QTc間隔
目次
- QTc間隔とは何か(定義と臨床的意義)
- 測定と補正式(Bazett・Fridericiaなど)
- 延長が示すリスク:トルサード・ド・ポアントなど
- 原因:先天性と後天性(薬剤・電解質・徐脈など)
- 管理・予防と患者向け助言
QTc間隔とは何か(定義と臨床的意義)
QTc間隔は心電図で心室の興奮から回復までの時間(QT間隔)を心拍数の影響を補正した指標です。心拍が速いほど見かけのQTは短く、遅いほど長くなるため、補正により個人や時刻を超えて比較可能になります。
一般に男性で約450ms未満、女性で約470ms未満が正常範囲とされ、500msを超える延長は致死的不整脈リスクの上昇と関連します。延長の有無は救急や入院管理で重要な安全指標です。
QTcは先天性長QT症候群の診断・リスク層別化に不可欠である一方、後天性(薬剤や電解質異常など)でも延長し、可逆的な原因検索と介入が求められます。
QTcの解釈は測定の正確さ、U波の処理、ベースライン揺らぎなどの技術要因の影響を受けるため、標準化された方法で複数誘導を総合的に評価します。
参考文献
測定と補正式(Bazett・Fridericiaなど)
QTはQRS開始からT波終末までを計測します。T波終末の同定が困難なときは最大傾斜の接線法を用い、U波が明瞭な場合はT波終末と区別して読み取ります。
補正にはBazett式(QTc=QT/√RR)が広く使われますが、心拍数が極端に高い・低いと過補正・過小補正になりうる欠点があります。
Fridericia式(QTc=QT/³√RR)やFramingham式など代替式は、高心拍域での精度がより良好とされ、薬剤安全性評価などで推奨される場面があります。
臨床ではECG機器の自動算出値をそのまま用いず、波形品質や心拍数域を確認し、必要に応じて手計測や別補正式で再評価します。
参考文献
- LITFL ECG Library: QT interval
- AHA/ACCF/HRS Recommendations for the Standardization and Interpretation of the ECG
延長が示すリスク:トルサード・ド・ポアントなど
QTc延長は心室再分極の遅延を示し、早期後脱分極(EAD)を介して多形性心室頻拍の一型であるトルサード・ド・ポアント(TdP)を誘発し得ます。
TdPは失神、けいれん様発作、突然死の原因となり、特にQTc>500ms、女性、徐脈、低K/低Mg、薬剤併用などでリスクが高まります。
先天性長QT症候群では遺伝子型ごとに誘因が異なり、運動(LQT1)、驚愕音・情動(LQT2)、睡眠時・安静時(LQT3)にイベントが集中します。
後天性延長では原因薬の中止、電解質是正、硫酸マグネシウム静注、オーバードライブペーシングなど迅速な対応が予後を左右します。
参考文献
原因:先天性と後天性(薬剤・電解質・徐脈など)
先天性長QT症候群は主にKCNQ1、KCNH2、SCN5Aなどのイオンチャネル遺伝子の病的バリアントで生じ、常染色体優性遺伝が典型です。
後天性は抗不整脈薬、マクロライド・フルオロキノロン系抗菌薬、抗精神病薬など多くの薬剤で起こり、相互作用や腎機能低下でリスクが増します。
低カリウム血症、低マグネシウム血症、低カルシウム血症、著明な徐脈、心不全、虚血、甲状腺機能低下もQTc延長の重要な環境因子です。
女性は男性よりも生理的にQTcが長く、薬剤性延長やTdPのリスクが高いことが知られ、用量調整やモニタリングに配慮します。
参考文献
管理・予防と患者向け助言
先天性ではナドロールやプロプラノロールなどのβ遮断薬が一次予防の基盤で、高リスク例では植込み型除細動器や左心交感神経節切除が検討されます。
後天性では原因薬の中止・代替、K>4.0mEq/L、Mg>2.0mg/dLの維持、徐脈の是正が基本で、入院下での心電図モニタリングが推奨されます。
予防には処方前の薬剤相互作用チェックとCredibleMedsでのリスク確認、脱水予防、胃腸炎時の補液、定期的な心電図検査が役立ちます。
家族歴(若年突然死、失神)や症状を医療者に共有し、救急受診時にはQT延長の既往と内服薬を必ず提示するよう患者教育を行います。
参考文献

