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血中性ホルモン結合グロブリン(SHBG)

目次

SHBGの基礎と役割

性ホルモン結合グロブリン(SHBG)は主に肝臓で作られるたんぱく質で、テストステロンやエストラジオールなどの性ホルモンに結合して血液中を運びます。SHBGに結合した分は細胞に入りにくく、遊離(フリー)の分画が生物学的に活性を示します。

SHBGの量が多いと、同じ総ホルモン量でも遊離分画が減り、実際の作用が弱まることがあります。逆にSHBGが少ないと遊離分画が増え、作用が強まる可能性があります。このためSHBGはホルモンの「可用性」を調節する重要な因子です。

SHBGはエストロゲンや甲状腺ホルモンで増え、アンドロゲンやインスリン抵抗性肥満などで低下しやすいことが知られています。妊娠や経口避妊薬の使用で顕著に上昇することもよくあります。

最新研究では、SHBGが単なる運搬たんぱくではなく、組織での取り込みやシグナル伝達にも関与する可能性が示唆されています。これは代謝や生殖機能との広い関連を説明する一助となっています。

参考文献

臨床でSHBGを測る意義

男性のテストステロン低下が疑われる際、総テストステロンだけでは実際の作用を反映しにくい場合があります。SHBGを同時に測ることで、遊離あるいは利用可能テストステロンの推定精度が上がります。

女性では多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や不妊、月経異常の評価でSHBGが参考になります。PCOSではインスリン抵抗性の影響でSHBGが低めになる傾向があり、アンドロゲン過剰の程度把握に役立ちます。

甲状腺機能異常、肝疾患、HIV感染、肥満・2型糖尿病など、SHBGに影響する背景疾患の手掛かりとしても有用です。薬剤(経口エストロゲン、アンドロゲン製剤、抗てんかん薬など)の影響評価にも応用されます。

SHBGとアルブミン、総テストステロンから遊離テストステロンを推定する計算法(Vermeulen法など)が広く用いられます。追加採血をせずにアンドロゲンの作用レベルを推し量れる点が臨床的な利点です。

参考文献

数値の解釈と正常範囲の目安

SHBGが高いと、遊離テストステロンや遊離エストラジオールは低く出やすくなります。臨床では高SHBGの原因(甲状腺機能亢進症、肝疾患、エストロゲン投与、妊娠など)を併せて評価します。

SHBGが低いと、インスリン抵抗性、肥満、アンドロゲン投与、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症などを鑑別します。遊離ホルモンが相対的に高くなりうるため、症状との整合性を確認します。

正常範囲は年齢・性別・検査法で異なりますが、成人男性でおおむね10–57 nmol/L前後、成人女性で18–144 nmol/L前後がよく示されます。必ず各検査室の基準値を参照してください。

解釈では「総量」よりも「利用可能量」を意識します。総テストステロンが境界域でも、SHBGが高ければ実質的な低アンドロゲン状態となりうるため、症状・所見と併せて総合判断します。

参考文献

SHBGに影響する遺伝・環境因子

SHBG濃度のばらつきには遺伝的要因が大きく寄与し、ゲノム解析ではSHBG遺伝子領域を含む複数座位が関連します。集団によって異なりますが、全体の変動の相当部分が遺伝で説明されます。

双生児研究や大規模バイオバンク解析から、遺伝の寄与は概ね半分程度、残りを生活習慣・体格・内分泌環境・加齢などの環境因子が占めると報告されています。

環境因子では、体重増加やインスリン抵抗性が低SHBGと強く関連します。一方でエストロゲン曝露や甲状腺ホルモン増加、肝合成能の変化が高SHBGの方向に働きます。

従って、個人のSHBG値は「生まれ持った傾向」と「現在の代謝・内分泌状態」の組み合わせで決まり、評価時には両面を考慮することが重要です。

参考文献

測定法と生物学的連関

SHBGの定量は化学発光イムノアッセイなどの免疫測定法が一般的です。特異性と標準化が重要で、異なる試薬間で結果に差が出ることがあるため、同一法での経過観察が望まれます。

遊離テストステロン推定には、総テストステロン・SHBG・アルブミン値を用いる計算式(Vermeulen法など)が使われます。平衡結合モデルに基づき、結合親和性から遊離分画を算出します。

SHBGは代謝疾患とも関連し、低SHBGは2型糖尿病リスクの上昇と関連する観察研究が知られます。因果関係の解釈には注意が必要ですが、代謝の指標としての価値が議論されています。

基礎研究では、SHBGの組織局在や受容体様機構、メガリンを介した取り込みなどが提案され、単なる運搬たんぱくを超えた役割が模索されています。

参考文献

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