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血中非アルブミンタンパク質濃度

目次

概要

血中非アルブミンタンパク質濃度とは、血清中の総タンパク質量からアルブミン量を差し引いた値を指し、臨床現場ではしばしば「グロブリン」分画として扱われます。非アルブミン成分には、免疫グロブリン、補体系、急性期反応蛋白、輸送蛋白、凝固関連蛋白など多様な分子が含まれます。

採血試料が血清か血漿かで含まれる成分は異なり、血清では凝固過程でフィブリノゲンが除かれるため、非アルブミン分画は主にグロブリン群を反映します。臨床の一般検査では、総蛋白はビウレット法、アルブミンは色素結合法で測定され、差から算出されます。

結果はグロブリン値やA/G比(アルブミン/グロブリン比)として解釈され、炎症、感染、肝疾患、免疫異常、形質細胞異常(例:多発性骨髄腫)などの手掛かりとなります。非アルブミン分画は多くの病態で変動し、スクリーニングと鑑別に有用です。

生理的変動として、年齢、妊娠、体液量(脱水や希釈)、体位や駆血などの前分析要因が影響します。評価時には臨床症状、他の検査(CRP、肝機能、電気泳動など)と併せて総合的に判断することが重要です。

参考文献

遺伝的要因と環境的要因

非アルブミンタンパク質の大部分は免疫グロブリンなどのグロブリン分画で、遺伝学的影響と環境要因の双方で決まります。大規模ゲノム研究は、血清バイオマーカーの一部に中程度の遺伝率があることを示しており、非アルブミン分画にも遺伝要因が及ぶと考えられます。

たとえばUK Biobankの研究では、総タンパク質やアルブミンなどの血清指標に有意なSNP遺伝率が報告されました。免疫グロブリン量もGWASで複数遺伝子座が関連し、体質的な差が存在します。ただし非アルブミン分画は多成分なので、遺伝率は成分により幅があります。

総合すると、集団レベルでみた非アルブミン分画の変動に対する寄与は、遺伝的要因が概ね30〜50%、環境・生活習慣・疾患などの要因が50〜70%程度と見積もるのが妥当です。これは研究集団、年齢、算出方法により変わり得る推定です。

環境要因には感染症、慢性炎症、自己免疫疾患、肝疾患、栄養状態、薬剤(免疫抑制薬、生物学的製剤)などが含まれます。流行感染やワクチン接種、腸内環境なども免疫グロブリンに影響し、非アルブミン分画を動かします。

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測定の意義

非アルブミンタンパク質濃度を調べる意義は、慢性炎症や感染、自己免疫疾患、肝胆道疾患、形質細胞増殖性疾患のスクリーニング・鑑別にあります。特にグロブリン増加は炎症反応や免疫活性化の指標となり得ます。

A/G比の低下や非アルブミン分画の上昇がみられる場合、血清蛋白電気泳動(SPEP)や免疫固定法(IFE)で多クローン性か単クローン性かを区別し、MGUSや多発性骨髄腫の検出に役立ちます。

また、低下がみられる場合には低ガンマグロブリン血症や蛋白漏出、二次性免疫不全の可能性を考え、免疫グロブリン定量(IgG/IgA/IgM)や尿蛋白、便中α1-アンチトリプシンなどの追加検査を検討します。

病勢モニタリングとして、治療介入後の変化や疾患活動性の把握にも使われます。単独では診断は確定しないため、臨床所見と他検査の文脈で解釈することが重要です。

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数値の解釈

非アルブミンタンパク質は通常、総蛋白(g/dL)からアルブミン(g/dL)を差引いて得ます。アルブミンはBCGまたはBCP色素結合法で、総蛋白はビウレット法で測定されることが多く、測定法の特性を理解したうえで解釈します。

高値の場合、A/G比は低下し、多クローン性高ガンマグロブリン血症(慢性感染、自己免疫、肝硬変など)か、単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS、骨髄腫など)かの鑑別が重要です。SPEP/IFEでスパイクの有無を確認します。

低値の場合は低ガンマグロブリン血症、蛋白漏出(腎症・腸症)、重症栄養障害、薬剤性免疫抑制などを考えます。反復感染歴や慢性下痢、浮腫の有無などの情報が診断に有用です。

