血中ホモシステイン濃度
目次
定義と基礎知識
ホモシステインは含硫アミノ酸で、必須アミノ酸であるメチオニンの代謝過程で生じる中間体です。血中では自由型は少なく、多くはタンパク質結合型や二硫化体として存在し、これらを総称して総ホモシステインと呼びます。
ヒトではホモシステインは二つの主要な経路で代謝されます。ひとつはビタミンB12依存の再メチル化によりメチオニンへ戻る経路、もうひとつはビタミンB6依存のトランススルフレーションでシステインへと変換される経路です。
血中ホモシステイン濃度は栄養状態(葉酸、B12、B6)、腎機能、年齢、性別、遺伝的多型(MTHFRなど)に影響されます。検査の際はこれら背景因子を考慮して解釈する必要があります。
臨床的には動脈硬化や血栓症との関連が注目されてきましたが、ビタミン補充でホモシステインを低下させても心筋梗塞を一貫して減らせない試験が多く、マーカーとしての位置付けが主流です。
参考文献
測定の対象と方法
臨床検査では空腹時の血漿または血清の総ホモシステインを定量するのが一般的です。採血後は赤血球からの放出を避けるため、速やかな遠心分離と低温管理が推奨されます。
測定法には高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)や質量分析(LC-MS/MS)、酵素サイクリング法や免疫測定法などがあります。多くの方法で前処理として還元反応により総ホモシステインを遊離させます。
HPLC法では蛍光誘導体化したホモシステインを検出し、内部標準で定量性を確保します。酵素法ではホモシステインを基質として酵素反応のNAD(P)H吸光度変化を測定します。
施設により測定系や基準範囲は異なるため、結果の解釈には検査室固有の参考範囲と品質管理体制の確認が重要です。
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臨床的意義
高ホモシステイン血症は葉酸・ビタミンB12・B6不足、腎機能障害、甲状腺機能低下、薬剤、遺伝性代謝異常などで生じます。原因検索と基礎疾患の治療が重要です。
先天性ホモシスチン尿症(CBS欠損)では重度の高値、血栓症やレンズ脱臼、骨格異常などを呈し、早期診断とピリドキシンやベタイン等の治療が必要です。
心血管疾患との関連は観察研究で強調されましたが、無作為化試験ではビタミン補充により心筋梗塞の減少は一貫せず、一次予防・二次予防の rutin 検査には推奨されません。
一方で脳卒中の一部リスク低下が示唆された試験もあり、個別の臨床状況(欠乏の疑い、若年性血栓症、家族歴など)では測定が有用な場面があります。
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影響因子と遺伝・環境
双生児研究では血中ホモシステインの遺伝率は概ね50〜65%と報告され、残りは栄養・腎機能・生活習慣など環境因子の影響が大きいと考えられます。
MTHFR C677T多型は葉酸状態が低いときに濃度上昇に寄与しますが、葉酸強化政策のある国では影響が小さくなる傾向があります。
喫煙、過量のアルコール、コーヒーの多飲、加齢、男性でやや高値、妊娠では低下といった影響が知られています。
採血条件(空腹、採血後の処理時間)も数値に影響するため、検査の標準化が重要です。
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検査の実践上の注意
一般的な参考範囲は約5〜15 μmol/Lですが、施設により差があるため結果用紙の基準を優先します。小児や妊婦では低め、腎機能障害では高めです。
検査は空腹時の朝採血が望ましく、EDTA採血後は速やかに遠心し血漿を分離、冷却保存で安定化させます。
結果が高値であれば、まずビタミンB12・葉酸の欠乏や腎機能低下を確認します。薬剤歴や甲状腺機能も評価します。
治療は原因対処が基本で、栄養欠乏があれば補充します。先天性疾患が疑われる場合は専門医へ紹介します。
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