結節性痒疹
目次
定義と概要
結節性痒疹(Prurigo nodularis, PN)は、強いかゆみを伴う多数の硬い結節が主に四肢の伸側などに生じる慢性皮膚疾患です。患者は激しい掻破衝動により皮膚を繰り返し損傷し、結節がさらに増悪・増数する「かゆみ—掻破—皮膚変化」の悪循環が核心にあります。疾患は数カ月から数年と長期にわたり、睡眠や日常生活の質を著しく低下させます。
臨床的には半球状の硬い結節、痂皮、色素沈着や苔癬化が混在し、対称性に多発します。ベースに乾燥肌、アトピー素因、あるいは腎・肝疾患など慢性掻痒の原因が共存することが多く、一次性(特発性)と二次性(基礎疾患関連)に大別されます。
PNは特定の年齢層や性別に偏る傾向があり、中高年での発症が目立ち、女性にやや多いとされます。人種差として黒人で多いとの報告がありますが、地域差や医療アクセスの影響も考慮が必要です。
診断は臨床像が中心で、類似疾患(痒疹群、皮膚掻痒症、疥癬、リンパ腫関連病変など)との鑑別が重要です。必要に応じて皮膚生検で表皮過形成、真皮線維化、神経線維の増生などを確認します。
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症状と生活への影響
主症状は耐え難い持続性のかゆみで、夜間悪化しやすく睡眠障害を招きます。皮疹は数ミリから1センチ大の硬結節で、掻破により痂皮や潰瘍、二次感染を伴うことがあります。疼痛や灼熱感を訴える患者もいます。
皮疹の分布は前腕・下腿の伸側、臀部、背部などに多く、顔や掌蹠は比較的まれです。慢性化すると色素異常や瘢痕化が残存し、露出部では外観上の負担が大きくなります。
QOLは重度に低下し、不安・抑うつ、社会的孤立、仕事の生産性低下がしばしば見られます。掻破を止められない自責感や睡眠不足も精神的負担を増悪させます。
PNでは抗ヒスタミン薬単独で十分な鎮痒が得られないことが多く、多面的介入(皮膚ケア、行動療法、内外用薬、光線療法、生物学的製剤など)が必要です。
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発生機序
PNの病態は神経・免疫・皮膚バリアの相互作用で説明されます。慢性的な掻破刺激が表皮過形成と線維化を誘導し、真皮内の神経線維密度や神経ペプチドが変化、痒み感受性が亢進します。
免疫学的にはTh2優位の炎症(IL-4/IL-13)や、痒み関連サイトカインIL-31経路の活性化が重要です。これらの機序はIL-4Rα阻害薬やIL-31RA阻害薬が有効である臨床試験結果とも整合します。
末梢および中枢の神経可塑性が関与し、痒み信号の増幅と掻破行動の固定化が起こります。皮膚の機械的刺激やストレス、温度変化など非特異的刺激にも反応しやすくなります。
乾燥やバリア破綻は外的刺激と微小炎症を助長し、かゆみ—掻破—皮膚変化の悪循環を維持します。合併する基礎疾患(腎不全、肝胆道疾患、内分泌異常、HIVなど)も全身性の掻痒に寄与します。
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診断と鑑別・評価
診断は視診・触診で典型的な結節性病変と掻破痕を確認し、分布や経過を聴取します。皮膚生検では表皮過形成、真皮の線維化、神経線維の増加などが示唆所見です。
鑑別には痒疹、疥癬、皮膚T細胞リンパ腫、線維腫症、結節性虫刺症、神経皮膚症などが含まれます。非典型例や単発・偏在の場合は生検を積極的に検討します。
基礎疾患検索として、血算、肝腎機能、甲状腺機能、鉄・糖代謝、B型・C型肝炎、HIVなどの検査を患者背景に応じて実施します。薬剤性掻痒の評価も重要です。
重症度は結節数、痒み強度(NRS/PP-NRS)、皮膚面積、睡眠障害、QOL尺度(DLQIなど)を用いて縦断的に評価し、治療反応性を追跡します。
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治療と予後
治療はバリア回復(保湿・皮膚ケア)と掻破抑制を基盤に、超・高力価ステロイド外用やテープ、局注ステロイドで結節を縮小します。難治例にはNB-UVBやPUVAなど光線療法が有効です。
全身療法としてガバペンチノイド、抗うつ薬(デュロキセチン、ミルタザピン)、ナルトレキソン、シクロスポリン、メトトレキサート、サリドマイド/レナリドミド(厳格なモニタリング下)などが用いられます。
生物学的製剤ではIL-4Rα阻害薬デュピルマブがPNで米国初の承認を取得し、痒みと結節負担の有意な改善が示されました。IL-31RA阻害薬ネモリズマブも国際的試験で有効性が示され、各国で適応拡大が進んでいます。
予後は治療反応性により多様ですが、適切な多面的治療でQOLは改善し得ます。再燃予防のため、維持的スキンケアと掻破行動への介入、基礎疾患の管理が重要です。
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