前分析要因として、脱水で見かけ上上昇し、希釈(輸液過多)で低下します。長時間の駆血や臥位・立位の違いでも軽度変動するため、解釈時には採血条件を確認します。

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正常範囲

臨床現場での非アルブミンタンパク質(グロブリン)のおおよその基準範囲は2.0〜3.5 g/dL(20〜35 g/L)とされますが、施設や測定法で差があります。A/G比は概ね1.2〜2.0が目安です。

総蛋白は約6.0〜8.3 g/dL、アルブミンは約3.5〜5.0 g/dLが一般的な参考域で、これらから差し引きで非アルブミン分画を推定します。小児や高齢者、妊娠中では参考域が異なる場合があります。

検査結果票の自施設の基準範囲に従うのが原則であり、国・人種差や栄養状態、体液バランスでも値は変動します。臨床的に意味のある変化かどうかは、ベースラインからの変化量も考慮します。

異常値の解釈では、同時に測定したCRP、ALP、AST/ALT、腎機能、尿検査などの情報を組み合わせることで、原因の絞り込みがより適切に行えます。

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異常値への対処

高値では、まず再検で確認し、問診・診察で感染・炎症・肝疾患の兆候を評価します。持続高値や異常パターンがあれば、SPEP/UPEP、免疫固定、定量免疫グロブリン、遊離軽鎖などを追加します。

単クローン性を示唆する場合は血液内科に紹介し、骨髄検査や骨病変評価、腎機能・カルシウムの確認を行います。多クローン性なら原疾患(自己免疫、慢性感染、肝疾患など)の精査・治療が中心です。

低値では、反復感染歴があるか、免疫抑制薬の使用、蛋白漏出の兆候(浮腫、ネフローゼ症候群、慢性下痢)を確認します。必要に応じてIg定量、腎機能、尿蛋白、便検査、消化管評価を行います。

いずれの場合も、急変がなければ数週間〜数カ月の経過観察でトレンドを追うことが有益です。急性期の体液変動や薬剤の影響が落ち着いた時点での再評価が推奨されます。

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定量方法と理論

総蛋白はビウレット法が広く用いられ、アルカリ条件下で銅とペプチド結合が錯体を形成し発色する原理に基づきます。吸光度は蛋白濃度に比例し、日常検査に適した堅牢な方法です。

アルブミンはブロモクレゾールグリーン(BCG)やブロモクレゾールパープル(BCP)による色素結合法が一般的です。BCGは非特異的結合の影響で高めに出ることがあり、BCPはアルブミン特異性が高いとされます。

非アルブミン分画は通常、総蛋白とアルブミンの差で算出します。分画の詳細評価には血清蛋白電気泳動(SPEP)でアルブミン、α1、α2、β、γ帯に分け、デンシトメトリーで定量します。

免疫グロブリンの個別定量には比濁法やネフェロメトリーが用いられ、標準化されたキャリブレーターと抗血清により定量精度を確保します。各法の限界と干渉要因を理解することが重要です。

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ヒトにおける生物学的役割

非アルブミンタンパク質は、体液恒常性と防御の中を担います。免疫グロブリンは体内に侵入した病原体を中和・オプソニン化し、補体系は病原体の溶解や炎症応答の増強に寄与します。

補体や急性期反応蛋白(CRP、セロプラスミン、ハプトグロビンなど)は感染や組織損傷に対する迅速な応答を担い、病態の重症度評価の指標にもなります。これらは非アルブミン分画の重要な構成要素です。

トランスフェリンやセロプラスミンなどの輸送蛋白は鉄や銅の運搬・代謝に関与し、凝固関連蛋白は止血機構を支えます。これらの量的変化は栄養状態や炎症の影響を受けます。

したがって非アルブミン分画の変動は、免疫、輸送、凝固、炎症といった複合的な生物学的プロセスの反映であり、疾患の病態生理を読み解く重要な手掛かりになります。

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その他の知識

血清と血漿の違いは臨床解釈に重要です。血漿にはフィブリノゲンなど凝固因子が含まれる一方、血清ではこれらが除去されます。同じ人でも試料の違いで非アルブミン分画は異なって見えます。

脱水や輸液過多など体液量の変化は濃縮・希釈の影響を与え、真の蛋白産生や分解の変化と見分ける必要があります。連続測定や臨床状況の確認が役立ちます。

妊娠では血漿量増加による希釈効果や免疫学的変化が起こり、非アルブミン分画がわずかに変動することがあります。参照範囲の設定と解釈に配慮が必要です。

集団差や測定法の標準化も理解しておくべき点です。検査室ごとの基準範囲や方法差を確認し、異常の判定は自施設の指標に基づいて行います。

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