血中LDLコレステロール濃度
目次
用語の概要
血中LDLコレステロール濃度は、血液中を流れる低比重リポタンパク(LDL)が運搬するコレステロール量を示す指標です。LDLは肝臓から全身の細胞へコレステロールを届け、細胞膜の構築やステロイドホルモン合成に不可欠ですが、過剰になると動脈硬化の原因になります。
臨床ではLDLコレステロール(LDL-C)の低下が心筋梗塞や脳梗塞といった動脈硬化性心血管疾患の一次・二次予防に直結することが確立しており、診療ガイドラインは患者のリスクに応じた厳格な管理目標を提示しています。特に既に動脈硬化性疾患がある場合は、より低い目標値が推奨されます。
LDL受容体による取り込みの異常は家族性高コレステロール血症の原因となり、若年からの著しいLDL高値と早発性冠動脈疾患を来します。ブラウンとゴールドスタインの研究により、LDL受容体経路の障害が疾患の本態であることが示され、代謝理解と治療開発が進みました。
日常診療でのLDL-C評価は、総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリドから推算する方法と、直接測定法の双方が用いられます。非空腹採血でも有用ですが、状況により空腹条件が望ましいこともあり、検査法や臨床背景を踏まえた解釈が重要です。
参考文献
測定と解釈の基本
もっとも広く使われるフリードワルド式は、LDL-C=総コレステロール−HDL-C−トリグリセリド/5(mg/dL)で推算します。トリグリセリドが400 mg/dL以上では誤差が増え、非空腹時や高トリグリセリド血症では過小評価しやすい点に注意が必要です。
基準法のβ-定量は超遠心法でVLDLを分離したうえでLDL-Cを定量する手法で、最も正確とされます。ただし高価で時間がかかるため、日常検査では均一法(直接法)が広く使われ、トリグリセリド高値でも適用可能な利点があります。
新しい推算法としてMartin/Hopkins式などが提案され、トリグリセリドの値に応じた可変分母を用いて精度向上を図ります。臨床的に重要な境界域や低LDL-C領域での誤分類を減らすことが示されています。
LDL-Cの数値は個別の心血管リスクの文脈で解釈します。糖尿病、慢性腎臓病、家族歴、喫煙などの危険因子を併せて評価し、同じ数値でも目標値や治療強度が変わることを理解することが重要です。
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意義と臨床的な使い方
LDL-Cは動脈壁へのコレステロール蓄積と泡沫細胞形成に直接関与し、アテローム性プラークの形成を促します。大規模介入試験の統合解析では、LDL-Cを1 mmol/L(約39 mg/dL)低下させると主要心血管イベントが約20%減少することが示されています。
一次予防では総合的リスク評価に基づき、生活習慣介入から開始し、必要に応じて薬物治療を追加します。二次予防ではより強力なLDL-C低下が推奨され、スタチンに加えエゼチミブやPCSK9阻害薬が選択されます。
非空腹採血でもリスク層別化に有用であることが示され、日常診療の簡便化に寄与しています。ただし急性疾患時や著しいトリグリセリド高値では解釈に注意が必要で、必要に応じて再検するのが妥当です。
LDL-C単独でなく、非HDLコレステロールやアポB、Lp(a)といった補助指標を組み合わせると、残余リスクの把握に役立ちます。特に糖尿病や高トリグリセリド血症では非HDL-Cの活用が推奨されます。
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遺伝要因と環境要因
LDL-Cのばらつきには遺伝と環境の双方が寄与します。双生児研究や家系研究から、LDL-Cの遺伝率は概ね40〜60%と見積もられており、残りは食事、体重、身体活動、喫煙、アルコール、疾患や薬剤などの環境要因が占めます。
家族性高コレステロール血症(FH)はLDLR、APOB、PCSK9などの遺伝子変異により生じ、異常に高いLDL-Cと早発冠動脈疾患リスクをもたらします。ヘテロ接合体の有病率は約1/250とされ、早期診断と治療が重要です。
一方で一般集団のLDL-Cは多遺伝子性で、多数の遺伝子多型が少しずつ影響します。ポリジェニックスコアは極端な高値や早発例の同定に役立つ可能性が示されていますが、臨床応用はなお発展途上です。
環境面では飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の摂取増加がLDL-Cを上げる主要因で、体重、可溶性食物繊維、不飽和脂肪酸、スタチンなどの介入はLDL-Cを低下させます。甲状腺機能低下症やネフローゼも上昇要因です。
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介入と予防
生活習慣では、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換え、可溶性食物繊維や植物ステロールを増やし、体重を適正化することでLDL-Cを低下できます。禁煙や適度な身体活動も心血管リスク全体の改善に寄与します。
薬物療法では、第一選択のスタチンがHMG-CoA還元酵素を阻害してLDL受容体発現を増やし、LDL-Cを強力に低下させます。目標未達時はエゼチミブの追加、さらに必要であればPCSK9阻害薬やベンペド酸の併用が検討されます。
リスクに応じた目標設定が重要で、二次予防や極高リスクではLDL-Cを70 mg/dL未満、あるいは55 mg/dL未満など、より厳しい目標が推奨されます。イベント抑制効果はLDL-C低下量に概ね比例し、早期からの介入が有益です。
治療のモニタリングでは、アドヒアランスの確認、副作用の評価、他の危険因子の管理が不可欠です。アポBや非HDL-Cを補助指標に用いると、残余リスクをより的確に把握できます。
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