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RR間隔

目次

RR間隔の基本

RR間隔とは、心電図における連続する心室の興奮(QRS群)のR波頂点から次のR波頂点までの時間を指し、心拍のリズムと速度を直接反映します。単位はミリ秒で、値が短いほど心拍数は高く、長いほど心拍数は低くなります。

この指標は瞬時の心拍変動の最小単位であり、平均値は安静時心拍数の逆数に相当します。規則的な洞調律ではRR間隔は比較的一定ですが、呼吸性不整脈などの生理的変動も観察されます。

RR間隔は心臓の自律神経調節を映し出す窓でもあり、交感神経と副交感神経のバランス、迷走神経活動、そして循環適応を評価する基盤データとして用いられます。

臨床では不整脈の同定、運動負荷時の心拍応答、急性期虚血や薬剤影響の評価など、多くの場面でRR間隔が観察され、ヘルスケアデバイスでも広く取得される代表的生体信号です。

参考文献

測定と解析法

RR間隔の測定は、心電図のR波検出により実施されます。代表的アルゴリズムであるPan–Tompkins法は、バンドパスフィルタ、微分、整流、移動窓積分を用いてQRSを頑健に抽出します。

得られたRR系列から時間領域指標(平均RR、SDNN、RMSSDなど)や、周波数領域指標(LF、HF、LF/HF)を推定します。周波数解析では等間隔化やWelch法などのスペクトル推定手法が一般に用いられます。

解析前にはアーチファクトや期外収縮の除去、外れ値補間を行い、呼吸、体動、姿勢、薬剤、カフェインなどの交絡要因を統制することが推奨されます。

近年はウェアラブル機器によるPPGからの拍間隔推定も普及していますが、ECG由来のRR間隔に比べて光学ノイズや運動アーチファクトの影響を受けやすく、用途に応じた品質管理が重要です。

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生理学とバイオロジー

RR間隔の瞬時変動(HRV)は自律神経活動の指標とされ、とくに短時間の高周波成分は副交感神経(迷走神経)トーンを強く反映します。呼吸に同期した洞性不整脈は適応的な循環調節の表れです。

低周波成分は交感・副交感の混合影響とされ、血圧反射(バロレフレックス)や血管トーンの揺らぎと関連します。これらの生理機序は環境ストレスへの迅速な循環適応に寄与します。

運動、睡眠、精神的ストレス、体位変換によってRR間隔はダイナミックに変化します。適切な変動性は健康のサインであり、過度の低下は自律神経の柔軟性低下を示唆します。

RR間隔とその分布は加齢や基礎疾患の影響も受け、加齢で一般的にHRVは低下します。持久系アスリートでは副交感神経優位により平均RRが延長し、HRVが高い傾向があります。

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臨床的意義と解釈

RR間隔の短縮は頻脈、延長は徐脈を示し、規則性の喪失は心房細動などの不整脈を示唆します。RR散布図や平均・分散の評価は不整脈の同定に有用です。

急性心筋梗塞や心不全ではHRV低下が予後不良と関連すると報告され、RR間隔の解析はリスク層別化に用いられてきました。解釈には測定条件の標準化が不可欠です。

薬剤(β遮断薬、抗コリン薬、甲状腺薬など)、発熱、脱水、電解質異常がRR間隔に影響します。臨床では症状、血圧、酸素化、基礎疾患と合わせて評価します。

異常値が持続する場合は心電図の再評価、電解質・甲状腺機能の検査、必要に応じてホルターやイベントレコーダーでの長時間記録を検討します。

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遺伝と環境・研究動向

RR間隔(および安静時心拍数)の個人差には遺伝が関与します。双生児研究では心拍変動の遺伝率は概ね40〜60%と報告され、残りは環境要因や測定条件の影響です。

ゲノムワイド関連解析では一塩基多型により説明されるSNPベース遺伝率はおおむね10〜25%と推定され、イオンチャネルや自律神経関連遺伝子座が同定されています。

しかし遺伝率は母集団、年齢、表現型定義、記録時間により変動し、絶対的な定数ではありません。臨床応用では環境・生活習慣の修正可能性に重きを置きます。

今後はウェアラブル連続データと多層オミクスの統合により、個別化された自律神経表現型の解像度が高まると期待されます。倫理的配慮とプライバシー保護が重要です。

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