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群発頭痛

目次

基本概要

群発頭痛は、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)で三叉自律神経性頭痛の代表疾患に分類される、非常に強い片側性の頭痛です。眼窩・眼の奥・側頭部など限局した部位に激烈な痛みが走り、1回の発作は通常15~180分持続します。発作は1日に複数回起こりうるのが特徴で、群発期と呼ばれる数週~数か月の期間に集中して生じ、寛解期には完全に症状が消えることが多い病態です。

発作時には涙や鼻汁、眼瞼の腫れ、結膜充血、縮瞳・眼瞼下垂、発汗・顔面の潮紅など、痛みと同側の自律神経症状を伴います。痛みが極めて強いことから、患者はじっとしていられず歩き回る、頭部を押さえるなどの「焦燥・落ち着きのなさ」を示す点も偏頭痛と対照的です。

季節性や概日リズムとの関連が強く、特定の時間帯(深夜から明け方)や特定の季節(春・秋など)に群発期が現れることがあります。アルコールや一酸化窒素供与薬(ニトログリセリン)が群発期に限って誘発因子となることも良く知られています。

診断は臨床所見に基づき、ICHD-3の基準を満たすかどうかで判断します。二次性頭痛を除外するために、初発や非典型例、高齢発症では頭部画像(MRIなど)を併用します。適切な急性期治療と予防療法の組み合わせにより、多くの患者で発作頻度と苦痛を大きく減らすことが可能です。

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症状と発作パターン

典型例では、激烈な片側性の眼窩部あるいは側頭部痛が15~180分続き、未治療では1日1回~8回まで反復します。痛みは刺すよう、焼けるよう、ドリルでえぐられるようと表現され、最も痛い頭痛の一つとされています。

同側の自律神経症状として、流涙、結膜充血、鼻閉・鼻漏、眼瞼浮腫、前額・顔面の発汗、縮瞳・眼瞼下垂がみられます。発作時の焦燥感・落ち着きのなさ(静坐不能)は、暗所で安静を求めがちな片頭痛と対比される重要な臨床手掛かりです。

群発頭痛には、発作が群発期に集中し寛解期をはさむ「反復性(エピソディック)」と、1年のうち寛解が1か月未満の「慢性」の亜型があります。多くは反復性で、数週間~数か月の群発期の間に毎日発作を繰り返し、その後数か月~数年の寛解に入ることがあります。

誘発因子として、アルコール、ヒスタミンやニトログリセリン等の血管拡張薬、昼寝、規則性のない睡眠などが挙げられます。ただし、こうした誘発は群発期に限って顕著で、寛解期には同じ刺激で発作が起こらないのが一般的です。

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病態・発生機序

病態の中心には視床下部の関与が想定されています。PETやfMRI研究では、発作時に痛みと同側の後部視床下部の活性化が安定して観察され、また深部脳刺激により同部位を標的とした治療効果が示されてきました。これにより、概日リズム・季節性といった臨床的特徴との整合性が支持されています。

三叉神経血管系の活性化と自律神経(副交感神経系)の反射回路も重要です。三叉神経から翼口蓋神経節を介する副交感神経反射が活性化し、流涙や鼻汁などの自律神経症状をもたらします。同時にCGRPなどの神経ペプチドが放出され、血管性・炎症性機序が痛みの維持に関与します。

遺伝学的素因も示唆され、オレキシン受容体2(HCRTR2)遺伝子多型などとの関連報告が蓄積しています。ただし、効果量は小さく、疾患の大部分を説明する単一の遺伝子は同定されていません。複数の感受性座位が関与する多因子性疾患と考えられます。

喫煙の高頻度、アルコールによる誘発、睡眠・概日の乱れといった環境因子も、群発期の出現や発作誘発に寄与します。病態は、視床下部―三叉自律神経反射―神経ペプチドのネットワークに、遺伝的素因と環境要因が重畳して発現する、とまとめられます。

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診断と鑑別

診断はICHD-3の臨床基準に基づき、反復する短時間の激烈な片側性頭痛と同側自律神経症状、日内・季節性のパターンなどの組み合わせで行います。頭痛日誌により発作時間・頻度・誘因の記録をつけることが、診断確度を高めます。

鑑別には群発頭痛以外の三叉自律神経性頭痛(発作性片側頭痛、SUNCT/SUNA)や、片頭痛、三叉神経痛、二次性頭痛(内頚動脈解離、副鼻腔疾患、腫瘍など)が含まれます。非典型例や初発例では、器質疾患を除外する目的で頭部MRIや血液検査を行います。

片頭痛との違いは、発作の短さ・頻回性、静坐不能、アルコール誘発、同側自律神経症状の強さなどです。片頭痛のような前兆は通常みられませんが、光過敏が共通することもあるため注意が必要です。

治療反応性も診断のヒントになります。高流量酸素吸入や皮下注スマトリプタンへの反応は群発頭痛で高く、その効果は診断支持所見となりえますが、治療的診断に安易に依存せず全体像で判断します。

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治療の概要

急性期治療の第一選択は、高流量酸素吸入(100%酸素、非再呼吸マスクで12~15 L/分)と、皮下注スマトリプタンです。ランダム化試験で、これらは発作開始から短時間での痛み軽減に有効性が示されています。点鼻ゾルミトリプタンも代替選択肢です。

予防療法は群発期の開始時に速やかに導入します。第一選択はベラパミルで、心電図モニタリング下に漸増します。再発抑制までの「橋渡し」として、短期のプレドニゾロンや大後頭神経ブロックが用いられます。慢性例や難治例ではリチウム、トピラマート、神経刺激法などが検討されます。

近年、CGRP関連抗体(例:ガルカネズマブ)が反復性群発頭痛の発作予防に有効であることが示され、一部の地域で承認されています。ただし国や地域により適応・保険償還の状況が異なるため、最新情報の確認が必要です。

生活面では、群発期のアルコール完全回避、規則正しい睡眠、ニトログリセリンなど誘発薬の回避、喫煙中止が重要です。職場・学校への配慮や発作時の対応計画も、QOL維持に役立ちます。

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疫学とリスク

群発頭痛の生涯有病率は概ね0.1%前後と見積もられ、地域差があります。欧米に比べアジアではやや低い傾向が報告されています。男性に多く、男女比は2~3

、時代とともに差は縮小している可能性があります。

発症年齢は20~40歳代にピークがあり、思春期前の発症は稀です。喫煙者の割合が高いことが多くのコホートで一貫して観察されており、喫煙はリスク修飾因子と考えられています。

家族集積性があり、第一度近親者の相対リスクは一般人口より明らかに高いとする報告が多数です。ただし、双生児研究や厳密な遺伝率推定は限られており、単純な遺伝・環境の比率を断定することは困難です。

医療資源へのアクセス、診断の遅れ、誤診(副鼻腔炎・片頭痛など)も患者負担を増やす要因です。適切な教育と専門医への早期アクセスが、治療成績とQOLの改善につながります。

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