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インターロイキン-1受容体拮抗タンパク質(IL-1ra)血清濃度

目次

定義と概要

インターロイキン-1受容体拮抗タンパク質(IL-1ra)は、炎症性サイトカインであるIL-1α/IL-1βの受容体(IL-1R1)に競合的に結合し、シグナル伝達を阻害する内因性の拮抗分子です。炎症のブレーキ役として働き、過剰なIL-1シグナルによる組織障害を抑える生体防御の重要な一員です。

IL-1raは主に単球・マクロファージ、好中球、上皮・内皮細胞、脂肪細胞など多様な細胞から誘導されます。感染や組織損傷、代謝ストレスなどでIL-1が誘導される状況では、並行してIL-1raも上昇し、炎症の振幅を制御します。

血中では遊離型IL-1raが循環し、必要に応じてIL-1R1に結合してシグナルを遮断します。IL-1raの測定は、全身性炎症や代謝性炎症の負荷を反映する補助的指標として研究・臨床で用いられます。

IL-1raの遺伝子はIL1RNで、プロモーターやイントロンの多型が産生量に影響することが知られています。また、肥満・喫煙・感染症・薬剤など環境要因も大きく左右し、個人差の大きいバイオマーカーです。

参考文献

生物学的役割と調節

IL‑1は発熱、白血球活性化、血管内皮活性化など多面的な炎症促進作用を持ちます。IL‑1raはこのシグナルを受容体レベルで遮断し、炎症の過剰な増幅を防ぐことで、感染制御と組織保護のバランスをとっています。

炎症の初期にはIL‑1が先行して上昇し、続いてIL‑1raが誘導される時間経過が観察されます。これは負のフィードバック機構の一部であり、炎症終息期への移行に寄与します。

脂肪組織はIL‑1raの主要な産生源の一つで、肥満では血中IL‑1raが高値となることが多いです。これは代謝性炎症の生物学的指標となり、インスリン抵抗性や2型糖尿病の発症リスクとも関連します。

IL‑1raは治療薬アナキンラ(recombinant IL‑1ra)の概念的基盤でもあり、自己炎症性疾患や関節リウマチなどで臨床応用されています。内因性IL‑1raの動態理解は、こうした治療の効果予測や副作用理解にも有用です。

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測定法と前分析要因

IL‑1raの定量には主にサンドイッチELISA、電気化学発光(MSD)、ビーズベース多項目測定(Luminex)が用いられます。特異抗体で抗原を捕捉・検出する免疫測定法であり、感度・ダイナミックレンジ・交差反応性が選択のポイントです。

サンドイッチELISAは高い特異性と再現性が特徴で、単一アナライトの定量に適します。多項目測定は限られた検体量で多数のサイトカインを同時測定でき、探索研究に有用です。

前分析要因として、採血時間、空腹・食後、運動直後、喫煙、感染症状の有無、保存温度や凍結融解回数などが結果に影響します。標準化された手順での採血・処理が重要です。

各測定キットの添付文書には健常者データや検出限界、交差反応の情報が記載されており、検査室間差を理解する助けになります。結果解釈は同一法・同一ロットの基準と併せて行う必要があります。

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臨床的意義

血清IL‑1raは、全身性炎症(敗血症、自己炎症性疾患、関節リウマチ活動性)、代謝性炎症(肥満、脂肪肝、インスリン抵抗性)で上昇します。高値はIL‑1シグナルに対する拮抗応答や脂肪組織からの放出増大を示唆します。

敗血症ではIL‑1raが大きく上昇し、炎症暴走に対する内因性制御の指標となります。一方で高値そのものが病態悪化を意味するわけではなく、背景の炎症負荷を反映することが多いです。

前向き研究では、基礎的にIL‑1raが高い人は将来の2型糖尿病リスクが高い傾向が報告されています。代謝リスク層別化における補助指標として検討されてきました。

薬理学的には、組換えIL‑1ra(アナキンラ)が関節リウマチや自己炎症性症候群で有効であることから、IL‑1経路抑制の有用性が支持されています。血清IL‑1raの内因性変動は治療戦略の理論的背景となります。

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遺伝学と個体差

IL1RN遺伝子の多型、とくにイントロン2のVNTR多型はIL‑1ra産生量に影響することが古くから報告されています。特定アレルは高値傾向と関連し、集団間差も示されます。

大規模ゲノム関連解析(GWAS)は、IL‑1raなど複数の循環サイトカインに影響する座位を同定し、血中濃度の遺伝的規定性を支持しています。遺伝率は中等度で、環境要因の寄与も大きいことが示唆されます。

プロテオミクス規模の研究では、循環タンパク質濃度の遺伝率は標的ごとに広い幅をとり、IL‑1raでも人種・測定法・年齢層により推定が変動します。

したがって、個人のIL‑1ra値の理解には遺伝背景に加えて、体格、喫煙、感染・慢性疾患、薬剤、検体処理など多因子を総合的に考慮する必要があります。

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