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血中リポタンパク質A濃度

目次

定義と基礎知識

リポタンパク質(a)[Lp(a)]は、低比重リポタンパク質(LDL)に似た粒子にアポリポタンパク質(a)がジスルフィド結合で付いた粒子です。血中リポタンパク質A濃度とは、血液中のこのLp(a)粒子量を示し、mg/dLまたはnmol/Lで報告されます。臨床的には動脈硬化性心血管疾患と大動脈弁狭窄の独立因子として注目されています。

Lp(a)のアポ(a)はプラスミノーゲンに相同性を持ち、クリングルと呼ばれる繰り返し構造を特徴とします。このサイズ多型が粒子の質量と数に影響し、測定値の単位換算の難しさの一因となっています。一般に1 mg/dLは約2.4〜2.5 nmol/Lに相当しますが、厳密な変換はできません。

一般集団のLp(a)分布は右に歪んだ分布で、多くの人が低値である一方、少数が非常に高値を示します。人種・民族差も大きく、アフリカ系は平均値が高い傾向がありますが、リスク閾値は概ね共通と考えられています。

一生の中で大きく変動するLDL-Cと異なり、Lp(a)は思春期以降ほぼ一定で、急性炎症や腎疾患、甲状腺機能異常、妊娠などの状況で上昇することがあります。そのため、測定時の臨床状況に注意が必要です。

参考文献

遺伝学と濃度決定因子

Lp(a)濃度の70〜90%はLPA遺伝子によって規定され、特にアポ(a)のクリングルIVタイプ2のコピー数多型が重要です。コピー数が少ないほどアポ(a)サイズが小さく、一般に血中濃度は高くなります。家族間での強い相関はこの遺伝的支配性を反映します。

環境因子や生活習慣の影響は限定的で、食事、運動、体重減少、禁煙などは心血管リスク全体の低減には有益ですが、Lp(a)自体の値を大きく下げることは通常期待できません。

疾患や生理的状態はLp(a)に影響します。腎不全やネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、妊娠では上昇傾向があります。逆に甲状腺機能亢進症では低下がみられることがあります。

一部の薬剤はLp(a)に影響します。スタチンは不変〜軽度上昇、エゼチミブは小幅低下、PCSK9阻害薬は約20〜30%低下、ナイアシンは低下させますが転帰改善の根拠が弱く現在は推奨されません。

参考文献

臨床的意義と測定の意味

多数の疫学研究、メンデルランダム化研究、遺伝子変異解析が、Lp(a)が冠動脈疾患、脳卒中、末梢動脈疾患および大動脈弁狭窄の因果的危険因子であることを示しています。酸化リン脂質の運搬体である点も動脈硬化促進に寄与します。

国際的なガイドラインは、全員が一生に1回はLp(a)を測定すること、特に早発性冠動脈疾患の本人・家族歴、反復イベント、肥厚性大動脈弁などの背景を持つ人での測定を推奨しています。

測定は空腹不要で、安定期に行うのが望ましいです。結果はnmol/Lでの報告が推奨され、アポ(a)サイズの影響を受けにくいアッセイが理想です。解釈は絶対値に加え、全体リスク評価の文脈で行います。

高Lp(a)はLDL-Cと相乗的にリスクを高めるため、LDL-Cを厳格に下げることで相対的にリスクを軽減できます。Lp(a)自体を標的とする新規治療は現在開発中です。

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測定法と単位

Lp(a)は免疫測定法で定量されます。代表的には免疫比濁法、ネフェロメトリー、ELISAなどで、アポ(a)特異抗体を用いて質量(mg/dL)または粒子数(nmol/L)を測ります。

アポ(a)サイズの不均一性は測定誤差の原因で、アイソフォームに依存しない設計のアッセイが望まれます。国際的にはnmol/Lでの報告と、参照標準物質にトレーサブルなキャリブレーションが推奨されます。

質量→モル濃度の換算は厳密ではありませんが、臨床では1 mg/dL≒約2.5 nmol/Lの便宜的換算が用いられます。報告単位が異なる検査結果を比較する際は注意が必要です。

採血はEDTA血漿または血清で可能で、凍結保存で安定です。急性炎症や腎症候の影響を避け、状態が安定しているときの測定が理想です。

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管理と治療の考え方

高Lp(a)に対する第一の対策は、全体的な動脈硬化リスクの最適化です。LDL-Cの厳格管理、血圧・糖尿病のコントロール、禁煙、体重管理、エクササイズは転帰改善に寄与します。

スタチンはLp(a)を下げませんがイベント抑制に有効であり、LDL-Cの目標達成に中となります。PCSK9阻害薬はLDL-CとともにLp(a)を約20〜30%低下させ、アウトカム改善が示されています。

ナイアシンはLp(a)低下効果があるものの、主要アウトカム改善に乏しく副作用の懸念から一般的には推奨されません。リポ蛋白アフェレーシスは選択的にLp(a)を除去でき、進行性冠動脈疾患や重症者で適応される地域があります。

新規療法として、LPAを標的としたアンチセンス(ペラカーセン)やsiRNA(オルパシラン等)が第2/3相で大幅なLp(a)低下を示しています。転帰改善のエビデンスが集積中で、近い将来の選択肢となる可能性があります。

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