色素斑(しみ・そばかす・ほくろ)
目次
定義と分類
色素斑は、皮膚のメラニン色素の量や分布の変化によって生じる見た目の斑点の総称で、良性の所見が大半です。代表的なものに、しみ(老人性色素斑)、そばかす(雀卵斑)、ほくろ(母斑)が含まれます。
しみは主に慢性的な紫外線曝露により表皮でメラニンが過剰に沈着して現れ、加齢とともに目立ちやすくなります。医学的には日光黒子(ソーラー・レンチゴ)などが該当します。
そばかすは小さな褐色の斑点が顔面や肩に散在する状態で、遺伝的素因が強く、幼少期から出現しやすく、夏季に濃く冬季に薄くなる傾向があります。
ほくろはメラノサイト(色素細胞)の良性増殖による母斑で、平坦なものからわずかに隆起するものまで多様です。大半は無害ですが、稀に変化が悪性を示すことがあり注意が必要です。
参考文献
病態生理(発生機序)
色素斑は、メラニンを作るメラノサイトの数が増える場合、またはメラノサイトの活動性が亢進してメラニン産生が増える場合に生じます。炎症後色素沈着など周囲の細胞の影響も関与します。
そばかすでは、メラノコルチン1受容体(MC1R)の機能低下により黒色のエウメラニンが減り、赤黄色のフェオメラニンが相対的に増えることで、紫外線の影響を受けやすく可視化されます。
ほくろでは、BRAFやNRASなどのドライバー変異によりメラノサイトがクローン性に増殖しますが、腫瘍抑制経路によって多くは増殖が停止し、良性のまま安定化します。
しみ(ソーラー・レンチゴ)では慢性的な紫外線により表皮—真皮接合部の構造変化とメラノサイト活性化が起こり、ケラチノサイトや線維芽細胞の光老化も色素沈着維持に関与します。
参考文献
遺伝的要因
そばかすはMC1R遺伝子多型と強く関連し、赤毛・色白の皮膚型に多くみられます。これらの変異は紫外線に対する皮膚反応と色素沈着の出方に影響します。
IRF4、ASIP、TYRなどの遺伝子多型も皮膚色、日焼けのしやすさ、そばかすの有無に関与し、複数の遺伝子の組み合わせで表現型が決まります。
ほくろの数は双生児研究から中等度から高い遺伝率が示唆され、家族内で数が多い傾向がみられますが、環境要因との相互作用が大きいのが特徴です。
獲得母斑の成立にはBRAFやNRAS変異が頻繁にみられますが、これだけでは悪性化せず、追加変異や微小環境の影響が必要と考えられています。
参考文献
- MedlinePlus Genetics: MC1R gene
- Nature Genetics: IRF4 variant affects human pigmentation
- DermNet: Melanocytic naevus
環境的要因
紫外線(UVA/UVB)は色素斑の最も重要な環境因子で、緯度、季節、屋外活動、日焼けサロン利用などで曝露量が大きく変わります。
ホルモン変化や炎症後色素沈着、光毒性・光過敏性を起こす薬剤も色素斑の目立ち方に影響します。皮膚の乾燥や摩擦など物理刺激も補助的に作用します。
皮膚型(フィッツパトリック分類)により紫外線に対する反応が異なり、タイプI〜IIではそばかすや日光黒子が目立ちやすくなります。
広域スペクトラムの日焼け止め、衣服、帽子、日陰利用により曝露を減らせますが、完全には防げないため、継続的な対策と早期発見が重要です。
参考文献
診断と治療
診断は視診とダーモスコピーが基本で、形状や色のパターンから良悪性を推定します。疑わしい病変では部分生検や切除生検で確定診断を行います。
そばかすやしみでは、紫外線対策が治療の土台です。外用薬としてはハイドロキノン、トレチノイン、アゼライン酸などが用いられ、徐々に色を薄くします。
レーザー(Qスイッチルビー、アレキサンドライト、ピコ秒レーザー)やIPLは選択的にメラニンを破砕し、しみやそばかすの改善に有効ですが、再発や炎症後色素沈着のリスク管理が必要です。
ほくろは良性であれば経過観察が可能です。増大、色や形の不整、出血などの変化があれば早期に皮膚科で評価し、必要に応じて外科的切除を行います。
参考文献

