結合組織障害
目次
定義と分類
結合組織障害とは、体の骨・腱・靭帯・皮膚・血管などを支える「結合組織」に異常が起こる疾患群の総称です。大きくは、免疫の誤作動で自分の組織を攻撃してしまう自己免疫性(膠原病)と、コラーゲンやフィブリリンなど構造タンパク質の遺伝子変異による遺伝性の疾患に分けられます。
自己免疫性の結合組織疾患には、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症(SSc)、シェーグレン症候群、混合性結合組織病(MCTD)、多発性筋炎・皮膚筋炎などが含まれます。これらは全身症状を呈し、臓器障害の有無と程度が診療の焦点になります。
遺伝性の結合組織障害には、マルファン症候群、エーラス‐ダンロス症候群(EDS)、骨形成不全症などが代表的です。これらはコラーゲンやフィブリリンなどの構造異常により、関節の過可動、皮膚の伸展性、血管の弱さ、骨脆弱性などを生じます。
同じ「結合組織障害」といっても病態も経過も治療方針も大きく異なるため、診断ではまず自己免疫性か遺伝性かを整理し、個々の疾患の特徴と重症度に応じた管理計画を立てることが重要です。
参考文献
- MedlinePlus: Connective Tissue Disorders
- GeneReviews: Marfan Syndrome
- GeneReviews: Ehlers-Danlos Syndromes Overview
主な症状
自己免疫性疾患では、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状のほか、皮疹、関節痛、Raynaud現象、口眼の乾燥、筋力低下などがみられます。臓器障害としては、腎炎、間質性肺疾患、肺高血圧、心膜炎・心筋炎、中枢神経障害などが重要です。
遺伝性疾患では、関節過可動や反復性の脱臼、皮膚の過伸展と脆弱性、身長高値と四肢長、近視や水晶体脱臼、動脈瘤や解離、青色強膜、反復骨折などが症状の中心になります。症状は生涯を通じて持続・進行することが少なくありません。
同じ疾患でも症状は人により大きく異なり、特に自己免疫性疾患では病勢が揺れ動く「寛解・増悪」を繰り返すことが特徴です。客観的な検査値と患者自身の自覚症状の両方を合わせて評価することが求められます。
症状の多様性と非特異性のため、診断までに時間がかかることもまれではありません。気になる症状が並存・持続する場合は、リウマチ膠原病内科や臨床遺伝専門医への早期相談が推奨されます。
参考文献
病態・発生機序
自己免疫性疾患では、自己寛容が破綻し、自己抗体や自己反応性T細胞が組織を傷つけます。SLEでは免疫複合体が血管に沈着し、I型インターフェロン経路が過剰に活性化することが知られています。
全身性強皮症では小血管の内皮障害と免疫異常に続き、線維芽細胞が活性化し皮膚や臓器に線維化が進みます。シェーグレン症候群では外分泌腺にリンパ球が浸潤し、涙腺・唾液腺機能が低下します。
遺伝性疾患では、FBN1変異によるTGF-βシグナルの異常(マルファン症候群)や、COL3A1などコラーゲン遺伝子異常(血管型EDS)による組織脆弱性が中心的な病態です。
環境因子は引き金や病勢修飾因子として作用します。紫外線、シリカ粉塵、喫煙、感染、特定薬剤などが、感受性を持つ人において発症や増悪に関与すると考えられています。
参考文献
遺伝要因と環境要因
SLEなどの自己免疫性疾患では一卵性双生児の一致率が完全ではなく、遺伝と環境の双方が関与します。SLEの遺伝率は40–60%程度と見積もられ、HLA領域や補体成分、IFN経路関連遺伝子など多因子が寄与します。
全身性強皮症やシェーグレン症候群でもHLAをはじめとした多くの感受性座位が報告されていますが、寄与度は疾患により異なります。家族集積はあるものの、単一遺伝子で説明できるケースは稀です。
これに対してマルファン症候群(FBN1)や血管型EDS(COL3A1)などの遺伝性疾患は、単一遺伝子変異で説明され、家系内で常染色体優性に遺伝することが一般的です。
環境因子として、喫煙、シリカ粉塵、溶剤、紫外線、エストロゲン曝露や感染が自己免疫性疾患のリスク修飾に関与します。曝露回避や日光対策は病勢管理に寄与します。
参考文献
- The Genetics of SLE (Review)
- GeneReviews: Marfan Syndrome
- GeneReviews: Ehlers-Danlos Syndromes Overview
- Smoking and autoimmune disease (Review)
診断と検査
自己免疫性疾患のスクリーニングには抗核抗体(ANA)が広く用いられ、疾患特異的抗体(抗dsDNA、抗Sm、抗Scl-70、抗セントロメア、抗SSA/SSB、抗U1-RNPなど)が診断補助となります。臨床所見と合わせ、分類基準が活用されます。
臓器障害の評価には、尿検査・腎機能、胸部CTや心エコー、呼吸機能検査、筋炎ではCKや筋電図・MRIなどを用います。Raynaud現象では毛細血管顕微鏡検査が早期強皮症の手がかりになります。
遺伝性疾患では臨床所見に加えて分子遺伝学的検査で原因遺伝子変異を同定します。必要に応じて心血管画像検査や骨密度測定などで合併症を評価します。
診断は総合的判断が不可欠であり、症状の記録や誘因の把握、写真の保存など患者自身の情報提供が早期確定に役立ちます。
参考文献
治療と支援
自己免疫性疾患では、全身ステロイド、ヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬(アザチオプリン、ミコフェノール酸、シクロホスファミド)、IVIG、生物学的製剤(ベリムマブ、アニフロルマブなど)を病勢と臓器障害に応じて選択します。
強皮症関連間質性肺疾患には抗線維化薬ニンテダニブの有効性が示されています。筋炎ではIVIGが皮膚筋炎に対して有効というエビデンスがあります。支持療法やリハビリも重要です。
遺伝性疾患では、合併症予防とモニタリングが中心で、マルファン症候群では大動脈拡張の管理と適切な手術タイミングが生命予後を左右します。EDSでは関節保護と出血・血管合併症の予防が鍵です。
日本では多くの膠原病・遺伝性結合組織疾患が指定難病の対象で、医療費助成や就労支援が利用できます。高額療養費制度など一般的な医療費支援制度も併用できます。
参考文献

