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血中ビタミンD濃度

目次

定義と基礎知識

血中ビタミンD濃度とは、体内のビタミンD状態を反映する指標で、一般に25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]を血清で測定します。活性型の1,25(OH)2Dは代謝回転が速く、欠乏時でも維持され得るため、栄養学的評価には適しません。

ビタミンDは皮膚での紫外線B(UVB)照射により7-デヒドロコレステロールから合成されるほか、魚類や強化食品、サプリメントから摂取されます。皮膚合成は季節・緯度・皮膚色・日光曝露時間・日焼け止め使用で大きく左右されます。

血中25(OH)Dは肝臓での水酸化により生成され、半減期は約2〜3週間です。ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)の双方が25(OH)Dに変換され、測定値は両者の合計を示すことが推奨されます。

臨床的には骨・ミネラル代謝評価、くる病・骨軟化症・骨粗鬆症の診断補助、慢性腎・肝疾患や吸収不良症候群の評価、特定薬剤内服時のモニタリングなどに用いられます。単独値ではなく、臨床背景と他の検査(Ca、P、ALP、PTH等)と併せて解釈します。

参考文献

測定法と標準化

ビタミンD状態の評価は25(OH)Dの定量で行われ、方法には免疫測定法(CLIA、RIA、ELISAなど)と液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析(LC-MS/MS)があります。免疫法は迅速で安価ですが、交差反応やD2/D3の回収率差に注意が必要です。

LC-MS/MSは同定特異性が高く、25(OH)D2と25(OH)D3を分離定量できるため、リファレンス法とみなされています。検査室間差を最小化するため、国際的な標準化プログラムが進められてきました。

NIH/CDCなどが主導するVitamin D Standardization Program(VDSP)は、参照手順と標準物質を提供し、各検査室の値をトレーサブルにする枠組みです。標準化は研究比較と臨床判断の再現性向上に不可欠です。

単位はng/mL(米国中心)とnmol/L(国際的)があります。換算は1 ng/mL = 2.5 nmol/Lです。採血季節や保存条件も結果に影響しうるため、フォローアップでは同一法・同一季節での比較が望まれます。

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生理作用と臨床的意義

ビタミンDは腸管でのカルシウム・リン吸収を促進し、骨形成と石灰化を支えます。25(OH)Dが腎で1α水酸化されて活性型1,25(OH)2Dとなり、ビタミンD受容体(VDR)を介し標的遺伝子を調節します。

欠乏時には二次性副甲状腺機能亢進症が生じ、骨吸収亢進、骨密度低下、骨軟化症や小児のくる病を来します。筋力低下や転倒リスク上昇と関連する報告もありますが、補充効果は用量・対象で異なります。

免疫・心血管・代謝・がんなど骨外作用が注目されますが、観察研究と無作為化試験の結果は一貫しません。大規模試験VITALでは主要心血管・がん予防効果は限定的で、特定サブグループでの示唆に留まります。

一方、自己免疫疾患発症リスクの低減に関する報告や、感染症に対する補助的効果の示唆もあります。総じて、骨健康の維持には有用で、骨外領域ではエビデンスの質と一貫性に留意が必要です。

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不足・過剰と対応

欠乏の原因として、日照不足、皮膚被覆、濃い皮膚色、肥満、吸収不良、肝・腎疾患、抗てんかん薬やリファンピン等の酵素誘導薬が挙げられます。妊娠・授乳期、乳児、高齢者もリスクが高い集団です。

欠乏への対応は、食事や日光曝露の最適化に加え、コレカルシフェロール(D3)またはエルゴカルシフェロール(D2)の補充です。重度欠乏では短期高用量レジメン後、維持投与が推奨されます。医療者の指導の下で行います。

過剰症は主にサプリメント過量摂取で生じ、高カルシウム血症、腎障害、心律異常を来します。血中25(OH)Dが150 ng/mL(375 nmol/L)を超えるレベルで報告されることが多いです。症状やCaのモニタリングが重要です。

ガイドライン間で至適域の解釈は異なり、IOMは骨健康の観点から20 ng/mL以上を、内分泌学会は30 ng/mL以上を十分とするなど差があります。個別背景に応じ、過不足の是正を段階的に行います。

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変動要因:遺伝と環境

25(OH)D濃度の個人差は遺伝と環境の相互作用で説明されます。双生児研究では季節により遺伝率が変動し、冬季は遺伝要因の寄与が大きく、夏季は日照等の環境要因が優勢となることが示されています。

具体的には、男性双生児の研究で冬季の遺伝率は50〜70%と推定され、夏季には低下しました。一方、GWASではGC、DHCR7/NADSYN1、CYP2R1、CYP24A1などの座位が同定され、濃度の一部を説明します。

しかし、既知の多遺伝子スコアが説明する分散は限定的で、生活習慣(屋外活動、衣服、日焼け止め)、緯度、BMI、年齢、皮膚色、食事・サプリ摂取が大きく影響します。

したがって、個別の至適値・必要量は季節や生活背景で変わるため、同一人物でも時期により測定値が揺れます。臨床判断では季節性と測定法も考慮する必要があります。

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