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血中アルカリホスファターゼ活性

目次

概要

アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase;ALP)は、リン酸基を加水分解して無機リン酸を遊離する加水分解酵素で、至適pHがアルカリ側にあることが名称の由来です。血清ALP活性は主に肝(胆道系)と骨由来ですが、腸管、胎盤、腎などにもアイソ酵素が存在します。臨床検査では、肝胆道系障害や骨代謝異常のスクリーニングとして汎用され、年齢・妊娠・成長期などの生理的要因でも変動します。

血中ALPは、胆汁うっ滞や胆道閉塞で上昇しやすく、同時にγ-GTPや5′-ヌクレオチダーゼの上昇を伴うと肝胆道由来が疑われます。一方、骨芽細胞の活性化(成長期、骨折治癒、骨Paget病、甲状腺機能亢進や副甲状腺機能亢進)でも上昇します。逆に低ALPは、低リン酸化症(低ホスファターゼ症)、亜鉛欠乏、重度の栄養障害、甲状腺機能低下などが原因となることがあります。

検査解釈では、ALP単独では由来臓器の特定が難しいため、γ-GTP、AST/ALT、ビリルビン、カルシウム・リン、PTH、ビタミンDなどの併用評価、あるいはALPアイソ酵素分画(電気泳動や免疫法)を用いて鑑別します。年齢や妊娠週数、施設ごとの測定法および基準範囲の違いにも注意が必要です。

ALP活性の個人差には遺伝要因も関与し、複数のゲノムワイド関連解析(GWAS)でABO、GPLD1、JMJD1Cなどの遺伝子座が関連すると報告されています。双生児研究では遺伝率が30〜60%程度と見積もられ、残余は環境要因(栄養、アルコール、薬剤、代謝・内分泌状態など)が担うと推定されています。

参考文献

測定と解釈

ALPはIFCC推奨法に基づき、p-ニトロフェニルリン酸(pNPP)を基質とする比色法で測定されることが多く、pH約10の緩衝液中でpNPPからp-ニトロフェノールを生成し、その吸光度変化(405 nm付近)を速度論的に追跡して活性を算出します。温度(通常37℃)や緩衝液の種類(AMPやDEA)により結果が変わるため、施設間差に注意が必要です。

結果解釈では、まず基準範囲を確認し、上昇がある場合に肝胆道由来か骨由来かを推定します。γ-GTPや5′-ヌクレオチダーゼの併存上昇は肝胆道性を支持し、カルシウム・リン、ALP骨型(BAP)、PTH、ビタミンDなどの異常は骨由来を示唆します。必要に応じて超音波やMRCP、骨シンチなどの画像検査も併用されます。

小児や思春期では骨成長により高ALPとなることが生理的であり、妊娠後期では胎盤型ALPにより2〜3倍程度まで上昇することがあります。高脂肪食後に血液型OまたはBの分泌型で腸型ALPが一過性に上昇することも知られています。

低ALPは見逃されやすい所見ですが、難治性の骨痛、反復する骨折、歯の早期脱落などがあれば低ホスファターゼ症(ALPL遺伝子異常)を疑い、ALP基準値下限未満の持続やピリドキサール5′リン酸(PLP)の上昇測定、遺伝学的検査が検討されます。

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生理学的役割

ALPは無機ピロリン酸(PPi)などのリン酸化合物を加水分解し、骨の石灰化において重要な役割を果たします。骨芽細胞に発現する組織非特異的ALP(TNAP)がPPiを低下させることで、ハイドロキシアパタイトの沈着が促進されます。TNAPの先天的欠損は低ホスファターゼ症の原因で、重症例では骨化障害や呼吸不全を生じます。

肝・胆道では、胆汁うっ滞時に肝細胞膜や胆管上皮由来のALPが血中に逸脱して上昇します。腸型ALPは腸粘膜に存在し、リポ多糖(LPS)の脱リン酸化により炎症を緩和する可能性が示唆されています。胎盤型ALPは妊娠中に上昇し、胎児発育環境の一部として機能します。

ALPはまた、ATPやピロリン酸の局所濃度調節を通じて細胞外基質の恒常性維持に関わり、歯のセメント質形成や創傷治癒にも関与することが示されています。

これらの生理作用の破綻は、骨脆弱性、くる病・骨軟化症、歯牙異常、胆汁うっ滞性疾患の進展など、多彩な臨床像として現れます。

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異常値と対応

高ALPの場合、症状や他の肝胆道系マーカーの変化(γ-GTP、ビリルビン、AST/ALT)を総合し、胆道閉塞や原発性胆汁性胆管炎、薬剤性肝障害、肝転移などの鑑別を行います。肝由来が疑われる場合は腹部超音波やMRCP、必要に応じて自己抗体やウイルスマーカーを追加します。

骨由来が疑われる高ALPでは、骨痛、骨変形、聴力低下などの症状、カルシウム・リン、PTH、25(OH)D、骨型ALPの測定、骨X線や骨シンチを考慮します。Paget病や骨転移、原発性副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、ビタミンD欠乏などが鑑別に挙がります。

低ALPが持続する場合は、低ホスファターゼ症、亜鉛・マグネシウム欠乏、重度貧血、甲状腺機能低下、栄養障害、最近の大手術後などを見直します。低ホスファターゼ症が疑われる場合はPLPの上昇やALPL遺伝子解析を検討します。

薬剤歴の確認は重要で、抗てんかん薬(フェニトイン、フェノバルビタール)、経口避妊薬、抗生物質、抗真菌薬、一部の抗うつ薬やスタチンなどがALPに影響することがあります。生活習慣としてはアルコール摂取、栄養状態、最近の食事内容(脂肪摂取)も評価します。

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検査法と理論

臨床検査で最も一般的なALP測定は、p-ニトロフェニルリン酸(pNPP)を基質とするIFCC標準化法です。アルカリ条件下(pH約10)でALPがpNPPからp-ニトロフェノール(黄色発色)を生成し、その吸光度(405 nm)増加速度から国際単位(U/L)を算出します。緩衝液には2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)などが用いられます。

測定は温度依存性が高く、通常37℃で標準化されます。溶血、強い高ビリルビン血症、EDTA汚染などの前分析要因は結果に影響します。EDTAは二価金属イオンをキレートしてALP活性を阻害するため、採血管の取り違えを避ける必要があります。

アイソ酵素同定は、電気泳動や免疫沈降、熱安定性の差(骨型は熱に弱く、胎盤型は熱に強い)を利用する方法があり、鑑別診断に有用です。近年は骨型ALP(BAP)の免疫測定が骨代謝評価に用いられます。

国際的な標準化と外部精度管理は施設間差の縮小に寄与していますが、依然として機器・試薬差や検体取り扱いで乖離が生じ得るため、同一施設・同一法での経時追跡が望まれます。

参考文献