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血清IgE

目次

血清IgEの基礎知識

血清IgEは免疫グロブリンの一種で、主にアレルギー反応と寄生虫感染への防御に関与します。体内ではB細胞がクラススイッチによってIgEを産生し、血中に分泌されたIgEは高親和性受容体であるFcεRIを介して肥満細胞や好塩基球の表面に結合します。

アレルゲンがIgEに架橋すると、肥満細胞や好塩基球は脱顆粒し、ヒスタミンなどのメディエーターを放出します。これにより、即時型過敏反応(I型アレルギー)が引き起こされ、くしゃみ、蕁麻疹、喘鳴、アナフィラキシーなどの症状が生じます。

血清IgE濃度は通常IU/mL(あるいはkU/L)で報告され、国際単位はWHOの国際標準品(75/502)に校正されています。年齢や喫煙、環境曝露、寄生虫感染などの要因により個人差が大きく、健常者でもばらつきが存在します。

IgEの血中半減期は約2日と短い一方、受容体に結合したIgEは組織でより長く存在します。したがって、血清IgEは直近の免疫学的状態のスナップショットであり、臨床解釈では病歴や他の検査結果と合わせて評価する必要があります。

参考文献

血清IgEの決定因子:遺伝と環境

総IgE値の個人差には、遺伝的要因と環境的要因が共に関与しています。双生児研究では総IgEの遺伝率は概ね40〜80%の範囲で報告され、平均すると50〜60%前後と推定されます。残余は環境要因や測定誤差に由来します。

遺伝的には、免疫応答や気道炎症に関わる複数の遺伝子領域が総IgEやアトピー素因と関連づけられています。GWASではIL13、FCER1A、STAT6などの座位が同定されており、体質的にIgEが高めになりやすい人が存在します。

環境要因として、ダニ・花粉などのアレルゲン曝露、寄生虫感染、喫煙、空気汚染、微生物への曝露の少なさ(衛生仮説)などがIgE値に影響します。小児期の曝露歴は免疫の方向性に長期的な影響を与えることがあります。

以上より、総IgEは遺伝と環境が互いに作用して規定されます。したがって、一回の測定値は体質と時点の環境曝露の合成結果であり、継時的な評価や病歴との統合解釈が有用です。

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血清IgEの臨床的意義

血清IgEはアレルギー性疾患の素因把握や鑑別診断の手掛かりとして用いられます。特に気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などで高値を示すことが一般的です。ただし、総IgEのみでは特定アレルゲンの同定や確定診断はできません。

非常に高いIgEはアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)や寄生虫感染、希少な高IgE症候群(Job症候群)などを示唆します。ABPAでは総IgEがしばしば1000 IU/mLを超え、臨床・画像所見と併せて診断されます。

一方、正常範囲内のIgEでも特定アレルゲンに対する特異的IgEが陽性で臨床的アレルギーを呈することがあります。逆に総IgEが高くても症状が乏しいこともあり、症状・暴露歴・皮膚試験や特異的IgE測定の組み合わせが重要です。

生物学的製剤オマリズマブ(抗IgE抗体)の投与適格性や投与量は総IgEと体重に基づき算出されるため、喘息や蕁麻疹の治療計画でも血清IgEは実務上重要な指標となります。

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血清IgEの測定法と理論

総IgEの測定にはサンドイッチ型免疫測定法が用いられます。固相化した抗IgE抗体で試料中のIgEを捕捉し、酵素または化学発光標識の二次抗IgEで検出する原理です。発光量を校正曲線に当てはめて濃度を算出します。

かつては放射性同位体を用いたRAST法が普及していましたが、現在は化学発光や蛍光酵素免疫測定(FEIA:ImmunoCAPなど)が主流です。これらは高感度・広ダイナミックレンジで、国際標準品にトレースされた単位で報告されます。

測定の品質にはキャリブレーション、マトリックス効果、ヘテロフィル抗体干渉、極端な高濃度でのフック効果などが影響します。異常高値が臨床像と合わない場合は希釈直線性の確認が推奨されます。

特異的IgEは固相に固定したアレルゲン抽出物や分子成分を用いて同様の原理で測定します。総IgEと特異的IgEは相補的であり、臨床的アレルギーの評価には両者の併用と病歴の統合が重要です。

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基準範囲と結果の解釈

血清IgEの基準範囲は施設や年齢で異なります。一般的に成人では約100 kU/L(IU/mL)以下を基準とする施設が多い一方、小児では年齢とともに上昇し、思春期でピークに達する傾向があります。

高値はアトピー性疾患、寄生虫感染、ABPA、喫煙、職業曝露などでみられます。低値は必ずしも病的意義を持たないことが多いですが、免疫不全などでは他の免疫グロブリンと併せて解釈します。

総IgEはアレルギー有病の絶対的診断マーカーではありません。無症状でも高値の場合があり、逆に顕著なアレルギー症状があっても総IgEが正常のことがあります。臨床症状と特異的検査の整合性が要点です。

解釈で迷う場合は、時期や季節の影響、併存疾患、薬剤(抗IgE療法など)の影響を考慮し、必要に応じて専門医へ紹介することが推奨されます。

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