白斑
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定義と概要
白斑は、皮膚や毛に色を与えるメラニン色素が減少・消失することで、白い斑点(脱色素斑)が生じる慢性の皮膚疾患です。自己免疫を中心とする多因子疾患で、世界人口の約0.5~2%にみられ、あらゆる人種・年齢に発症します。審美的影響や心理的負担が大きく、生活の質(QOL)への影響も無視できません。
臨床的には、全身に左右対称に広がる「非分節型(尋常性)」と、片側の神経支配領域に一致して現れる「分節型」に大別されます。後者は小児期に発症することが多く、進行は早いが限局します。前者は成人にも多く、進行と寛解を繰り返すことがあります。
白斑は生命予後に直接影響しませんが、日焼けしやすくなるなど皮膚のバリア機能面での実害もあります。社会的スティグマに起因する抑うつや不安の合併も知られ、心理社会的支援が重要です。
診断は臨床像に加え、ウッド灯(365nm紫外線)での蛍光観察やダーモスコピーが有用です。類似疾患(白癬、炎症後低色素斑、白皮症など)との鑑別が必要で、甲状腺疾患など自己免疫疾患の併存評価も行われます。
参考文献
- DermNet NZ: Vitiligo
- American Academy of Dermatology: Vitiligo overview
- 日本皮膚科学会 白斑診療ガイドライン(患者向け情報を含む)
症状・臨床像と合併症
代表的な症状は、境界明瞭なミルク色の脱色素斑で、毛包周囲から点状・網状に再色素化する所見がみられることもあります。露光部(顔、手)や摩擦部(肘、膝)に好発し、毛も白くなることがあります(白髪)。
コブナー現象(擦過や外傷部に新病変が出現)が白斑でもみられ、衣類や職業での反復摩擦、日焼けが悪化因子となります。痒みや痛みは通常軽微ですが、活動期には軽い炎症を伴うこともあります。
自己免疫性甲状腺疾患(橋本病、バセドウ病)、1型糖尿病、円形脱毛症、悪性貧血などの合併が相対的に多いとされ、特に非分節型で頻度が高いと報告されています。
心理面では、見た目の変化により自己肯定感の低下、社会回避、学業・就業への影響が生じ得ます。小児例では保護者や学校への説明と支援が重要です。必要に応じ心理士や患者会との連携が役立ちます。
参考文献
- NEJM Review: Vitiligo (Ezzedine et al.)
- AAD: Vitiligo symptoms and diagnosis
- Cochrane: Treatments for vitiligo
発生機序(病態)
現在の主流は自己免疫学説で、メラノサイトが自己反応性T細胞や自然免疫の活性化により標的化され破壊されるというものです。HLA関連性や共通の自己免疫素因が遺伝学的・免疫学的に裏づけられています。
酸化ストレス学説では、皮膚局所の酸化還元バランス破綻がメラノサイト脆弱性を高め、免疫反応を誘導すると考えられています。実際に患者皮膚で酸化ストレスマーカーの上昇が報告されています。
神経体液因子やメラノサイトの細胞内小器官(小胞体ストレス、オートファジー)異常など、複数の経路が絡み合う多段階モデルが提唱され、病型や個人差により優位な機序が異なる可能性があります。
外的誘因(紫外線、外傷、化学物質)や内的誘因(感染、内分泌変化、心理ストレス)が、遺伝素因の上に加わることで発症・増悪するという多因子疾患モデルが受け入れられています。
参考文献
- Nature Reviews Disease Primers: Vitiligo
- JAMA Dermatology review on vitiligo pathogenesis
- DermNet NZ: Vitiligo pathogenesis
遺伝学と疫学
家族集積があり、一親等内に白斑患者がいる頻度は一般集団より高いことが知られています。遺伝率(疾患のばらつきに対する遺伝因子の寄与)はおおむね中等度で、約0.5前後を示す研究が多いとされます。
GWASで、HLA領域、NLRP1、PTPN22、TYR、IL2RA、IFIH1など多数の感受性座位が同定され、自己免疫関連経路とメラノサイト固有経路が関与することが示されました。個々の変異の効果量は小さく、多遺伝子疾患です。
世界の有病率は0.5~2%と報告され、人種差は小さい一方、露光習慣や医療アクセスによって受診率は影響を受けます。日本の推定有病率はおおむね0.5%前後と考えられます。
発症年齢は二峰性で、小児・青年期に多く、第二のピークが中年期にみられるとする報告もあります。男女比は概ね同等ですが、受診は女性が多い傾向が示唆されます。
参考文献
- Genome-wide association studies in vitiligo (review)
- DermNet NZ: Vitiligo epidemiology
- AAD: Who gets and causes of vitiligo
診断・治療と予後
診断は視診とウッド灯での蛍光強調、ダーモスコピー所見、必要に応じ生検で行います。鑑別には菌検査や真菌培養、血液検査での甲状腺機能や自己抗体の評価を加えることがあります。
治療は病勢や部位に応じ、外用ステロイドやタクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬、ナローバンドUVB(NB-UVB)や308nmエキシマ光などの光線療法が第一選択です。進行例では短期の全身ステロイドや光線併用が検討されます。
近年、JAK阻害薬外用(ルキソリチニブクリーム)など分子標的治療が登場し、顔面を中心に有効性が示されています。外科的には安定期に自家移植(吸引表皮植皮、分層植皮)が選択されることがあります。
予後は部位で差があり、顔や体幹の再色素化は比較的良好、手足末端は難治です。日焼け対策、カモフラージュ化粧、心理的支援を含めた包括的ケアがQOL改善に重要です。
参考文献

