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目の炎症

目次

概説

目の炎症は、結膜炎・角膜炎・ぶどう膜炎・強膜炎・眼瞼炎など多様な疾患の総称で、原因は感染、アレルギー、自己免疫、外傷、薬剤性などに及びます。炎症は充血、痛み、腫脹、分泌物、羞明、視力低下などの症候を生み、放置すると角膜瘢痕や緑内障、網膜障害など不可逆的合併症につながることがあります。

眼科では細隙灯顕微鏡や蛍光色素染色、眼圧測定、眼底検査、OCTなどで部位と重症度を評価します。感染性か非感染性かの鑑別が治療選択の出発点であり、抗菌・抗ウイルス療法か、抗炎症・免疫抑制療法かが大きく分かれます。

アレルギー性結膜炎は最も頻度が高く、季節性アレルゲン(花粉)や通年性アレルゲン(ダニ・ホコリ)が誘因です。非感染性ぶどう膜炎は若年〜中年で発症し、全身自己免疫疾患と関連することがあります。

コンタクトレンズ関連角膜炎やヘルペス角膜炎など、迅速な治療を要するケースもあります。赤痛・視力低下・羞明・深部痛があるときは速やかな受診が推奨されます。

参考文献

病態生理

炎症は自然免疫・獲得免疫の活性化により、サイトカイン(TNF、IL-6、IL-17 など)やケモカインが動員され、血管透過性亢進、白血球浸潤、組織浮腫を引き起こします。眼は免疫特権を有しますが、破綻すると強い炎症が持続し得ます。

感染性炎症では病原体(アデノウイルス、ヘルペスウイルス、細菌、真菌、アカントアメーバなど)が直接組織傷害を与え、免疫応答が二次的に障害を増悪させます。

非感染性ぶどう膜炎では自己抗原に対する誤作動したT細胞応答が中心で、Th1/Th17 系の活性化が関与し、HLA型など遺伝素因がリスクを規定します。

アレルギー性結膜炎ではIgE介在の即時型反応と肥満細胞脱顆粒、遅発相の好酸球浸潤が症状の波を作ります。角膜上皮バリア破綻は痛みと視機能低下の原因となります。

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遺伝的要因

HLA-B27は強い関連を示し、HLA-B27関連急性前部ぶどう膜炎は欧米を中心に頻度が高く、強直性脊椎炎など脊椎関節炎群と合併します。HLA-A29はBirdshot 網脈絡膜炎、HLA-DRB1はVogt–小柳–原田病などと関連します。

IL23R、ERAP1/2 などの免疫関連遺伝子多型は非感染性ぶどう膜炎の素因に関与します。これらはTh17 経路や抗原提示の差異を通じて炎症感受性を高めると考えられます。

アレルギー素因(アトピー)の遺伝率は双生児研究で50–80%と報告され、アレルギー性結膜炎の発症にも影響しますが、環境曝露が発症を左右します。

遺伝素因は「必要条件」ではなく、多因子疾患として環境と相互作用して発症します。臨床では家族歴や併存症がリスク評価に有用です。

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環境的要因

アレルギー性結膜炎の主な誘因は季節性花粉(スギ・ヒノキなど)と通年性アレルゲン(ダニ、動物上皮、カビ)です。大気汚染や煙も刺激となり症状を悪化させます。

コンタクトレンズの不適切な衛生管理は微生物性角膜炎(緑膿菌、アカントアメーバなど)の主要リスクです。水道水での洗浄や就寝時装用は特に危険です。

ウイルス性結膜炎はアデノウイルスが多く、接触・飛沫で流行します。手指衛生と共有物の消毒が予防に有効です。

帯状疱疹眼合併症は高齢で増えますが、ワクチン接種でリスク低減が可能です。

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診断と治療

赤痛・羞明・視力低下を伴うときは眼科での迅速な診断が必要です。細隙灯、角膜染色、眼圧、散瞳眼底、必要に応じてOCT・超音波や血液検査を行います。

治療は原因別に、抗菌薬・抗ウイルス薬、抗ヒスタミン薬・肥満細胞安定化薬、ステロイド点眼・注射・内服、散瞳薬、免疫抑制薬(メトトレキサートなど)、生物学的製剤(アダリムマブ等)が用いられます。

ステロイドは強力ですが副作用(眼圧上昇、白内障)に注意が必要で、医師の管理下で最短・最小用量を原則とします。感染性が疑われる場合はステロイド単独投与を避けることが重要です。

コンタクトレンズ関連角膜炎ではレンズ中止と適切な抗菌治療、アレルギーではトリガー回避と点眼療法、非感染性ぶどう膜炎では段階的免疫療法が推奨されます。

参考文献