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PR間隔

目次

PR間隔の基礎と概要

PR間隔は心電図でP波の開始からQRS波の開始までの時間で、心房から心室へ電気信号が伝わる総時間を表します。主に心房内伝導、房室結節、ヒス束、近位プルキンエ系の遅延の総和で決まります。成人の通常の安静時ではおおむね120〜200ミリ秒の範囲に収まります。

この時間は自律神経の影響を強く受け、迷走神経優位で延長し、交感神経優位で短縮します。年齢、体格、心拍数、電解質、体温、そして薬剤(β遮断薬、非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬、ジゴキシンなど)も変動要因です。

PR間隔が長い場合は第一度房室ブロックと定義され、房室結節やヒス束での伝導遅延が示唆されます。短い場合は房室結節をバイパスする副伝導路の存在(例:ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)や房室結節伝導の促進が考えられます。

心電図の記録条件(紙送り速度25mm/秒、増幅10mm/mV)が標準で、1小マスは0.04秒を意味します。PR間隔は通常、P波と基線が明瞭な誘導(しばしばII誘導)で複数拍の平均をとって評価します。

参考文献

正常範囲と数値解釈

一般成人の正常値は120〜200msです。200msを超えると第一度房室ブロックと診断されますが、若年者やアスリートでは迷走神経緊張により軽度延長がみられても必ずしも病的とは限りません。

120ms未満の短縮は、デルタ波を伴えば副伝導路による心室早期興奮(WPW)が疑われます。デルタ波がなくてもLGL様の房室結節高速伝導などが原因となることがあります。

PR延長は加齢、高迷走神経緊張、虚血、炎症、浸潤性疾患、甲状腺機能低下、薬剤など多因子で起こり得ます。短縮は交感神経亢進、若年、体位変化、薬剤(アトロピンなど)でみられます。

臨床的には、顕著な延長(例:>300ms)で運動耐容能低下、めまい、失神がある場合はさらなる評価や治療を検討します。短縮で頻拍発作があれば不整脈専門医紹介が適切です。

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生理学的意義と役割

PR間隔の大部分を占める房室結節での遅延は、心房収縮で心室に血液を送り込む時間を確保し、心拍効率を高める役割があります。これにより心室の前負荷が最適化されます。

房室結節は高頻度の心房興奮を“フィルター”するゲートとしても働き、心房頻拍や心房細動時に心室への伝導を制限し、過度な心拍上昇から心室を保護します。

自律神経調節は瞬時にPR間隔を変動させ、生理的な需要(運動やストレス)に応じて心拍出を調整します。この可塑性は生体恒常性に重要です。

遺伝子レベルではイオンチャネルや結合組織、シグナル伝達に関わる多遺伝子がPR間隔に寄与し、自然な個人差の一部を形成します。

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測定方法と理論

標準紙送り速度25mm/秒では1小マス0.04秒、1大マス0.20秒です。P波開始点は等電位線からの最初の上昇(または下降)で、QRS開始は最初の急峻な偏位点と定義します。

通常はII誘導で測りますが、P波が不明瞭な場合はV5、V1などP波が見やすい誘導を選びます。不整脈や基線動揺がある場合は複数拍を平均し、整合性を確認します。

デジタル心電図ではアルゴリズムがテンプレートマッチングや微分法で自動計測しますが、アーチファクトや異常波形での誤検出があるため目視確認が推奨されます。

理論的には、心房求心性伝導、房室結節の緩徐伝導特性、ヒス・プルキンエ系の高速伝導の連続過程を時間に投影したものがPR間隔であり、各部位の遅延が加算されると理解できます。

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異常時の原因・評価・対応

PR延長の可逆的原因として薬剤(β遮断薬、ベラパミル/ジルチアゼム、ジゴキシン)、電解質異常、虚血、炎症性疾患、甲状腺機能低下などがあり、原因検索と修正が第一です。

無症候の軽度第一度房室ブロックは経過観察が一般的ですが、症候性や高度延長、QRS幅の増大を伴う場合は専門医評価、ホルターや電気生理学的検査を検討します。

短PRでデルタ波があり、発作性頻拍や失神がある場合は副伝導路による不整脈リスクがあるため、リスク層別化やカテーテルアブレーションが推奨されることがあります。

ガイドラインは個別状況に応じた管理を示しており、徐脈や伝導障害の症候性例ではペースメーカの適応を含め多面的に判断します。

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