胆石症と胆嚢炎
目次
定義と分類
胆石症は、胆汁の成分(コレステロールやビリルビンなど)が結晶化して石(胆石)となり、主に胆嚢内に形成される状態を指します。胆石は胆嚢に限らず、胆管内にも存在し得ますが、無症候のまま経過することも少なくありません。
急性胆嚢炎は、多くの場合、胆嚢頸部や胆嚢管が胆石で閉塞されることで胆汁の流れが滞り、細菌増殖や炎症が生じる病態です。右上腹部痛や発熱、圧痛(Murphy徴候)を伴い、未治療では重症化しうる急性腹症の代表です。
胆石は大きく、コレステロール系結石、黒色石(黒色ビリルビン結石)、褐色石(褐色ビリルビン結石)に分類されます。コレステロール結石は先進国で最多で、黒色石は溶血や肝硬変に、褐色石は胆道感染やうっ滞に関連します。
自然経過として、胆石保有者の多くは無症候ですが、年率1–2%程度で症候性となるとされます。症候性になると胆嚢炎、総胆管結石、胆管炎、胆石性膵炎などの合併症を来し得るため、適切な診断と管理が重要です。
参考文献
- NIDDK: Gallstones
- StatPearls: Cholelithiasis
- Tokyo Guidelines 2018 (TG18): Management of acute cholecystitis and cholangitis
症状と合併症
胆石発作(胆道疝痛)は、脂っこい食事後に増悪しやすい右上腹部の間欠的な強い痛みとして現れ、背部や右肩に放散することがあります。悪心・嘔吐を伴うことがあり、痛みは数十分から数時間持続するのが典型です。
急性胆嚢炎では、痛みが持続性となり発熱や白血球増加を伴います。身体診察では吸気時に右季肋部圧痛で吸気が止まるMurphy徴候が参考になります。放置すると壊疽性胆嚢炎や穿孔など重篤な合併症に至る場合があります。
総胆管結石が生じると、閉塞性黄疸や胆管炎(発熱、黄疸、右上腹部痛のCharcot三徴)がみられ、進行例では低血圧や意識障害を伴うReynolds五徴へと悪化し得ます。迅速な減圧と抗菌薬が必要です。
胆石性膵炎は、総胆管末端の結石による一過性閉塞で膵液の流出が妨げられ生じます。心窩部痛が背部へ放散し、血清アミラーゼ/リパーゼが上昇します。重症化例では集中治療、胆管炎合併例では緊急ERCPが求められます。
参考文献
発生機序と危険因子
コレステロール結石の形成は、胆汁中のコレステロール過飽和、核形成(コレステロール単水和物結晶)、胆嚢運動低下(うっ滞)、および粘液(ムチン)分泌増加が相互に関与します。肝でのコレステロール排泄増加や胆汁酸プールの減少が根底にあります。
胆嚢炎は、胆嚢管閉塞により内圧が上昇し、血流障害と炎症が進展することが主要機序です。細菌(大腸菌、クレブシエラなど)の二次感染が加わると重症化しやすく、敗血症性合併症のリスクが高まります。
黒色石はビリルビンカルシウムの重合体で、溶血性疾患や肝硬変などで非抱合ビリルビンが増加すると形成されやすくなります。褐色石は胆道感染・寄生虫や狭窄で胆汁うっ滞が起こるアジア圏で多く、脂肪酸石鹸やビリルビン酸カルシウムを含みます。
危険因子には、肥満・メタボリックシンドローム、妊娠やエストロゲン製剤、急速減量や長期絶食、回腸疾患・切除、静脈栄養、特定薬剤(セフトリアキソンなど)が挙げられます。生活・内分泌・腸肝循環の多因子が重なります。
参考文献
診断と検査
初期画像検査は腹部超音波が第一選択で、胆石の音響陰影、胆嚢壁肥厚、胆嚢周囲液、超音波Murphy徴候の有無を評価します。非侵襲的で感度・特異度に優れ、救急外来でも広く用いられます。
血液検査では、急性胆嚢炎で白血球やCRP上昇がみられます。総胆管結石や胆管炎を疑う場合は、ビリルビンや肝胆道系酵素の上昇を確認します。重症例では乳酸や腎機能も併せて評価します。
東京ガイドライン2018(TG18)では、局所所見(右上腹部痛・圧痛)、全身炎症所見(発熱、炎症反応)、画像所見の三要素で急性胆嚢炎の診断を行い、重症度分類に基づき治療戦略を決定します。
総胆管結石の評価には、非侵襲的なMRCPや高精細なEUSが有用です。治療的介入としてはERCPでの切開・採石やステント留置が行われ、敗血症を伴う場合は緊急での減圧が重要です。
参考文献
- Tokyo Guidelines 2018 (TG18): Diagnostic criteria and severity grading of acute cholecystitis
- ASGE guideline on the role of endoscopy in choledocholithiasis
治療と予防
無症候性胆石は多くで経過観察が選択されますが、症候性胆石症では腹腔鏡下胆嚢摘出術が標準治療です。糖尿病や高齢者、免疫不全では合併症リスクを考慮し早期介入が検討されます。
急性胆嚢炎では、重症度に応じた広域抗菌薬投与と早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術が推奨されます。重症例や手術困難例では経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)がブリッジ治療として有効です。
手術非適応や小さなコレステロール結石には、ウルソデオキシコール酸(UDCA)による溶解療法が選択肢となります。また、急速減量(特に減量手術後)では胆石形成予防としてUDCA投与が推奨されることがあります。
予防には、適正体重の維持、緩徐な減量、食物繊維や適度な脂質を含むバランスの良い食事、定期的な運動が役立ちます。基礎疾患や薬剤の見直しも重要で、医療者と計画的に進めることが勧められます。
参考文献

