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CRP値

目次

CRP(C反応性タンパク)とは何か

CRPは、体内で炎症が起きたときに肝臓で作られる急性期反応タンパクの一つです。細菌感染、組織損傷、自己免疫疾患などで上昇し、症状の有無にかかわらず炎症の存在と強さを反映します。血液検査で簡便に測定でき、採血当日から翌日には結果が得られるのが一般的です。

CRPはサイトカイン(主にIL-6)の刺激を受けて合成が促進され、発症後6〜8時間で上がり、48時間前後でピークに達します。その後の低下スピードは半減期(約19時間)にほぼ依存し、産生が止まれば比較的速やかに下がります。

検査報告では通常mg/L(ミリグラム毎リットル)で表示されますが、施設によってはmg/dLで表されることがあります。換算は1 mg/dL=10 mg/Lです。基準範囲は測定法や集団によってわずかに異なるため、解釈は検査室の基準値に従う必要があります。

CRPは非特異的な指標であるため、上昇だけで原因疾患を断定することはできません。診断には病歴、診察所見、他の検査(白血球数、プロカルシトニン、画像検査など)を組み合わせることが重要です。

参考文献

測定法とハイセンシティビティCRP

CRPの定量には免疫比濁法、免疫透過散乱(ネフェロメトリー)、ELISAなどの免疫学的手法が用いられます。抗CRP抗体と血中CRPが反応して複合体を形成し、それに伴う光学的変化を測る原理が代表的です。

心血管リスク評価に用いる高感度CRP(hs-CRP)は、ごく低濃度(0.1〜10 mg/L)を精密に測れるよう最適化されたアッセイです。一般的なCRPと原理は同じですが、感度と精度の要件が異なります。

測定の標準化には国際的な基準物質が用いられます。欧州委員会JRCのERM-DA474/IFCCはCRP測定のトレーサビリティ確保に使用され、測定間の比較可能性を高める役割を担います。

採血条件(溶血、リピッド、希釈)、急性炎症の同時存在、抗体のロット差などが測定値に影響し得ます。連続測定での変動を評価する際は、同一法・同一施設での再検が推奨されます。

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臨床的意義と解釈の基本

CRPは炎症の存在と活動性を反映するため、感染症、蜂窩織炎や肺炎などの急性感染、リウマチ性疾患の疾患活動性、術後・創傷治癒の経過把握など幅広く用いられます。上昇の程度は一般に細菌感染で高く、ウイルス感染では中等度上昇にとどまる傾向があります。

hs-CRPは、安定期の心血管リスク層別化に応用され、<1、1–3、>3 mg/Lがそれぞれ低・中・高リスクの目安とされています。ただし、10 mg/Lを超える場合は急性炎症の影響を除外するため、2週間後の再検が推奨されます。

CRPは非特異的であるため単独で診断根拠にはなりません。例えば自己免疫疾患のフレア、歯周炎、肥満、喫煙、慢性腎臓病などでも軽度〜中等度の上昇がみられることがあります。

解釈の実務では、ベースラインからの変化、臨床症状、他検査との整合性、時間的推移を重視します。CRPが速やかに低下していく場合は治療反応性が良好と考えられ、逆に停滞・再上昇は合併症や新規感染の可能性を示唆します。

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遺伝・環境要因とCRPの個人差

CRPの基礎値には個人差があり、双生児・家系研究から遺伝要因の寄与(遺伝率)は概ね25〜40%と報告されています。CRP遺伝子やIL6、LEPRなど複数遺伝子の多型が血中濃度に影響します。

ゲノムワイド関連解析(GWAS)では、CRP濃度に関わる多数の座位が同定され、全体としては中等度の遺伝的寄与にとどまることが示されています。疾患リスクとの因果関係は限定的で、心血管疾患に関してはCRP自体は因果的でない可能性が示されています。

環境・生活習慣要因は大きく、肥満・内臓脂肪、喫煙、身体不活動、慢性歯周病、閉経やホルモン療法などがベースラインCRPを押し上げます。減量や有酸素運動、禁煙はCRP低下に結びつきます。

総合すると、遺伝約30%前後、環境・行動・疾患背景が70%前後というのが現実的な目安です。ただし集団や年齢、測定法で比率は変動し得るため、絶対視は禁物です。

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限界と補助的な知識

CRPは肝臓で作られるため、重度の肝不全では炎症があっても十分に上がらないことがあります。逆に高齢、肥満、慢性腎疾患では軽度高値が持続し、背景疾患の存在を示唆します。

赤沈(ESR)はCRPと並ぶ炎症マーカーですが、反応が遅く、貧血や蛋白異常の影響を受けやすいのに対し、CRPは変化に敏感で早期に反映されます。状況に応じて両者を使い分けるのが一般的です。

心血管予防でhs-CRPを使う際は、感染や外傷がない安定時に、少なくとも2回(2週間以上あけて)測定し、平均で評価します。JUPITER試験ではスタチンがCRPと心血管イベントをともに低下させましたが、CRP自体が原因というより炎症の指標とみなされます。

CRPは補体の古典経路を活性化し、リン脂質(ホスホコリン)を認識して死細胞・病原体の除去を助ける自然免疫のパターン認識受容体様分子です。この生物学的役割は感染防御と組織修復に重要です。

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