脈拍数
目次
脈拍数の概要
脈拍数は心臓が1分間に拍動する回数を体表から感じ取ったもので、通常は橈骨動脈で測定し、心拍数の指標として用いられます。安静時の値は自律神経やホルモン、体温などの影響を受け、同じ人でも日内で変動します。
成人の安静時脈拍はおおむね60〜100回/分が目安で、鍛えた持久系アスリートでは50回/分未満でも生理的に問題ないことがあります。年齢、体格、体力、服薬状況によって範囲は広がります。
測定は座位で数分安静後に15秒間数えて4倍する簡便法や、医療用モニタ、ウェアラブル心拍計を使います。装置は利便性が高い一方、体動や装着状態で誤差が生じるため注意が必要です。
脈拍数は交感神経の活性化で上昇し、副交感神経で低下します。発熱、脱水、痛み、情動、カフェインやニコチンの摂取なども上昇要因であり、甲状腺機能や貧血など基礎疾患も影響します。
参考文献
- American Heart Association: Target Heart Rates
- MedlinePlus: Pulse
- Harvard Health Publishing: What your heart rate is telling you
脈拍数の遺伝的要因と環境的要因の比率(%)
双生児研究や家系研究から、安静時脈拍の遺伝率は概ね30〜50%程度と報告され、遺伝素因が個人差の相当部分を規定することが示されています。ただし年齢や性別によって推定値は変動します。
ゲノムワイド関連解析では、多数の共通変異が脈拍に少しずつ影響し、SNP由来の遺伝率は約20%前後と見積もられることがあります。残余は未解明の遺伝要因と環境因子で説明されます。
環境的要因には有酸素体力、身体活動量、睡眠、ストレス、喫煙やカフェイン、アルコール、体重、慢性疾患、薬剤(β遮断薬や甲状腺薬など)が含まれ、50〜70%を占め得ます。
したがって実務的には、遺伝30〜50%、環境50〜70%という幅を持って理解し、生活習慣最適化で改善余地が大きいことを強調します。
参考文献
- den Hoed et al., Identification of heart rate–associated loci (Nat Genet, 2013)
- GWAS Catalog: HCN4 gene associations
- Harvard Health Publishing: What your heart rate is telling you
脈拍数の意味・解釈
安静時脈拍は心臓と自律神経の負荷の簡便な指標です。一般に低いほど心肺持久力が高く、長期予後が良い傾向があります。一方、持続的な高値は心血管リスク増大と関連します。
頻脈は通常100回/分超、徐脈は60回/分未満と定義されますが、アスリートの徐脈は生理的です。発熱では体温1℃上昇につき脈拍が約10回/分増えることが知られています。
脈拍の急な変動、動悸、息切れ、胸痛、失神を伴う場合は不整脈や器質的心疾患の可能性があり、早期の受診が勧められます。甲状腺機能異常や貧血も鑑別に挙がります。
日常では、同じ時間帯・姿勢で継続測定し基準線を把握すると、体調変化や過度のストレス、過剰なトレーニングの早期サインとして役立ちます。
参考文献
- American Heart Association: Target Heart Rates
- JAHA 2016: Resting Heart Rate and All-Cause and Cardiovascular Mortality
- MedlinePlus: Pulse
脈拍数に関与する遺伝子および変異
洞結節のペースメーカー電流を担うHCN4は代表的な関連遺伝子で、機能低下変異は先天性徐脈や洞不全の原因となります。共通変異も安静時脈拍の個人差に寄与します。
心筋ナトリウムチャネルのSCN10AやSCN5A、心筋ミオシン重鎖のMYH6、自律神経シグナル調節のRGS6、K+チャネルKCNJ5なども関連が報告されています。
大規模GWASでは、これら多数の座位の効果は一つ一つは小さく、累積して脈拍の連続的な分布を形成します。臨床影響は生活因子と相互作用します。
一方で、稀な高影響度変異は家族性徐脈や伝導障害、不整脈症候群を引き起こすことがあり、症状や家族歴があれば遺伝学的評価が検討されます。
参考文献
- MedlinePlus Genetics: HCN4 gene
- MedlinePlus Genetics: SCN10A gene
- MedlinePlus Genetics: MYH6 gene
- den Hoed et al., Identification of heart rate–associated loci (Nat Genet, 2013)
脈拍数に関するその他の知識
心拍変動(HRV)は拍ごとの間隔の揺らぎで、自律神経機能の指標です。HRVが大きいほど柔軟なストレス応答が示唆され、過度の訓練やストレスで低下します。
有酸素トレーニング、体重管理、禁煙、十分な睡眠、ストレスマネジメントは安静時脈拍とHRVの改善に寄与します。β遮断薬は脈拍を下げ、甲状腺ホルモンやカフェインは上げます。
ウェアラブルは傾向把握に有用ですが、皮膚血流が乏しい寒冷時や激しい手首の動きで誤差が増えます。重要な判断は症状と医療機器の測定で確認します。
受診の目安として、原因不明の>120回/分の頻脈、失神や胸痛を伴う異常、安静時40回/分未満の徐脈(非アスリート)などは早急な評価が必要です。
参考文献

