Forest background
バイオインフォの森へようこそ

血中リウマトイド因子濃度

目次

定義と概要

リウマトイド因子(Rheumatoid factor; RF)は、主に免疫グロブリンG(IgG)のFc領域に結合する自己抗体で、最も一般的なのはIgM型です。血中リウマトイド因子濃度とは、血清中に存在するRFの量を示す検査値で、多くの施設で国際単位(IU/mL)で報告されます。RFは関節リウマチ(RA)で高値になることが多い一方、健康高齢者や感染症、他の自己免疫疾患でも上昇し得るため、疾患特異性は限定的です。

RFは“自己抗体”の一種ですが、低力価のRFは感染後や加齢に伴い一過性に出現することがあり、必ずしも病的とは限りません。一方で高力価のRFは免疫複合体の形成や補体活性化を介して炎症を増幅し、RAにおける関節滑膜炎や血管炎などの病態に関与すると考えられています。

臨床では、RFはRAの診断補助や表現型の把握に用いられますが、単独では診断確定に十分ではありません。抗CCP抗体(ACPA)など他の自己抗体、炎症マーカー(CRP、赤沈)、画像所見、臨床症状との総合判断が不可欠です。

RFはアイソタイプ(IgM、IgG、IgA)に分けて測定されることもあり、特にIgA-RFは重症度や関節外症状と関連する可能性が示唆されています。ただし日常診療で一般的に報告されるのはトータルRFまたはIgM-RFであり、解釈には測定法や施設差への配慮が必要です。

参考文献

測定法と単位

RF測定には、ラテックス凝集法、免疫比濁法・免疫ネフェロメトリー、ELISA(酵素免疫測定)などが用いられます。ラテックス凝集法はIgG-Fcをコートした微粒子の凝集の程度を視覚的または機器で評価する歴史ある手法ですが、半定量的で偽陽性・偽陰性の影響を受けやすい側面があります。

免疫比濁法・ネフェロメトリーは、抗原抗体反応で生じる凝集の濁度や散乱光を測定し、検量線から濃度(IU/mL)を算出します。感度・再現性に優れ、現在の臨床検査で広く用いられています。結果はWHO国際標準にトレースされたキャリブレータにより校正されることが多いですが、完全な標準化は未だ途上です。

ELISAでは、固相化したヒトIgG-Fcに結合する患者血清中のRFを検出し、特定アイソタイプ(例:IgM-RF)に絞った定量も可能です。アイソタイプ特異的情報は病態理解に役立ちますが、施設間での結果の互換性には限界があります。

単位は一般にIU/mLが用いられますが、同じIU/mL表示でも試薬や装置、較正法の違いにより数値の絶対比較は慎重であるべきです。解釈は検査室が提示する基準範囲と臨床文脈に沿って行います。

参考文献

臨床的意義と限界

RFはRAの診断補助マーカーとして最も広く使われています。RA患者の多くで陽性となり、高力価は侵食性関節炎や関節外病変(例:リウマチ結節、血管炎)と関連することが報告されています。初診時の表現型把握や予後推定に一定の価値があります。

一方でRFは特異性が十分ではありません。シェーグレン症候群、B型・C型肝炎、結核、細菌性心内膜炎、間質性肺疾患、サルコイドーシス、加齢など多彩な状況で上昇し得ます。したがって、無症状者のスクリーニングには不適で、臨床症状がある場合の補助検査として位置付けられます。

陰性だからといってRAを否定できない点も重要です。いわゆる血清陰性関節リウマチではRFやACPAが陰性でも臨床的にRAと診断され得ます。したがって、RF単独での意思決定は避け、関節所見や画像、他の自己抗体を含めた総合評価が必要です。

さらに、RF値のモニタリングは治療反応性の厳密な指標ではありません。治療により低下することはありますが、疾患活動性の指標(DAS28、CRPなど)ほどの即時性・相関は期待できないため、補助的に解釈します。

参考文献

異常値の原因と鑑別

RF高値の原因には、RAのほか、シェーグレン症候群、混合型クリオグロブリン血症(しばしばC型肝炎に合併)、慢性肝疾患、慢性感染症、間質性肺疾患などが挙げられます。喫煙はRF上昇と強く関連する環境因子として知られています。

高齢者では症状がなくても低力価のRF陽性がみられることがあり、臨床的意義が限定的な場合があります。逆に若年者の高力価RFは、関節炎の症状や他の自己抗体の有無、炎症反応を総合して慎重に評価する必要があります。

鑑別を進める際は、抗CCP抗体、ANA、抗SS-A/SS-B抗体、CRP・赤沈、肝炎ウイルス検査、血液培養、胸部画像などの追加検査を、症状やリスクに応じて選択します。

RF低値や陰性でも、関節炎が持続し画像で滑膜炎や骨びらんが示唆される場合はRAが疑われます。したがって「RF=診断」ではなく、常に臨床全体像の一部として扱うことが重要です。

参考文献

結果への対応

RFが基準範囲を超えた場合でも、直ちにRAと結論づけるべきではありません。まずは症状(朝のこわばり、関節痛・腫れ、倦怠感、体重減少)、診察所見、炎症マーカーの確認が優先されます。症状が乏しければ、経過観察や必要時の再検も選択肢です。

関節症状がある、またはRFが高力価である場合は、抗CCP抗体や画像検査を含む精査を行い、早期にリウマチ専門医へ紹介することが望まれます。早期診断・治療は予後改善に直結します。

RF高値が感染症や肝疾患、クリオグロブリン血症に関連すると疑う場合は、該当領域の精査(例:ウイルス検査、血液培養、免疫電気泳動、腹部エコーなど)を進め、原因治療を優先します。

検査法や施設差による“見かけの変動”も念頭に置き、同一検査室・同一法での再検や、報告書に記載された基準範囲・単位を必ず参照します。自己判断での治療やサプリメントの開始は避け、医療者と結果を共有して判断してください。

参考文献