血中アルブミン濃度
目次
概要
血中アルブミン濃度は、血液中に溶けている主要なタンパク質であるアルブミンの量を示す指標で、通常はg/dL(またはg/L)で報告されます。アルブミンは肝臓で合成され、血液の浸透圧(膠質浸透圧)を維持する中心的な役割を担い、浮腫の予防や体液の分配に大きく関わっています。また、脂肪酸、ビリルビン、ホルモン、薬剤などさまざまな分子の運搬体としても機能します。
臨床現場では、血中アルブミン濃度は栄養状態や肝機能、腎機能、炎症の有無を間接的に反映する検査として広く使われています。ただし、アルブミンは「陰性急性期タンパク質」であり、炎症が起こると合成が低下し、血管外への移行が増えるため、栄養だけを示す単純なマーカーではありません。このため、単独ではなく他の検査や臨床情報と併せて解釈されます。
一般的な成人の基準範囲はおおむね3.5〜5.0 g/dL(35〜50 g/L)ですが、検査法や施設によってわずかな差異が存在します。小児や妊娠、入院中の重症患者では値が異なることがあり、年齢や病態の文脈で判断することが求められます。測定法の違い(ブロモクレゾールグリーン法など)や前処理条件も結果に影響し得るため、解釈には注意が必要です。
血中アルブミン濃度の低下(低アルブミン血症)は、肝硬変やネフローゼ症候群、蛋白漏出性腸症、重症感染症、熱傷、希釈による低値(体液過剰)など多彩な原因で起こります。一方で高値はまれで、多くは脱水や駆血の影響など前分析的要因によります。適切な診断と治療のためには、臨床症状や他の検査結果と合わせて総合的に評価することが不可欠です。
参考文献
測定と解釈のポイント
アルブミンは急性期反応で低下するため、感染や手術、外傷など炎症性ストレス下では、栄養状態が良好でも値が下がることがあります。したがって、栄養評価の単独指標としては不適切であり、体重変化、摂取状況、身体所見、C反応性蛋白(CRP)など他の指標と組み合わせることが推奨されます。
測定には色素結合法(ブロモクレゾールグリーン[BCG]法、ブロモクレゾールパープル[BCP]法)や免疫学的方法、蛋白分画(電気泳動)などが用いられます。BCG法は感度が高い一方で、炎症時にグロブリンと交差反応して過大評価することがあると報告されています。BCP法は特異性が高いとされますが、条件によってはやや低めに出ることがあります。
検体の採取条件も結果に影響します。長時間の駆血や体位変換、脱水は見かけ上のアルブミン高値を招く一方、点滴直後の採血や希釈は低値の原因になります。検体の溶血や高ビリルビン血症などの干渉因子も測定法によって影響が異なるため、結果が臨床像と合わない場合は再検や別法での測定を検討します。
解釈にあたっては、低アルブミン血症が浮腫や腹水、薬物の遊離型増加に伴う副作用リスク上昇など臨床的な影響を持つことを理解することが重要です。薬物動態への影響は特に高い蛋白結合率を持つ薬剤(ワルファリン、フェニトインなど)で顕著となり、用量調整やモニタリングが必要になる場合があります。
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生理学的役割
アルブミンは総血漿蛋白の約半分を占め、血管内外の水分バランスを保つ膠質浸透圧の主たる決定因子です。この性質により、アルブミンが低下すると組織間隙への水分移行が進み、末梢のむくみや胸水、腹水などが出現しやすくなります。逆に急速な脱水は相対的高値をもたらします。
運搬体としてのアルブミンは、疎水性の脂肪酸やステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、ビリルビン、薬剤など多彩な分子と可逆的に結合します。これにより、これら物質の可溶化、分布、代謝、排泄が調整され、薬物の有効性や副作用の発現にも関係します。
アルブミンはまた、チオール基を介した抗酸化作用や、血液のpH緩衝、金属イオン結合(カルシウム、銅など)の役割も持ちます。酸化ストレスや炎症の環境下でアルブミンが変性・修飾されると、機能低下が生じ臨床影響が現れる可能性があります。
合成は主に肝細胞で行われ、1日に約10〜15 g産生されるとされます。合成調節は栄養、ホルモン、炎症性サイトカイン(IL-6など)、門脈圧や血漿量の変化に影響されます。半減期は約20日ですが、急性期には分布や分解の変化により血中濃度が速やかに変動し得ます。
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異常値の原因
低アルブミン血症の原因は大きく、産生低下(肝不全、炎症時の合成抑制)、喪失増加(腎症による尿中喪失、蛋白漏出性腸症、広範熱傷)、分布異常・希釈(心不全や腎不全に伴う体液貯留、妊娠)に分けられます。複数の機序が同時に関与することも少なくありません。
肝硬変など慢性肝疾患では、合成能低下と門脈圧亢進に伴う分布の変化が重なり、特に顕著な低値がみられます。ネフローゼ症候群では大量のアルブミンが尿中へ漏出し、浮腫や脂質異常を伴うのが典型です。蛋白漏出性腸症では消化管からの蛋白喪失が主体となり、診断にはα1アンチトリプシン便クリアランスなどを用います。
高アルブミン血症は原疾患というより、脱水や長時間の駆血、採血条件など前分析的要因による見かけ上の上昇がほとんどです。まれにアルブミン製剤投与直後に一過性の高値がみられますが、臨床的意義は限定的です。
遺伝的な特殊例として、先天性無アルブミン血症(analbuminemia)や二峰性アルブミン血症(bisalbuminemia)があります。前者は極めて稀で、別タンパク質の代償により比較的無症状で経過することもありますが、妊娠合併症など注意点があります。後者は電気泳動で二つのアルブミン分画が見える表現型です。
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遺伝・環境要因
血中アルブミン濃度には遺伝要因と環境・後天的要因の双方が影響します。遺伝学的研究では、アルブミン遺伝子座(ALB)や肝機能・炎症関連領域に関連が示され、SNPベースの遺伝率が一定程度存在することが報告されています。ただし、測定法や集団差により推定は変動します。
大規模バイオバンク解析では、アルブミンのSNP遺伝率は概ね1〜2割台と推定される報告があり、残りは環境・疾患・生活習慣・測定誤差など非遺伝要因が説明すると考えられています。これは炎症や栄養、肝腎疾患など臨床因子がアルブミンに強く影響するという生物学的知見とも整合します。
双生児研究では、広義の遺伝率が中等度(おおむね3〜4割程度)と推定された報告があり、家族内共有環境や個別環境が残りを占めるとされますが、対象や年齢、共変量調整により幅があります。いずれにせよ、臨床現場では非遺伝要因の管理が実際の値に与える影響が大きいと理解されます。
したがって、目安として遺伝要因30%前後、環境・後天要因70%前後といったバランスを念頭に置きつつも、個人差や状況により比率は容易に変化し得ると解釈するのが実務的です。検査の目的は比率の厳密推定より、異常の早期発見と原因同定にあります。
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