瞼のたるみ
目次
定義と分類
瞼のたるみは、大きく上眼瞼の皮膚が余って垂れ下がる皮膚弛緩(ダーマトカラシス)と、上眼瞼を挙上する筋腱膜の障害で瞼縁自体が下がる眼瞼下垂に分けられる。両者は見た目が似るが、原因・治療が異なるため鑑別が重要である。
皮膚弛緩は主に加齢に伴う真皮のコラーゲン・エラスチンの劣化や隔膜のゆるみ、脂肪の前方突出などで生じる。眼瞼下垂は挙筋腱膜の伸び・断裂、ミュラー筋機能低下、神経筋疾患など多岐にわたる。
臨床では、瞳孔中心と瞼縁の距離(MRD1)、眉毛位置、前頭筋代償、視野障害の有無などを総合して評価する。機能障害の有無は治療選択や保険適用判断に直結する。
日常用語の「瞼のたるみ」は両者を含むことが多い。本用語解説では主に皮膚弛緩を中心に述べ、必要に応じて眼瞼下垂を対照として取り上げる。
参考文献
症状と生活への影響
代表的な症状は、上まぶたの重さ感、眉間・額の疲労感、視界の上方が狭い感じ、夕方に強くなる見にくさ、まぶたの皮膚炎や化粧のりの悪さなどである。
機能的に強い場合は、車の運転で信号が見えにくい、階段で足元と上方の確認がしづらい、長時間の読書やPC作業で眼精疲労が強い、といった具体的支障が出る。
前頭筋の代償で眉が持ち上がり、額に皺が増える緊張性頭痛を来すこともある。皮膚が睫毛に被さると逆さまつげ様の刺激や角膜乾燥感を伴いドライアイが悪化し得る。
眼瞼下垂が主体の場合は、片眼性や左右差、あご上げ姿勢、複視の随伴などが手がかりとなる。重症筋無力症など全身疾患のサインのこともあり精査が必要。
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原因・発生機序
皮膚弛緩の中心は真皮のコラーゲン・エラスチン線維の断裂・劣化と皮下支持組織の緩みである。紫外線はMMPを誘導しコラーゲン分解を促進、糖化産物は線維硬化を進める。
眼窩隔膜の脆弱化により眼窩脂肪が前方へ膨出し、組織重量と重力負荷が増して皮膚が折り重なる。眉毛・前頭部の軟部組織下垂(brow ptosis)も上眼瞼のたわみを助長する。
眼瞼下垂では、加齢性の挙筋腱膜の伸長・薄化(アポニュローシス性)、長期ハードコンタクト装用や眼手術後の機械的ストレス、神経・筋疾患などが背景にある。
喫煙や大気汚染は酸化ストレスを介して真皮マトリックス破壊を促す。慢性の目こすりやアレルギー性結膜炎も機械的・炎症性ストレスを増大させる。
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診断と鑑別
診察ではMRD1、瞼板の露出、皮膚の余剰量、眉毛の位置、睫毛の覆い、挙筋機能を計測する。必要に応じて視野検査で上方視野の欠損を定量化する。
写真記録は経時変化の把握と手術適応の説明に有用。間欠的な悪化や易疲労性があればテンシロン試験などで重症筋無力症を除外することがある。
ドライアイ・眼表面疾患、眼瞼内反・外反、眼窩腫瘍など合併や類似病態の評価も重要で、治療の優先順位や手技選択に影響する。
美容目的か機能改善目的か、患者の希望・職業・ライフスタイルもふまえて治療ゴールを明確化することが満足度向上に寄与する。
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治療と予防
軽症では紫外線対策、禁煙、アレルギー治療、スキンケア(レチノイドや保湿)など生活介入がまず推奨される。眉毛下垂が目立つ場合はボツリヌス治療で眉位置補正を図ることもある。
皮膚弛緩の外科は上眼瞼形成術(余剰皮膚切除+必要に応じ脂肪調整)が基本。視野障害が明確な機能症例では保険適用対象になり得る。
眼瞼下垂が主体なら挙筋腱膜短縮術やミュラー筋タッキングなどを選ぶ。薬物では選択α1作動薬点眼(オキシメタゾリン0.1%)が一過性の挙上に有効な例がある。
予防にはUVA/UVBカット眼鏡・帽子、こすらない習慣化、適正なコンタクトレンズ装用、十分な睡眠と栄養、慢性炎症のコントロールが役立つ。
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