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関節リウマチ患者における股関節骨折リスク

目次

定義と背景

関節リウマチ(RA)は自己免疫性の慢性炎症疾患で、関節破壊と機能障害を来します。RAでは全身性炎症や治療薬の影響、活動量低下などが重なり、骨密度低下と脆弱性骨折のリスクが高まります。

股関節骨折は高齢者の転倒を契機に起こることが多く、寝たきりや死亡率の上昇に直結します。RA患者では一般集団と比べ股関節骨折の相対リスクが有意に高いことが報告されています。

骨折リスクの評価には骨密度(BMD)だけでなく、年齢、性別、喫煙歴、既往歴、ステロイド使用、RAの有無等を組み合わせたスコアリングが推奨されています。代表的なツールがFRAXです。

本用語では、RAにおける股関節骨折リスクの病態、危険因子、検査・予防・治療の要点を概説し、患者・家族と医療者の意思決定を支援します。

参考文献

危険因子

RA特有の危険因子として、慢性炎症による骨代謝異常、関節痛に伴う身体活動量低下、関節変形や筋力低下による転倒リスク増大が挙げられます。

薬物関連では、グルココルチコイド(副腎皮質ステロイド)の使用量と期間が骨密度低下と骨折リスクに比例して増加します。低用量でも長期では注意が必要です。

一般的危険因子(高齢、女性、喫煙、過度の飲酒、低体重、ビタミンD不足、既存骨折、家族歴)に加え、RA自体がFRAXでも独立したリスク因子として扱われます。

これらの因子は相互に影響し合うため、単一要因ではなく総合的評価が重要です。転倒リスク評価や生活環境の見直しも骨折予防の一環です。

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発生機序

RAの炎症性サイトカイン(TNF、IL-6等)はRANKL経路を介して破骨細胞活性を亢進し、骨吸収が増加します。結果として骨密度が低下し脆弱性が高まります。

長期ステロイドは骨芽細胞機能抑制、カルシウム代謝異常、筋力低下を引き起こし、骨量減少と転倒リスクの双方を悪化させます。

活動制限による機械的負荷の減少は骨形成刺激を弱め、サルコペニアやバランス機能低下を通じて転倒しやすい状態を作ります。

股関節周囲の筋力低下や可動域制限、視力低下や多剤併用などの併存要因が重なり、最終的に転倒・骨折に至る複合的メカニズムが成立します。

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検査と診断

骨折リスク評価の基本はDXA(腰椎・大腿骨近位部)の骨密度測定で、Tスコアにより骨粗鬆症の診断を行います。RAでは大腿骨近位部の評価が特に重要です。

FRAXを用いて10年骨折確率(股関節・主要骨粗鬆症)を推定し、治療介入のしきい値を検討します。ステロイド用量の入力やRA項目の設定がポイントです。

脊椎椎体骨折の有無はVFAやX線で確認し、ビタミンD、カルシウム、腎機能、甲状腺機能などの検査で二次性要因を評価します。

転倒リスク評価(歩行速度、起立テスト、居住環境の危険箇所確認)を併せて行うと、実臨床での予測精度と介入効果が高まります。

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予防と治療

生活習慣介入として、転倒予防(住環境整備、バランス訓練)、筋力トレーニング、適切な蛋白・カルシウム摂取、ビタミンD補充が基本です。禁煙と節酒も推奨です。

薬物療法はリスク閾値を超える場合に検討し、ビスホスホネート、デノスマブ、テリパラチド、ロモソズマブ等を個々の状況に応じて選択します。

ステロイド使用は最小有効量・最短期間を心がけ、可能ならば生物学的製剤やJAK阻害薬等で炎症制御を強化し骨量保護を図ります。

定期的なDXAフォローとアドヒアランス支援、転倒リスクの再評価を継続し、骨折再発予防のサイクルを確立することが重要です。

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