血小板数
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血小板数の概要
血小板は骨髄の巨核球から生まれる直径2~3µmほどの小さな細胞片で、出血を止める一次止血の主役です。血小板数(PLT)は、一般に1マイクロリットル当たりの個数で表され、成人の基準範囲はおよそ15万~45万/µL(150–450×10^9/L)です。健康診断や診療で行う全血球計算(CBC)に含まれ、比較的容易に測定できます。
血小板は脾臓に一部が貯蔵され、寿命はおよそ7~10日です。体内では産生(骨髄)、分布(脾臓・血管内)、消費(血栓形成・免疫反応)のバランスで数が保たれます。感染、手術、妊娠、運動、喫煙、薬剤などで一時的に増減することがあります。
血小板数の低下(血小板減少症)は出血傾向を、増加(血小板増加症)は血栓傾向を示すことがあり、いずれも臨床的に重要です。特に10万/µL未満の減少は出血リスクに注意が必要で、50万/µL以上の増加は背景疾患の検索が推奨されます。
血小板数は数値そのものだけでなく、末梢血塗抹標本での形態、平均血小板体積(MPV)、幼若血小板割合(IPF)などの併用で解釈精度が高まります。これにより産生低下型か破壊亢進型かの見極めが助けられます。
参考文献
遺伝的・環境的要因
血小板数には遺伝的背景があり、双生児研究や家系研究では遺伝率が概ね30~60%と推定されてきました。測定法や集団により幅はありますが、形質として中等度の遺伝性を示します。
ゲノムワイド関連解析(GWAS)では、巨核球分化・血小板産生に関わる多くの遺伝子座(例:THPO、MPL、GATA1/2 など)が同定されています。これらは血小板数の個人差の一部を説明しますが、SNPベースの遺伝率は双生児ベースより低めに見積もられます。
一方、環境要因の影響も顕著です。感染症、炎症、鉄欠乏、アルコール、薬剤(ヘパリン、キニーネ、バルプロ酸など)、妊娠や手術後、喫煙・運動といった要因で血小板数は変動します。脾機能や肝疾患も分布に影響します。
総じて、遺伝要因と環境要因が相互作用して血小板数を規定します。特定の遺伝素因がある場合でも、生活習慣や併存症の管理により実測値は変わり得るため、臨床では両面の評価が重要です。
参考文献
- Astle WJ et al. The allelic landscape of human blood cell trait variation. Nature (2016)
- Gieger C et al. New gene functions in megakaryopoiesis and platelet formation. Nat Genet (2011)
- Vuckovic D et al. The Polygenic and Monogenic Basis of Blood Traits. PLoS Genet (2020)
測定法と理論
血小板数は自動血球計数装置で測定されます。代表的な電気抵抗(コールター)法は、微小孔を通過する粒子による電気抵抗の変化から粒子数・体積を算出します。簡便で高速ですが、赤血球破片や凝集の影響を受けることがあります。
光学・フローサイトメトリー法では、レーザー散乱光や蛍光染色(RNA染色など)を用いて血小板を他粒子から識別します。低値域での精度に優れ、幼若血小板の推定も可能です。近年は両法のハイブリッド装置が普及しています。
偽性血小板減少(EDTA依存性凝集)は自動計数で低く出る代表例です。末梢血塗抹標本の確認、クエン酸ナトリウム採血での再測定、光学法の併用で真の減少かを判別します。
標準化の観点では、国際血液学標準化評議会(ICSH)が低値域での精密な計数法(フローサイトメトリー参照法など)を提唱しており、移植・新生児などの領域で重要です。
参考文献
- Coulter principle - Wikipedia
- ICSH guidelines for platelet counting
- Sysmex white paper: Platelet counting methods
数値の解釈と臨床的意味
一般に血小板15万~45万/µLが基準範囲です。15万/µL未満を血小板減少、45万/µL超を血小板増加と呼ぶことが多いですが、施設や年代、妊娠で基準が異なることがあります。
出血リスクは数値だけで決まりませんが、5万/µL未満で手術や侵襲的処置の出血が増え、1万~2万/µL未満では自発出血リスクが高まります。薬剤や併存症の有無、血小板機能も加味します。
増加例では反応性(感染・炎症・鉄欠乏・術後・脾摘後)と本態性(骨髄増殖性腫瘍の本態性血小板血症など)を鑑別します。血栓と出血の双方に注意が必要です。
経時的な推移、同時に測定されるヘモグロビンや白血球、末梢血塗抹の所見を合わせて、産生低下・破壊亢進・分布異常のいずれが主体かを考えます。
参考文献
異常値への対処
血小板減少では、出血症状の有無、薬剤歴(ヘパリン、抗生剤、抗てんかん薬など)、感染や肝疾患の評価、末梢血塗抹での凝集や破砕赤血球(TMA疑い)の確認が初期対応です。
重症(1万~2万/µL未満)や出血時は入院管理を検討し、原因に応じてステロイド・IVIG(ITP)、血小板輸血(緊急出血時)、血漿交換(TTP)などを行います。薬剤性は原因薬の中止が第一です。
増加では、炎症・鉄欠乏など反応性の原因精査を優先し、必要に応じてJAK2/CALR/MPL変異検査や骨髄検査で本態性血小板血症を評価します。血栓リスクに応じてアスピリンや細胞減少療法を検討します。
いずれの場合も偽性異常の除外(再採血・採血管変更・光学法併用)が重要です。値だけで自己判断せず、医療機関で相談することが安全です。
参考文献

