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痛風(腎負荷型)

目次

用語の定義と背景

痛風は、血中の尿酸が高い状態(高尿酸血症)を基盤として、関節内に尿酸塩結晶が沈着し急性の炎症発作を起こす病気です。腎負荷型とは、体内で生じた尿酸の腎臓への負担が増え、尿中への尿酸排泄量が多くなりやすいタイプを指し、尿路結石の合併が問題となります。

日本では高尿酸血症の表現型として、腎からの排泄が少ない「腎排泄低下型」に加え、産生増加や腸管排泄低下により腎臓に尿酸排泄の負担が集中する「腎負荷型」が区別されます。腎負荷型は尿酸の腎外排泄(主に腸管)低下も背景にあり得る点が特徴です。

腎負荷型は痛風発作のリスクに加えて、尿酸の尿中濃度上昇に伴う尿酸結石や腎機能への影響が懸念されます。そのため、関節の管理だけでなく、泌尿器・腎の合併症予防が治療目標に含まれます。

この分類は治療選択にも影響します。例えば、尿酸産生抑制薬の優先や、尿アルカリ化・水分摂取の指導がより重要になるなど、腎負荷型の特性に合わせたアプローチが推奨されます。

参考文献

病態と「腎負荷型」の意味

腎負荷型では、体内で作られる尿酸量が多い、もしくは腸管からの尿酸排泄が低下する結果、腎臓が担う尿酸排泄の割合が相対的に増えます。そのため尿中尿酸が多く、尿が酸性に傾くと尿酸結石が形成されやすくなります。

腸管からの尿酸排泄には輸送体ABCG2が関与し、その機能低下は腎外排泄を減らし腎臓の負担を高めることが示されています。これにより血清尿酸が上がるだけでなく、尿路結石や腎障害のリスクが上昇する可能性があります。

一方で、プリン体代謝の元進や細胞回転の増加などにより尿酸産生が増える場合も腎負荷型を来し得ます。この場合、尿酸の過剰産生が続くため、産生抑制による治療の有効性が高いとされます。

痛風発作自体は、関節内での尿酸塩結晶に対する自然免疫反応が引き金です。腎負荷型はその結晶形成の背景に高い尿酸負荷があるという位置づけで、結晶形成の母地を減らす長期管理が重要です。

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遺伝学的背景

血清尿酸値は遺伝的影響を強く受け、双生児研究では遺伝率がおよそ40〜60%と報告されています。痛風発症の遺伝率も相応に高いと考えられますが、環境因子との相互作用が大きいのが実際です。

代表的な関連遺伝子には、腎臓での再吸収に関わるSLC2A9、SLC22A12(URAT1)、分泌系のABCG2、SLC17A1/4などがあります。特にABCG2の機能低下バリアントは腎負荷型との関連が強いとされます。

日本人ではABCG2のQ141Kなどの機能低下バリアントの頻度が比較的高く、若年発症や重症化のリスク上昇と関連します。これらは腸管からの尿酸排泄低下を介して腎臓に負荷をかける機序と整合します。

ただし、単一の遺伝子で病態が決まるわけではありません。多遺伝子の累積効果(ポリジェニックリスク)と、肥満や食生活、薬剤などの環境要因が重なって臨床表現型が現れます。

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生活・環境因子

高プリン食、果糖過多、アルコール(特にビールや蒸留酒)、肥満、インスリン抵抗性、脱水、酸性尿などは尿酸値上昇や結晶形成を助長します。利尿薬の一部やシクロスポリンなどの薬剤も影響します。

食事と生活習慣の寄与は個人差がありますが、体重管理、節酒、果糖入り飲料の制限、野菜や低脂肪乳製品の摂取などは尿酸低下に有利とされ、発作抑制にもつながります。

痛風予防においては水分摂取が重要で、特に腎負荷型では尿量を保ち尿pHを適正化することで結石リスクを下げられます。クエン酸カリウムによる尿アルカリ化が有効な場合もあります。

運動はインスリン感受性を改善し、尿酸代謝にも良い影響を与えますが、脱水や過度の筋損傷は逆効果になり得るため、適度な強度と十分な補水が推奨されます。

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診断と治療の要点

検査では血清尿酸、腎機能、尿一般に加え、尿中尿酸排泄量や尿酸/クレアチニン比、分画排泄率(FEUA)などで表現型の推定が可能です。関節液から尿酸塩結晶を同定できれば確定診断となります。

腎負荷型では、結石予防のための水分摂取と尿アルカリ化が重要です。薬物療法は原則としてキサンチン酸化酵素阻害薬(アロプリノール、フェブキソスタット)が第一選択となります。

尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン、プロベネシド、ドチヌラドなど)は有効ですが、結石リスクが高い場合は慎重に使用し、十分な補水と尿アルカリ化を併用します。目標尿酸値は一般に6.0 mg/dL未満が推奨されます。

急性発作時はNSAIDs、コルヒチン、ステロイドなどで炎症を抑え、寛解後に尿酸降下療法を開始・継続します。長期管理では生活習慣の最適化と薬剤アドヒアランスが鍵です。

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