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脈圧

目次

定義と基本概念

脈圧(みゃくあつ)は、血圧測定で得られる収縮期血圧(上の血圧)から拡張期血圧(下の血圧)を差し引いた値で、単位はmmHgです。例として120/80 mmHgなら、脈圧は40 mmHgになります。

脈圧は心臓が一回拍動で駆出する血液量(1回拍出量)と、大動脈や動脈のしなやかさ(動脈コンプライアンス)に主に依存します。動脈が硬いほど同じ駆出量でも脈圧は広がりやすくなります。

年齢とともに大動脈は硬化しやすく、拡張期血圧が下がり収縮期血圧が上がるため、脈圧は広がる傾向があります。これは生理的変化でもあり、動脈硬化の進行とも関連します。

臨床では、脈圧は動脈硬化や心血管リスクの簡便な指標として使われ、高齢者では特に予後予測に役立つことが知られています。

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生理学的背景

脈圧は、心臓の左室からの駆出と、動脈系のWindkessel(ウィンドケッセル)効果によって形作られます。ウィンドケッセル効果は大動脈が血液を一時的に貯めて拡張期に放出する性質で、これが脈圧を緩衝します。

動脈が硬くなるとウィンドケッセル効果が弱まり、収縮期に圧が高く、拡張期に圧が低くなりやすく、結果として脈圧は拡大します。

末梢動脈では圧波の反射により脈圧が中心(大動脈)より大きく見える増幅現象が起きます。したがってカフで測る上腕の脈圧は中心脈圧と完全には一致しません。

運動や発熱、甲状腺機能亢進などで拍出量が増えると、一過性に脈圧が拡大することがあります。逆に出血や心原性ショックでは拍出量低下で脈圧は狭小化します。

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臨床的意義

広い脈圧(例:>60 mmHg)は加齢性の動脈硬化、心血管イベント(冠動脈疾患、脳卒中、心不全)リスクの上昇と関連します。特に高齢者の予後予測に有用とされます。

狭い脈圧(例:<40 mmHg)は低拍出やショック、重症大動脈弁狭窄、心タンポナーデなどの重篤な状態を示唆する場合があります。

大動脈弁閉鎖不全や重度の甲状腺機能亢進、動静脈瘻などでは脈圧が著明に拡大することがあります。病態の鑑別に有用です。

脈圧は単独で診断を確定する指標ではなく、平均血圧、心拍数、臨床症状、臓器障害の有無と合わせて総合的に評価します。

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測定法と評価

家庭血圧計や診察室でのオシロメトリック法で得られた収縮期・拡張期血圧から脈圧を計算します。通常、数回測定して平均をとると信頼性が上がります。

中心脈圧や脈波伝播速度(PWV)を評価すると、動脈硬化の程度をより直接的に反映できます。これにはトノメトリーやカフベースの解析機器が用いられます。

測定時は座位で5分安静、適切なカフサイズ、上腕を心臓の高さに保つなどの標準手順が重要です。

日内変動や白衣効果があるため、家庭血圧での継続的な記録が診療では重視されます。

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関連するリスク因子と介入

脈圧拡大には加齢、動脈硬化、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、喫煙などが関与します。生活習慣の改善と血圧管理が基本です。

降圧薬ではRA系阻害薬、利尿薬、カルシウム拮抗薬などで収縮期血圧を下げることが脈圧是正にもつながります。

定期的な有酸素運動、体重管理、塩分制限、十分な睡眠、禁煙は動脈硬化予防と脈圧改善に寄与します。

急激な脈圧の異常や症状(胸痛、呼吸困難、失神)がある場合は救急受診が必要です。

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