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血中総タンパク質

目次

血中総タンパク質とは

血中総タンパク質は、血清や血漿中に溶けている全てのタンパク質の総量を指し、主にアルブミンとグロブリン(免疫グロブリンなど)から構成されます。アルブミンは肝臓で合成され、膠質浸透圧の維持やさまざまな物質の運搬に関与します。一方、グロブリンは免疫防御や凝固など多彩な機能を担い、主として免疫系や肝臓で産生されます。

臨床検査では通常、血清の総タンパク質(Total Protein; TP)を測定します。TPは単独では疾患特異性が高くありませんが、脱水、慢性炎症、肝・腎機能異常、栄養状態などの全身状態を反映する“総合指標”として広く用いられます。アルブミン/グロブリン比(A/G比)を併せると、原因推定がしやすくなります。

健康成人の概ねの基準範囲は約6.0〜8.3 g/dL(60〜83 g/L)ですが、施設や方法で差があります。妊娠、年齢、体位、点滴などの影響で値は動きやすく、解釈の際は前提条件を確認する必要があります。

総タンパク質は病態の重症度というより“体液バランスや炎症性変化の方向性”を見るのに適しており、異常があればアルブミン、A/G比、蛋白分画(SPEP)や腎・肝機能検査の追加が推奨されます。

参考文献

測定法と理論(バイウレット法・屈折法)

総タンパク質の標準的定量にはバイウレット法が用いられます。強アルカリ下で銅(II)イオンがペプチド結合に配位し紫色錯体を形成、吸光度(約540 nm)がタンパク質濃度に比例します。比色法であり、アルブミン・グロブリンをまとめて測定できる堅牢な手法です。

歴史的にはGornallらの報告が広く引用され、今日の臨床化学測定の基礎となっています。溶血・高ビリルビン血症・高脂血症などの干渉は装置ごとに補正アルゴリズムが異なり、施設のバリデーションに依存します。

もう一つの方法が屈折法(屈折計)で、試料の屈折率から総固形分を推定し、主として総タンパク質を読み替えます。迅速ですが、ブドウ糖や脂質など非タンパク溶質の影響を受けやすく、臨床検査室ではバイウレット法が主流です。

測定法により基準範囲や精度が異なるため、同一患者のフォローは同一機関・同一法で行うのが望ましいとされます。

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臨床的意義と解釈

高値(高タンパク血症)はしばしば脱水でみられます。水分が減ることで見かけ上濃縮されるためで、補液や飲水で是正されることが多いです。持続する高値や極端な上昇では、慢性炎症、感染、自己免疫、または単クローン性免疫グロブリン増加(多発性骨髄腫など)を考え、蛋白分画(SPEP)を追加します。

低値は低栄養、肝合成能低下(肝硬変など)、腎症候群や蛋白漏出性腸症による喪失、希釈(点滴、妊娠)でみられます。特にアルブミン低下は浮腫や薬物動態に影響し、予後指標としても用いられます。

総タンパク質単独では原因特定は困難なため、アルブミン、A/G比、炎症反応(CRP)、腎・肝機能、尿蛋白、SPEP/UPEPなどと組み合わせて解釈します。

体位(臥位→立位)や駆血時間の長さ、採血直前の点滴などの前分析要因も値に影響します。臨床的な“変化”と測定誤差を区別するには、採血条件をそろえることが重要です。

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基準範囲と年齢・妊娠の影響

成人の一般的な基準範囲は約6.0〜8.3 g/dLですが、施設差があります。小児ではやや低め、妊娠では循環血漿量増加に伴う希釈で低く出ることがあります。

同一個人でも日内・日差でわずかな変動があり、発汗や飲水量で容易に動きます。評価は連続データのトレンドと臨床所見の文脈で行うべきです。

A/G比(概ね1.0〜2.1)は、アルブミン低下やグロブリン上昇の相対的変化を捉える補助指標で、総タンパク質と組み合わせると鑑別が絞りやすくなります。

検査報告書に併記される各検査室の“基準値”と測定法を必ず確認し、他施設と比較する際は方法差を念頭に置きます。

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生理学的役割と限界

血中タンパク質の主役であるアルブミンは、膠質浸透圧の維持、遊離脂肪酸・ビリルビン・薬剤などの運搬、酸塩基緩衝に関与します。免疫グロブリンは病原体に対する防御に不可欠です。

総タンパク質はこうした機能性タンパク質の“総量”を示すため、低すぎれば浮腫・創傷治癒遅延・薬物有効濃度低下などを招き得ます。

一方で総タンパク質は“何が増減しているか”は教えてくれません。したがって、異常時は分画(SPEP)や個別のタンパク測定が必要です。

遺伝学的研究は血漿プロテオームの多くに遺伝要因が存在することを示唆しますが、臨床で測る総タンパク質は水分状態・炎症・栄養など環境要因の影響が大きく、単独の診断指標としての限界があります。

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