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糖の摂取と肥満との関係

目次

概要

糖の摂取、とくに砂糖や果糖ブドウ糖液糖を多く含む清涼飲料(SSB)は、満腹感を生みにくく、食事全体のエネルギー摂取量を押し上げやすいことが分かっています。液体カロリーは固形食に比べ代償摂取が起こりにくく、その結果として体重増加につながりやすいのが特徴です。

観察研究では、SSBの常習的な摂取が体重増加や肥満、2型糖尿病リスクの上昇と相関することが繰り返し示されています。さらにランダム化比較試験でも、自由糖の摂取を減らすと体重が減少し、増やすと体重が増えやすいという因果的な関係が支持されています。

生理学的には、果糖は肝臓で急速に代謝され、過剰なエネルギー摂取下ではデ・ノボ脂肪合成を促し、内臓脂肪や脂質異常を悪化させることが示唆されています。これらの機序は、糖質とりわけ自由糖の質と形態(液体か固体か)が肥満と関連する理由の一部を説明します。

国際機関のガイドラインでは、自由糖の摂取を総エネルギーの10%未満、可能なら5%未満に抑えることが推奨されています。これは肥満やう蝕の予防を目的としており、飲料や加工食品に添加された糖の削減が実践的な第一歩とされています。

参考文献

疫学的エビデンス

前向きコホート研究のメタ解析では、SSB摂取量が多い人ほど将来の体重増加や小児の肥満発症が多いと報告されています。これは複数の大規模集団で一貫しており、逆因果の可能性を除外する感度分析でも結果は安定しています。

ランダム化比較試験では、糖を多く含む飲料を無糖飲料に置き換える介入で、数か月のうちに体重や体脂肪が有意に減少することが示されました。短期のエネルギー過剰摂取実験でも、液体糖の追加は体重増加へ直結しやすいことが確認されています。

総じて、相関だけでなく介入研究からの因果推論が可能であり、「糖の摂取を減らすと体重増加を抑えられる」方向のエビデンスの強さは中等度から強いと評価されます。

一方で、食事全体の質や身体活動、睡眠、アルコールなどの交絡も肥満に影響するため、実生活では総合的なアプローチが必要です。糖だけを単独で捉えず、エネルギーバランスと食事の質の両面から評価することが重要です。

参考文献

遺伝と環境の寄与

肥満の体質には遺伝的素因があり、双生児研究のメタ解析では成人BMIの遺伝率がおおむね50〜70%と推定されています。これは「太りやすさ」の個人差の半分以上が遺伝的要因で説明されうることを意味します。

しかし遺伝は運命ではありません。食環境や身体活動、睡眠、ストレスなどの環境因子が残る30〜50%に強く関与し、とくに自由糖が豊富で入手しやすい環境は、遺伝的素因を持つ人のリスクを増幅させます。

遺伝子×環境相互作用の研究では、肥満感受性スコアが高い人ほどSSBの多飲で体重増加が大きいことが示されています。逆に、砂糖摂取を抑えることで遺伝的リスクの実現を弱められる可能性があります。

このため、個人では糖の摂取管理が実践的で効果的な対策となり、集団では価格政策や表示強化など環境整備が遺伝的背景に関わらず利益をもたらすと考えられます。

参考文献

関与する遺伝子と変異

多遺伝子性の肥満では、FTO遺伝子(rs9939609やrs1558902)が代表的で、摂食行動や満腹感のシグナルに影響してエネルギー摂取を増やす方向に働くことが知られています。

MC4R座位(rs17782313など)は視床下部の食欲調節経路に関与し、まれな機能喪失変異は小児期からの高度肥満を引き起こすことがあります。一般集団でも共通変異がBMIに影響します。

TMEM18、BDNF、SH2B1などの座位もBMIと関連し、総じて脳の報酬系や食欲制御に関わる経路が富むことがGWASで示されています。味覚受容体TAS1R2/TAS1R3の多型は甘味嗜好や糖摂取選好に影響する可能性があります。

遺伝子と糖摂取の相互作用として、FTOリスクアレルを持つ人でSSB摂取量が多い場合に肥満リスクがより高くなることが報告されています。相互作用の効果量は中等度で、生活習慣の改善で緩和可能と考えられます。

参考文献

予防・実践と政策

個人レベルでは、砂糖入り飲料を水、無糖茶、無糖の炭酸水に置き換える、果物はジュースではなく丸ごと食べる、加糖ヨーグルトや菓子の頻度を減らすなどの工夫が有効です。食品表示の「糖類」「自由糖」を確認する習慣も役立ちます。

目標として、WHOが推奨する自由糖のエネルギー比10%未満(可能なら5%未満)を目安にしつつ、食物繊維が豊富で加工度の低い食事パターンを心がけることが、体重管理と代謝健康の両面で有益です。

集団レベルでは、砂糖入り飲料への課税や学校での販売制限、広告規制、栄養表示の前面化などの政策が消費を減らし、長期的な肥満予防に寄与する可能性があります。メキシコのSSB課税では購買量の有意な減少が観察されました。

糖の削減は単独の万能薬ではありませんが、身体活動、睡眠、ストレス管理と組み合わせることで、遺伝的背景にかかわらず実行可能で効果の見込める戦略となります。

参考文献