腫瘍壊死因子受容体2(TNF-R2)血清濃度
目次
概要
腫瘍壊死因子受容体2(TNF-R2, TNFRSF1B)は、TNF-αの受容体の一つで、主に制御性T細胞、内皮細胞、免疫細胞などに発現します。血清中で測定される可溶型TNF-R2(sTNFR2)は、細胞表面から切断・遊離された受容体外領域で、TNFシステムの活性化状態を反映する安定なバイオマーカーとして研究・臨床で用いられています。
sTNFR2は、プロテアーゼ(代表的にはADAM17/TACE)によるエクトドメインシェディングで産生されます。可溶型はTNFに結合してシグナルを中和する「デコイ」として働く一方、条件によりTNFの半減期や分布に影響を与える可能性もあります。
TNFR2はTNFR1と異なりデスドメインを持たず、主としてNF-κB活性化や生存・増殖シグナルを仲介します。特に制御性T細胞でのTNFR2シグナルは免疫抑制機能の維持・拡大に関わり、自己免疫やがん免疫で注目されています。
血清TNF-αは半減期が短く変動が大きいのに対し、sTNFR2は比較的安定で、慢性炎症や代謝疾患、腎疾患などの疾患活動性や予後の指標としての有用性が多く報告されています。
参考文献
- TNF signaling review (Wajant 2002)
- TNFR2 in immunity and cancer (Chen & Oppenheim 2017)
- UniProt TNFRSF1B (TNFR2)
測定値に影響する要因(遺伝・環境)
sTNFR2濃度は、多因子で決まり、遺伝学的な違いと環境・生活歴、疾患負荷、年齢・性別などの要因が重なって決まります。大規模プロテオームGWASではTNFRSF1B座位にシスpQTLが同定され、遺伝要因が濃度の一部を説明することが示されています。
一方で、肥満・インスリン抵抗性、喫煙、感染、慢性腎疾患や関節リウマチなどの慢性炎症性疾患は、sTNFR2を上昇させる代表的な環境・臨床要因です。加齢も緩やかな上昇と関連します。
これらの研究は、遺伝要因がしばしば濃度分散の一部(例:強いシスpQTLで一桁%から数十%)を説明しうる一方、残余は環境・疾患要因によることを示唆します。ただし推定比率は測定法・集団により大きく変動します。
したがって、個人のsTNFR2値の解釈では、遺伝背景のみならず生活習慣、併存疾患、薬剤(特に抗TNF薬)などの影響を系統的に確認することが重要です。
参考文献
- Genomic atlas of the human plasma proteome (Sun et al., Nature 2018)
- Co-regulatory networks of human serum proteins (Emilsson et al., Nature 2018)
臨床的意義
sTNFR2はTNF経路の持続的活性化を反映するため、慢性炎症を伴う疾患の活動性評価やリスク層別化に用いられます。TNF-α自体よりも検出が安定で、縦断的モニタリングに適しています。
2型糖尿病と腎症の文脈では、循環sTNFR1/2が腎機能低下や末期腎不全への進行リスクと強く関連することが報告されています。炎症に関わる経路の中間表現型として、予後予測マーカーになり得ます。
関節リウマチなどの自己免疫疾患では、疾患活動性や組織破壊と相関する報告があり、他の炎症マーカーと併せて病勢の補助評価に用いられます。
心血管・老年領域でも、sTNFR群と予後の関連が示唆されますが、用途は補助的で、単独で診断を確定するのではなく臨床所見や他検査と統合して解釈します。
参考文献
測定法と理論
sTNFR2の定量は主にサンドイッチELISAで行われ、固相化捕捉抗体と標識検出抗体でTNFR2外領域を挟み、標準曲線で濃度換算します。多重測定にはビーズベース(Luminex)や電気化学発光法(MSD)も用いられます。
前分析要因として、検体種(血清/EDTA血漿)、凍結融解回数、保存温度が結果に影響します。キット間・プラットフォーム間で値がずれるため、同一法での縦断測定が推奨されます。
可溶型はエピトープの露出が分子状態で変わるため、抗体の特異性・交差反応性の検証が重要です。特にエタネルセプト(TNFR2-Fc)は一部アッセイで交差する可能性があり、解釈に注意が必要です。
測定の性能指標(感度、直線性、回収率、再現性)は各キット取扱説明書に記載されており、検査室は内部精度管理で妥当性を担保します。
参考文献
生物学的役割と解釈上の注意
TNFR1は主に可溶性TNFを、TNFR2は膜結合型TNFを高親和性で受容する傾向があり、前者は細胞死シグナル、後者は生存・修復シグナルを強めるとされます。sTNFR2はその動的バランスの結果として循環に現れます。
sTNFR2高値は必ずしも病原性を意味せず、炎症反応の制御機構(デコイ作用)や組織修復の過程を反映することもあります。したがって、CRP、IL-6、sTNFR1などの併測と臨床文脈が不可欠です。
シェディングに関与するADAM17などの活性化は、他の受容体の可溶化とも連動することがあり、全身炎症の広いシグナルを示し得ます。
抗TNF療法やステロイド、免疫抑制薬はsTNFR2に二次的影響を与えることがあるため、薬歴の確認と測定タイミングの標準化が求められます。
参考文献

