砂糖を決して食べない
目次
概要
「砂糖を決して食べない」とは、食事から砂糖(特に自由糖類・添加糖)を可能な限り排除する厳格な食習慣を指します。自由糖類は食品や飲料に加えられた砂糖、蜂蜜、シロップ、果汁などに含まれる糖で、自然の細胞構造内に保持される果物や乳の糖とは区別されます。
国際的な栄養ガイドライン(WHO、英国SACN、米国DGA)は、健康のために「砂糖ゼロ」を推奨しているわけではなく、エネルギーの10%未満(可能なら5%未満)へ添加糖を減らすことを推奨しています。これは肥満、う蝕(虫歯)、一部の心血管リスク低減に資するためです。
一方で、厳格な「ゼロ」方針は現実的な継続が難しく、栄養の楽しさや社会生活への影響、食の拘束性を高める懸念があります。砂糖の全排除は必須ではなく、質の高い食事全体のパターン(全粒、野菜、果物、未加糖の乳、良質なたんぱく質)を重視することが長期的に有効です。
したがって、「砂糖を決して食べない」は、過剰摂取の是正という点で一部の人に役立つ場合もありますが、一般には「減らす」ことを目標に、現実的で持続可能な方法を選ぶことが推奨されます。
参考文献
- WHO Guideline: Sugars intake for adults and children (2015)
- SACN: Carbohydrates and Health (2015)
- Dietary Guidelines for Americans 2020–2025
生物学的背景(発生機序)
甘味は進化的にエネルギー源を示す信号で、脳の報酬系(ドーパミン経路)を活性化します。これが砂糖の嗜好や摂取を強化しますが、ヒトにおける「砂糖依存症」概念は議論があり、現時点では明確な疾病単位としては支持されていません。
高頻度の自由糖類摂取は、食後血糖の急峻な変動や総エネルギー過剰を通じて体重増加・代謝リスクに寄与し得ます。ただし単体の砂糖のみが特異的に代謝疾患を引き起こすというより、食事全体の質と量、身体活動、睡眠などの複合要因が重要です。
口腔内では、スクロースなどの糖が細菌により発酵され酸が産生されます。これがエナメル質脱灰を促し、摂取頻度が高いほどう蝕リスクが上がります。砂糖摂取を減らすことはう蝕予防に一貫して有効です。
添加糖を大きく減らすと、数週間で甘味閾値が下がり、過度に甘い製品を強く甘く感じるようになるという行動学的適応が観察されます。これは嗜好変化を通じて減糖の維持に寄与します。
参考文献
- Sugar addiction: The state of the science (Westwater et al., 2016)
- AHA Science Advisory on Dietary Sugars and Cardiovascular Health
- SACN: Carbohydrates and Health (2015)
環境的要因
私たちの摂取は個人の意思だけでなく、食品環境に強く影響されます。自動販売機やコンビニでの甘味飲料の入手容易性、プロモーション、価格設定は砂糖摂取を押し上げます。政策的には課税や学校・職域の環境整備が有効策として検討されています。
食品表示は消費者の行動を支援します。日本では栄養成分表示が義務化されており、エネルギーや炭水化物、糖質の把握が可能です。原材料欄のシロップ類、果糖ぶどう糖液糖、麦芽糖などの表記にも注意が必要です。
社会経済的状況も影響します。価格が安く、強い嗜好性のある超加工食品がアクセスしやすい地域では、添加糖摂取が高くなる傾向が報告されています。環境への介入と個人のスキル(調理、買い物計画)の併用が効果的です。
文化や家庭内の習慣も重要です。甘味のご褒美化、間食の頻度、飲料の選択が長期の嗜好形成に関与します。家庭・学校での教育が持続的な影響を持ちます。
参考文献
潜在的なリスクと注意点
砂糖の全排除自体が必須の健康戦略ではないため、過度な食事制限に伴うストレス、反動的過食、食生活の社会的制約には注意が必要です。特に既往の摂食障害傾向がある場合、専門職の伴走が望まれます。
スポーツや低血糖リスクのある状況では、速やかな糖質補給が必要になることがあります。画一的な「ゼロ」方針は、状況適応性を損ないパフォーマンス低下を招く可能性があります。
添加糖を減らす際は、炭水化物源を全粒穀物、豆類、果物、未加糖乳製品に置換し、食物繊維や微量栄養素の充足を図ることが重要です。単に糖を抜くだけでは栄養の質が低下し得ます。
持続可能性の観点から、段階的な目標設定(例:甘味飲料を水や無糖茶へ、デザートは週の回数を減らす)が現実的です。完璧主義より一貫性が健康影響に寄与します。
参考文献
実践のポイント
まずは飲料から。砂糖入り飲料を水・無糖茶・炭酸水に置き換えるだけで自由糖類を大きく削減できます。次に菓子・デザートの頻度を週単位で見直し、量と回数を減らします。
調理・加工品では、砂糖やシロップが先頭付近に記載された製品を避け、未加糖のヨーグルトやナッツ、果物などの代替を選びます。朝食は砂糖入りシリアルより全粒オート麦などに変更します。
目標設定はWHO推奨(自由糖類エネルギー比10%未満、可能なら5%未満)を目安に、生活に合わせて現実的に。家庭内での共通ルール(甘味飲料は常備しない等)も効果的です。
完全排除を目指す場合でも、例外ルール(特別な行事では楽しむ等)を設けると脱落しにくく、長期の健康行動に繋がります。重要なのは総合的な食事パターンの質です。
参考文献

