鼻腔ポリープ
目次
概要
鼻腔ポリープは、鼻腔や副鼻腔の粘膜が慢性炎症によって浮腫化し、ぶどう房状に突出した良性のポリープ状病変を指します。悪性腫瘍ではなく、慢性副鼻腔炎に併存することが多く、特にいわゆるCRSwNP(鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎)の主要所見です。
病態の中心にはバリア機能低下と免疫応答の偏りがあり、欧米では2型炎症(IL-4/IL-5/IL-13を介する好酸球優位)が優勢です。アジアでは好中球主体の炎症がみられる地域差も報告されています。
臨床的には鼻閉、嗅覚低下、鼻漏、後鼻漏、顔面圧痛などの症状を引き起こします。喘息やアスピリン不耐症(AERD)と合併しやすく、QOL低下の原因となります。
診断は内視鏡での視認とCTによる副鼻腔の陰影評価が基本です。治療は局所ステロイドを第一選択とし、難治例では内視鏡下副鼻腔手術や生物学的製剤が適応となる場合があります。
参考文献
疫学とリスク要因
鼻腔ポリープは一般人口の約1〜4%にみられ、中高年男性にやや多いとされます。地域や診断基準によって有病率は変動し、基礎疾患の有無でも異なります。
リスク要因としては慢性副鼻腔炎、喘息、アレルギー性鼻炎、AERD、嚢胞性線維症(CF)、原発性線毛運動不全症(PCD)などが知られています。喫煙や大気汚染、反復感染も悪化因子です。
家族内集積を示す報告があり、遺伝的素因の存在が示唆されます。一方で、生活環境や曝露因子の影響も大きく、環境改変が症状に影響することが多いです。
医療資源へのアクセスや認知度も疫学に影響します。軽症例は未診断のまま経過することがあり、実際の有病率は報告より高い可能性があります。
参考文献
症状と診断
典型的な症状は、持続する鼻づまり、においが分かりにくい(嗅覚低下)、水様性の鼻漏、後鼻漏、顔面の圧迫感です。咳や睡眠障害、疲労を伴うこともあります。
内視鏡で淡黄色〜灰白色の半透明なポリープを確認します。片側性の硬い病変や出血を伴う場合は腫瘍性病変も鑑別に挙がるため精査が必要です。
副鼻腔CTでは粘膜肥厚や陰影分布を評価し、手術計画に役立ちます。アレルギー検査や好酸球数、IgEなどの評価は病型把握に有用です。
診断は臨床像、内視鏡、画像所見の総合で行います。難治性や再発例では併存疾患の検索(喘息、AERD、CF、PCD)も重要です。
参考文献
遺伝学的背景
家族歴を有する患者のリスク上昇が示され、遺伝的素因が関与します。ただし、疾患全体の遺伝率は高くなく、環境要因の寄与が大きいと考えられています。
CFTR遺伝子変異を伴う嚢胞性線維症では鼻茸の合併が非常に多く、小児でも認められます。原発性線毛運動不全症(DNAH5など)も副鼻腔炎とポリープ形成に関与します。
免疫関連遺伝子(HLAクラスIIなど)や2型炎症を制御する経路(IL-4/IL-5/IL-13軸、TSLPなど)の多型が感受性に関与する可能性が報告されています。
アスピリン不耐症例ではロイコトリエン合成関連遺伝子(LTC4Sなど)の多型が関連する報告があり、病態の不均一性を示唆します。
参考文献
治療と予後
第一選択は局所ステロイドスプレーで、症状緩和とポリープ縮小が期待できます。急性増悪や重症例では短期の全身ステロイドを考慮します。
内視鏡下副鼻腔手術(ESS)は解剖学的通気・排泄の回復と薬剤到達性の改善を目的とします。術後も局所治療の継続が重要です。
難治例には抗IL-4/13抗体(デュピルマブ)や抗IgE抗体、抗IL-5経路薬などの生物学的製剤が適応となる場合があります。適応は表現型・エンドタイプ評価に基づきます。
再発率は低くなく、長期管理が必要です。併存する喘息、アレルギー、AERDなどの包括的管理により予後が改善します。
参考文献

