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起立時の血圧

目次

起立時の血圧の概要

起立時の血圧とは、臥位・座位から立位へ体位変換した直後から数分間の血圧変動を指します。通常は立ち上がると静脈還流が一過性に低下しますが、頸動脈洞などの圧受容体反射がはたらき、心拍数と末梢血管抵抗が上昇して血圧はほどなく回復します。

この調整が不十分で収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期が10mmHg以上低下する場合を起立性低血圧と定義します。逆に立位で収縮期が20mmHg以上上昇する場合は起立性高血圧とされ、いずれも臨床的意義を持つ所見です。

測定は少なくとも1分と3分の時点での血圧を記録し、症状(めまい、失神前感、視野狭窄など)と合わせて解釈します。反復測定や朝の評価、必要に応じたヘッドアップティルト試験が推奨されます。

高齢者、糖尿病性自律神経障害、パーキンソン病、脱水、降圧薬や利尿薬の使用などで起立時の血圧調節障害は起こりやすく、転倒や失神、心血管イベントと関連します。

参考文献

遺伝的要因と環境的要因

起立時の血圧変化そのものの遺伝率を直接推定した大規模研究は限られます。一般の安静時血圧については双生児研究やゲノム解析からおおむね30〜50%の遺伝率が示され、残りは生活習慣や環境の影響が大きいとされます。

一方、体位変換への急性反応は自律神経反射、血管伸展性、筋ポンプ機能、循環血液量など多因子の相互作用で決まり、加齢、薬剤、脱水、糖尿病やパーキンソン病などの併存症が強く影響します。

このため臨床的には、起立時低血圧・高血圧の発現には環境・後天的因子が6〜8割、遺伝的素因が2〜4割程度と解釈するのが実務的です。ただし疾患や集団により幅があり、数値はあくまで概算です。

遺伝学の進展により将来的に立位血圧反応の個体差を説明する多遺伝子スコアが開発される可能性はありますが、現時点で臨床応用は限定的です。

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起立時の血圧の意味・解釈

起立性低血圧は収縮期20mmHg以上または拡張期10mmHg以上の低下を、3分以内の立位またはヘッドアップティルトで確認することが国際的な基準です。症状の有無を併せ、持続性か一過性かを見極めます。

起立性高血圧は立位での持続的な血圧上昇(収縮期20mmHg以上、または立位収縮期140mmHg以上)を指し、隠れた交感神経過活動や将来の高血圧リスクと関連する可能性が示唆されています。

これらの所見は転倒・失神、虚血性心疾患、脳卒中、認知機能低下などのリスクと関連しうるため、単回測定で終わらせず、薬剤調整や生活指導、必要なら専門医紹介を検討します。

測定時は5分以上の安静後に臥位血圧を測り、その後1分・3分で立位血圧を測定、症状を記録します。カフェイン、喫煙、食後の影響などにも注意します。

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関与する遺伝子・変異

稀な単一遺伝子疾患では起立時の血圧調節異常が顕著になります。ドーパミンβ水酸化酵素(DBH)欠損症はノルアドレナリン合成が障害され、重度の起立性低血圧を呈します。

家族性自律神経失調症(Familial dysautonomia、ELP1/IKBKAP変異)は自律神経発達異常により起立時の循環調節不全が起こります。

ノルエピネフリン輸送体(SLC6A2)機能低下はNEJMに報告されたように直立不耐症や起立時の循環反応異常を来し、起立時血圧・心拍の調節に関与します。

一方、一般集団での立位血圧反応に影響する共通多型については報告は散見されるものの、再現性や効果量は限定的で、現時点では臨床利用には至っていません。

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起立時の血圧に関するその他の知識

起立性低血圧の自己管理には、十分な水分・塩分摂取、段階的起立、弾性ストッキング、就寝時頭側挙上、食後の急な立ち上がりを避けることなどが有効です。

薬剤ではミドドリンやドロキシドパ、鉱質コルチコイド(フルドロコルチゾン)などが適応となることがありますが、医師の管理下で慎重に使用します。

起立性高血圧は過活動な交感神経反応を反映することがあり、将来の持続性高血圧や臓器障害リスクのマーカーになりうるため、家庭血圧や24時間血圧での総合評価が勧められます。

測定は朝や食後、運動後など状況により結果が変わるため、複数日の反復測定が望ましく、異常が持続する場合は原因精査と治療方針の検討が必要です。

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