血中Lp-PLA2活性
目次
定義と基礎
Lp-PLA2は、ホスホリパーゼA2の一種で、別名PAFアセチルヒドラーゼ(遺伝子名PLA2G7)として知られます。主にマクロファージ由来で、血中ではリポ蛋白と結合して存在します。
循環中のLp-PLA2の多くはLDL粒子に結合し、一部はHDLにも結合します。この結合のされ方は個人差や疾患背景で変動します。
酵素としてのLp-PLA2は、酸化リン脂質を加水分解し、リゾホスファチジルコリンと酸化脂肪酸を産生します。これらの生成物は炎症を促進し得ます。
動脈硬化巣ではマクロファージが活性化し、Lp-PLA2発現が増加することが報告されています。これが臨床でのバイオマーカー利用の根拠です。
参考文献
- NCBI Gene: PLA2G7
- Lipoprotein-associated phospholipase A2 and risk of vascular disease (Lancet 2010)
- Rosenson RS. Lp-PLA2: a biomarker of CVD (Eur Heart J 2011)
測定と単位
Lp-PLA2は「量(mass)」と「活性(activity)」の二通りで測定されます。現在は活性測定が多く用いられ、nmol/min/mLなどで表されます。
活性測定は、発色性基質を加水分解して生じる発色物質を比色計で測定する原理が一般的です。自動分析装置にも実装されています。
臨床現場では血清または血漿を用い、空腹は必須ではないことが多いですが、施設の指示に従うことが推奨されます。
判定には検査室ごとの参考範囲が設定されます。よく使われるカットオフに225 nmol/min/mLがあり、心血管リスク評価で参照されます。
参考文献
臨床的意義
多くの疫学研究で、Lp-PLA2活性が高いほど冠動脈疾患や脳梗塞の発症リスクが上昇する関連が示されています。独立した因子として評価されます。
一方で、Lp-PLA2阻害薬ダラプラジブは大規模試験で主要心血管イベントを低減できませんでした。因果性よりも病態反映マーカーの性質が強い可能性があります。
ガイドラインでは、一般集団の一律スクリーニングにLp-PLA2測定を推奨していません。中間リスクの補助情報として検討される位置づけです。
したがって、解釈はLDLコレステロール、血圧、喫煙、糖尿病、hs-CRPなど他のリスクと合わせて総合的に行う必要があります。
参考文献
- The Lp-PLA2 Studies Collaboration (Lancet 2010)
- STABILITY trial: Darapladib in stable CAD (NEJM 2014)
- SOLID-TIMI 52: Darapladib after ACS (NEJM 2014)
- 2019 ACC/AHA Primary Prevention Guideline
遺伝学と人種差
Lp-PLA2をコードするPLA2G7遺伝子のバリアントが活性や量に影響します。東アジアに多いV279Fは機能喪失をもたらす代表的変異です。
V279F(rs76863441)保有者では活性が著減し、個体間差の重要な説明因子となります。ただし臨床リスクへの影響は一貫していません。
家系・双生児・ゲノム研究を総合すると、Lp-PLA2活性の遺伝率は概ね30~60%と推定され、残りは環境や代謝因子に起因します。
環境因子としては喫煙、肥満、糖尿病、LDL高値が活性上昇と関連し、スタチンや生活改善で低下がみられることがあります。
参考文献
治療介入と管理
Lp-PLA2活性が高い場合、まずは標準的な動脈硬化リスク低減策(禁煙、体重管理、運動、食事、血圧・脂質管理)が柱です。
スタチンやPCSK9阻害薬はLDL低下を通じてLp-PLA2活性も低下させることがあります。ナイアシンでも低下が報告されています。
直接阻害薬ダラプラジブはイベント抑制に失敗しており、現時点でLp-PLA2を標的とした薬物治療は推奨されません。
検査は単独で意思決定せず、総合リスク評価に組み込み、患者と共有意思決定を行うことが重要です。
参考文献

