眼圧
目次
眼圧の概要
眼圧とは眼内を満たす房水が角膜や強膜に及ぼす圧力で、一般に10〜21mmHgの範囲が生理的とされます。眼圧そのものは病気ではありませんが、慢性的に高い状態は緑内障の主要な危険因子です。
眼圧は一日の中でも変動し、早朝に高く夕方に低い傾向が知られています。角膜の厚さや測定方法によって見かけの値が影響されるため、解釈には専門家の評価が必要です。
測定にはアプラネーション眼圧計、ノンコンタクト(空気圧)眼圧計、リバウンド眼圧計などが用いられます。診療では視神経や視野検査と組み合わせて総合的に評価されます。
眼圧の管理は緑内障の進行抑制に直結するため、リスクのある人では定期的な検査と早期介入が重要です。特に40歳以上や家族歴のある人では注意が必要です。
参考文献
眼圧の発生機序
眼圧は毛様体で産生される房水の産生量と、線維柱帯・シュレム管を介する従来流出路およびぶどう膜強膜流出路からの排出量のバランスで決まります。
流出抵抗が増えると眼圧は上昇します。年齢変化、ステロイド反応、線維柱帯の線維化や炎症、解剖学的狭隅角などが抵抗上昇の背景になります。
交感神経刺激や血圧、体位変換、Valsalva動作など短期の生理的変動因子も眼圧に影響します。これらは通常一過性ですが、感受性が高い人では視神経灌流にも影響し得ます。
分子レベルでは細胞骨格(Rho/ROCK経路)や細胞外基質の代謝が流出抵抗を規定し、これが薬物治療やMIGSの標的になっています。
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遺伝・環境要因と寄与
双生児・家系研究とゲノム解析から、眼圧の個人差には中等度の遺伝性が示され、遺伝的寄与は概ね30〜50%と報告されています。残りは環境や加齢、併存症などの要因が担います。
多因子性で小さな効果の多くの遺伝子変異が総和として眼圧に影響します。代表的な関連領域にはTMCO1、CAV1/CAV2、ABCA1、GAS7などがあります。
環境要因としては外用・全身ステロイド、カフェイン摂取、頭低位姿勢、強い息こらえ、睡眠姿勢、運動不足などが挙げられます。これらは個人差はあるものの短期〜中期的に眼圧を変動させます。
糖尿病や高血圧、近視、偽落屑症候群などの背景も眼圧や緑内障リスクに関与します。リスク層では生活習慣の最適化と定期検査が重要です。
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疫学(世界・日本)
眼圧そのものは指標ですが、関連疾患である緑内障は40〜80歳で世界推定有病率約3.5%とされ、加齢とともに増加します。地域・人種で差があり、アフリカ系で高い傾向です。
日本の多治見スタディでは40歳以上の原発開放隅角緑内障の有病率は約5%で、その大半が正常眼圧緑内障でした。眼圧が正常範囲でも視神経が脆弱な人が一定割合存在します。
高眼圧症(視神経障害を伴わない持続的高眼圧)は成人の数%に見られ、緑内障発症リスクは未治療で年率1〜2%程度とされています。
疫学データは集団差や定義に影響されるため、地域の検診・医療資源に合わせた解釈と対策が必要です。
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診断・治療と予防
早期発見には眼圧測定、隅角・視神経乳頭の診察、OCTによる網膜神経線維層解析、視野検査が有効です。家族歴や近視の強い人、40歳以上は定期検査が推奨されます。
治療は眼圧を下げることが中心で、プロスタグランジン関連薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、α2作動薬、ROCK阻害薬などの点眼、レーザー線維柱帯形成術、MIGS、線維柱帯切除術等が選択されます。
生活面では有酸素運動、ステロイドの漫然使用を避ける、頭低位の長時間を避ける、適切な睡眠姿勢などが推奨されます。ただし個々の反応差があり主治医の指示が優先です。
治療目標は個別化され、ベースライン眼圧、視神経所見、進行速度、全身状態を踏まえて「目標眼圧」を設定します。継続的なフォローが予後を左右します。
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