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肌荒れ

目次

定義と範囲

肌荒れは、医学用語の単一疾患ではなく、皮膚のバリア機能が低下して乾燥・赤み・かゆみ・ひび割れ・ざらつきなどが生じた状態の総称です。日常の刺激や気候、体質、基礎疾患など多因子で生じます。

代表例には乾燥肌(皮脂欠乏性湿疹)、刺激性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、マスクや手洗いで悪化する手湿疹などが含まれます。いずれも角層の水分保持と脂質バランスの破綻が中心にあります。

肌荒れは一過性のこともありますが、繰り返す場合は背景にアレルギー素因や遺伝的バリア異常が潜むことがあります。適切なスキンケアと誘因回避で多くは改善します。

「にきび」「酒さ」など他疾患でも見かけ上の肌荒れ感が強く出ます。症状が長引く・広がる・化膿する場合は皮膚科で鑑別と治療方針の確認が重要です。

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症状の特徴

主な自覚症状は乾燥感、つっぱり、かゆみ、ほてり、しみる感じです。見た目では赤み、細かな落屑(フケ様の皮むけ)、ざらつき、細かな亀裂が目立ちます。

悪化時には掻破で擦り傷や痂皮ができ、手指では亀裂から出血することもあります。二次感染を伴うと黄色い滲出や痛みが強くなります。

顔では頬や口周りの赤み・粉ふき、目周りの乾燥小じわが目立つことがあります。手では手背の乾燥・指先の割れ、手掌の肥厚が見られます。

乳幼児やアトピー素因のある人ではかゆみが強く、睡眠障害や集中力低下など生活の質に影響します。早めの対処が有用です。

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発生機序(病態)

角層にあるフィラグリン由来の天然保湿因子(NMF)やセラミドなどの脂質が減ると、経表皮水分喪失(TEWL)が増え、外界刺激物やアレルゲンが侵入しやすくなります。

バリア破綻は皮膚のpHや微生物叢も変化させ、ブドウ球菌などの増殖を許し炎症をさらに悪化させます。これがかゆみを誘発し、掻破がバリアをさらに壊す悪循環が生まれます。

乾燥を招く外因(低湿度、寒冷、洗浄剤)と、内因(遺伝的なフィラグリン欠損、アレルギー素因)の相互作用で病態が維持・増悪します。

アトピー性皮膚炎ではTh2優位の免疫応答やサイトカイン(IL-4/IL-13など)が関与し、バリア回復を阻害することが示されています。

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遺伝と環境の関与

肌荒れ全体は多因子性ですが、代表疾患のアトピー性皮膚炎では双生児研究から遺伝率がおよそ60〜80%と推定されています。残りは環境や行動因子の影響です。

フィラグリン(FLG)遺伝子の機能喪失変異は強いリスクで、保因者は乾燥や刺激で症状化しやすいことが知られています。

一方、同じ遺伝背景でも湿度管理、洗浄・保湿方法、職業曝露、ストレスなどの差で発症や重症度が大きく変わります。

したがって、体質を理解しつつ環境調整とスキンケアを両輪で行うことがもっとも現実的なアプローチです。

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予防と治療

予防の基本は、刺激を減らしバリアを守ることです。ぬるめ・短時間の入浴、低刺激の洗浄、入浴直後の保湿、冬季の加湿、手荒れ時の手袋などを徹底します。

軽症〜中等症では、ワセリンやセラミド配合保湿剤の定期使用が症状の再発を減らします。炎症が強い部位には短期間の外用ステロイドやタクロリムスなどを使います。

反復する手湿疹や顔の皮膚炎では、原因物質の回避と場合によっては貼付試験(パッチテスト)でアレルゲン同定が有用です。

重症や広範囲のアトピー性皮膚炎では、生物学的製剤やJAK阻害薬など専門的治療の選択肢があり、皮膚科での評価が推奨されます。

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