CCモチーフケモカイン4(CCL4)血清濃度
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概要
CCL4は別名MIP-1βとも呼ばれるケモカインで、主にマクロファージやT細胞から分泌され、受容体CCR5などを介して免疫細胞の遊走を誘導します。血清中のCCL4濃度は安静時には低値ですが、感染や組織傷害、自己免疫反応などの炎症ストレスで上昇しやすい特徴があります。
臨床現場ではCRPやIL-6のような汎用炎症マーカーほど一般的ではないものの、研究や一部の疾患領域では炎症の相や免疫応答の偏り(例えばT細胞や単球の活性化)を補助的に評価する目的で測定されます。測定値はアッセイ手法(ELISA、Luminex、電気化学発光、デジタル免疫アッセイ)や前処理条件の影響を強く受けます。
CCL4の遺伝子は第17染色体のケモカイン遺伝子クラスターに位置し、近傍にはCCL3やCCL5など関連遺伝子が存在します。大規模プロテオームGWASでは、CCL4の血中濃度に影響する遺伝的変異(pQTL)が同定されており、生得的な産生能の個人差が示唆されています。
一方で、急性・慢性の炎症、感染症、肥満や喫煙などの生活習慣、薬剤(副腎皮質ステロイドなど)による影響が実測値に大きく反映されます。したがって、CCL4濃度の解釈では測定背景と併せた総合判断が不可欠です。
参考文献
- UniProtKB - CCL4 (MIP-1β) entry
- NCBI Gene: CCL4
- Sun et al., Genomic atlas of the human plasma proteome (Nature, 2018)
遺伝要因と環境要因
血清CCL4濃度の個人差には遺伝と環境の双方が寄与します。ゲノムワイド関連解析はCCL4を含む多くのサイトカイン・ケモカインでcis/trans pQTLを報告しており、遺伝背景が基礎的な分泌レベルに一定の影響を与えることが示されています。
ただし、炎症は本質的に環境・病態依存の現象であるため、感染症、自己免疫疾患、代謝異常、喫煙、肥満、加齢、薬剤などの環境的・後天的要因の寄与が大きいのが一般的です。急性炎症では環境因子が短期的変動の大半を規定します。
複数の集団ベース研究では、サイトカイン濃度のSNPベース遺伝率は概ね一桁〜数十%台にとどまることが示唆されています。これはCCL4にもおおむね当てはまり、遺伝要因は重要だが支配的ではないという位置づけです。
総じて、血清CCL4の変動は環境>遺伝という関係が想定されます。比率の正確な数値は測定系と集団で異なりますが、研究的には遺伝10〜30%、環境70〜90%程度と見積もられることが多く、解釈ではこの不確実性を踏まえる必要があります。
参考文献
- Ahola-Olli et al., Genome-wide study identifies loci influencing cytokine concentrations (Nat Commun, 2017)
- Sun et al., Genomic atlas of the human plasma proteome (Nature, 2018)
- Ferkingstad et al., Large-scale integration of the plasma proteome (Nature, 2021)
測定法と前解析要因
CCL4の定量には、サンドイッチELISA、ビーズベース多項目測定(Luminex/xMAP)、電気化学発光(Meso Scale Discovery)、超高感度デジタル免疫アッセイ(Simoa)などが用いられます。いずれも特異抗体でCCL4を捕捉・検出する免疫測定法です。
サンドイッチ法の原理は、固相に固定した捕捉抗体で抗原(CCL4)を保持し、別の標識検出抗体でシグナルを増幅して定量するものです。標識は酵素、蛍光、発光などが用いられ、検出下限やダイナミックレンジはプラットフォームごとに異なります。
前解析要因(採血タイミング、血清・血漿の違い、凍結融解回数、ヘモリシス、保存温度、安定化添加剤の有無など)は測定誤差の主要因で、施設間差の原因にもなります。マトリックス差や標準品のキャリブレーションも比較を難しくします。
再現性の確保には、同一プラットフォーム・同一ロットを用いた縦断測定、適切な品質管理サンプルの併用、検量線と希釈直線性の確認が重要です。可能であれば複数法での相互検証が推奨されます。
参考文献
- R&D Systems: Principles of sandwich ELISA
- Luminex xMAP Technology Overview
- Meso Scale Discovery Technology Overview
- Quanterix Simoa Technology
解釈と“基準値”の考え方
CCL4は標準的な臨床検査項目ではなく、普遍的な基準範囲は確立していません。健常者の血清・血漿では多くのアッセイで検出下限付近〜数十pg/mLに分布し、炎症・感染で数百pg/mL以上に上昇し得ますが、絶対値は測定系依存です。
したがって、単回の絶対値で“正常/異常”を即断するよりも、同一方法での経時変化、臨床症状、他の炎症・臓器障害マーカー(CRP、IL-6、フェリチン、D-dimer等)との整合性を重視するのが実務的です。
高値の鑑別としては、ウイルス・細菌感染、自己免疫疾患の活動性、移植拒絶、代謝炎症(肥満・NAFLD/NASH)、悪性腫瘍の微小環境変化などが挙げられます。薬剤性変動(ステロイド、免疫抑制薬)も考慮します。
検査の目的が研究か臨床かで閾値設定は異なります。リスク層別化や予後予測のカットオフは研究ごとに異なるため、外部報告の閾値をそのまま臨床に持ち込むことは避け、施設内バリデーションが必要です。
参考文献
- de Jager et al., Cytokine profiles in healthy subjects (PLoS One, 2009)
- Del Valle et al., Inflammatory cytokine signatures in COVID-19 (Nat Med, 2020)
臨床・生物学的意義
CCL4はCCR5陽性のT細胞、単球、NK細胞などを標的組織に呼び寄せる役割を担い、感染防御や組織修復に寄与します。HIVはCCR5を侵入受容体として利用するため、CCL4はCCR5競合を通じてウイルス侵入に拮抗し得る点も注目されてきました。
疾患では、ウイルス感染(COVID-19や慢性肝炎など)、自己免疫疾患(関節リウマチ、SLEの活動性)、動脈硬化・代謝炎症(肥満、NAFLD/NASH)、移植拒絶、腫瘍免疫などで濃度上昇が報告されています。病態の相により他のケモカイン群と協調して免疫細胞のリクルートを調節します。
一方で、過剰なCCL4シグナルは過炎症を助長し、組織障害や線維化に関与し得ます。慢性炎症の場では、ケモカインネットワークの恒常性破綻が病勢維持に寄与する可能性があります。
現状、CCL4単独で標準診療の意思決定に使われる場面は限定的ですが、マルチマーカーの一成分として疾患活動性や予後層別化に有用性が検討されています。適切なエンドポイントに対する独立予測能の検証が今後の課題です。
参考文献

