies of brain imaging phenotypes (UK Biobank)
- Big40 UK Biobank imaging genetics resource
臨床的・生物学的意義
虫部VIは姿勢や体幹運動、サッケード制御に関わり、失調や眼振、歩行障害などの症状と関係します。
機能的連結や課題fMRIでは、虫部VIが感覚運動ネットワークと強く結合し、行動適応や予測制御に寄与することが示されます。
発達や神経発達症では虫部VI/ VIIの容積変化が報告され、自閉スペクトラム症での虫部VI–VIIの低形成の古典的報告があります。
情動調整や自律機能の調律にも関与し、小脳性認知情動症候群の一部回路を支えます。
参考文献
- Functional topography meta-analysis of the human cerebellum
- Cerebellar hypoplasia of vermal lobules VI-VII in autism
解釈と実務上の注意
単独の体積値は診断に直結せず、年齢・性別・頭蓋内容積・スキャナ・アルゴリズムの影響を統制した上で、臨床症状や他の画像指標と合わせて解釈します。
品質管理(QC)は不可欠で、頭動やコントラスト不良、分節漏れ・過剰分節が体積値を歪めます。ENIGMA等のQC手順が参考になります。
再現性はツールとデータ品質に左右されます。テスト・リテスト研究では小脳ロバール体積の級内相関は概ね良好ですが、同一パイプラインの維持が望まれます。
異常が疑われる場合は、再構成・再分節、別法でのクロスチェック、必要時に専門医への紹介と神経学的評価を行います。
参考文献

