血清尿素量
目次
基本定義と用語の整理
血清尿素量は、血液中に含まれる尿素の量を示す指標で、腎機能やタンパク質代謝の状態を反映します。臨床では「尿素そのものの濃度」と「尿素窒素(BUN)」の二つの表現があり、単位や解釈が異なる点に注意が必要です。
BUNは尿素分子に含まれる窒素部分のみを質量として表現したもので、通常mg/dLで報告されます。一方、尿素濃度は分子全体を量として表すため、mmol/Lやmg/dLで示され、換算係数によりBUNと相互に変換されます。
一般成人ではBUNの基準範囲はおおむね7〜20 mg/dL、尿素濃度では約2.5〜7.1 mmol/Lとされます。ただし、施設や測定法、集団の特性によりわずかに異なるため、各検査室の参照範囲を確認することが推奨されます。
臨床現場では、BUNはクレアチニンと並んで腎前性、腎性、腎後性の障害の鑑別や、水分状態、タンパク摂取量、肝機能の把握に利用されます。特にBUN/クレアチニン比は、腎前性の脱水や上部消化管出血の示唆に用いられることがあります。
参考文献
- MedlinePlus: Blood Urea Nitrogen (BUN) Test
- Wikipedia: Blood urea nitrogen
- UK Biobank showcase: Urea (Field 30600)
測定法とその理論
現在広く用いられているのは酵素法で、ウレアーゼが尿素をアンモニアと二酸化炭素に加水分解し、その生成物を呈色反応や酵素連結反応で定量します。代表的にはインドフェノール(ベルトロ)反応やグルタメート脱水素酵素(GLDH)法があります。
インドフェノール法では、生成したアンモニアを次亜塩素酸塩とフェノールと反応させ、青色のインドフェノールを形成し、その吸光度を測定します。GLDH法では、アンモニアを基質としてNADHの減少を光学的に追跡し、変化量から尿素量を計算します。
歴史的にはジアセチルモノオキシム法(Fearon反応)などの化学法も使われましたが、毒性や特異性の問題、操作の煩雑さから、現在は特異性が高く安全な酵素法が主流です。測定系は自動分析装置に組み込まれ、精度管理が行われています。
検査結果には溶血、強い高ビリルビン血症、重度の溶質効果、特定薬剤の干渉などが影響することがあり、検査室は妥当性確認を行います。採血条件や保存条件の遵守も、誤差低減に重要です。
参考文献
臨床的意義と解釈の要点
BUNや尿素が高い場合は、脱水などの腎前性要因、腎実質障害、尿路閉塞に代表される腎後性要因、あるいは高タンパク摂取、ステロイド使用、上部消化管出血などのタンパク負荷増大が考えられます。全身状態や他の検査と合わせて解釈します。
低値は重度の肝機能障害(尿素回路低下)、低栄養・低タンパク摂取、妊娠(循環血漿量増加とGFR上昇)、過剰輸液などでみられます。単独での診断価値は限定的で、臨床文脈が不可欠です。
BUN/クレアチニン比はおおむね10〜20が目安で、20を超えると腎前性脱水や上部消化管出血を示唆しますが、食事、筋肉量、薬剤で変動するため、過度な一般化は避けるべきです。
急性腎障害や慢性腎臓病の診断・重症度評価では、クレアチニンとeGFRが主軸で、BUNは補助指標です。経時的変化や他指標との総合判断が望まれます。
参考文献
生理学的背景:尿素回路と腎髄質の尿素再循環
尿素は主に肝臓の尿素回路でアンモニアから無毒化されて産生され、血中に放出されます。腎臓は糸球体で尿素を濾過し、一部を再吸収・分泌して体外に排泄します。これが血清尿素量の基盤です。
腎髄質では尿素輸送体(UT-A、UT-B)が尿素の再循環を担い、髄質高浸透圧の形成に寄与します。この機構により濃縮尿の生成が可能となり、水分節約が達成されます。
尿素は高濃度ではタンパク質の構造を乱す性質を持ちますが、生体では適切な濃度域で安全に利用され、窒素排泄の主要形態として機能します。
肝不全時には尿素回路が低下し、アンモニア上昇とBUN低下が同時に見られることがあります。腎不全時には排泄低下でBUNが上昇します。
参考文献
- StatPearls: Biochemistry, Urea Cycle
- Sands JM et al. Regulation of renal urea transport (Annu Rev Physiol, 2011)
参照範囲・単位・換算
BUNの一般的参照範囲は7〜20 mg/dL、尿素濃度では2.5〜7.1 mmol/Lですが、年齢、妊娠、食事、検査室の設定で変動します。報告単位の確認が重要です。
換算は、尿素(mmol/L)=BUN(mg/dL)×0.357、BUN(mg/dL)=尿素(mmol/L)×2.8が目安です。解釈時の取り違えを避けるため、単位換算を明示することが推奨されます。
高齢者ではやや高め、妊娠や小児では低めに出る傾向が知られています。脱水や高タンパク食直後は一過性の上昇がみられる場合があります。
施設により測定法が異なるため、基準範囲のわずかな差は自然なものです。検査結果はその施設の参照区間に基づいて判断します。
参考文献

