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拡張期血圧

目次

拡張期血圧の概要

拡張期血圧は血圧表示の下の値で、心臓が拡張して血液が心臓内へ戻る間に動脈にかかる圧力を指します。単位はmmHgで、上腕に巻くカフと自動血圧計のオシロメトリ法などで標準的に測定されます。

生理学的には主に末梢の小動脈の抵抗と動脈の弾性(コンプライアンス)を反映します。交感神経活動や内皮機能、血液量の変化が拡張期血圧に影響を及ぼします。

年齢とともに収縮期血圧は上がりやすく、拡張期血圧は中年でピークを迎えた後に動脈硬化の進行で低下していく傾向があります。これにより脈圧が拡大し、高齢者では収縮期の管理が重視されます。

診察室血圧では拡張期90mmHg以上が高血圧の目安とされることが多く、家庭血圧では85mmHg以上が基準とされます。複数日・複数回の平均で評価することが推奨されます。

参考文献

遺伝的要因と環境的要因の比率(%)

拡張期血圧を含む血圧の個人差は、双生児・家族研究から概ね30〜50%が遺伝要因により説明されます。残りは食塩摂取や体重、飲酒、運動、睡眠などの環境・行動要因の寄与です。

遺伝率は集団や年齢、測定方法によって幅があり、若年ではやや高く、高齢では環境や疾患の影響が相対的に大きくなることがあります。推定値は集団レベルの分散の割合を示す概念です。

環境要因には食塩過多、肥満、過度の飲酒、身体活動不足、ストレス、睡眠不足や睡眠時無呼吸、薬剤(NSAIDsなど)の影響が含まれます。これらの修正可能因子の管理が重要です。

遺伝と環境は相互作用し、塩感受性など特定の遺伝背景で環境の影響が強まることがあります。個人のリスク評価は両者を統合して考える必要があります。

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拡張期血圧の意味・解釈

拡張期血圧が高い状態は心血管病や脳卒中、腎障害のリスクを高めます。若年では末梢抵抗の亢進を示しやすく、孤立性拡張期高血圧でも長期的な管理が必要です。

診療では収縮期・拡張期・脈圧を総合的に解釈します。高齢者では動脈硬化により収縮期の重要度が増す一方、若年者では拡張期が血管抵抗の指標として有用です。

一方で拡張期血圧が過度に低い(例:<60〜70mmHg)場合、冠動脈灌流の低下と関連しうるとされ、特に冠動脈疾患を有する患者ではJカーブ現象に留意します。

測定は白衣高血圧や仮面高血圧の影響を考慮し、家庭血圧や24時間自由行動下血圧(ABPM)を併用して総合判断することが推奨されます。

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関与する遺伝子および変異

大規模ゲノムワイド関連解析(GWAS)により、拡張期血圧を含む血圧に関連する数百の遺伝子座が同定されています。これらは腎臓、血管平滑筋、ホルモン系など多様な経路にまたがります。

代表的な関連遺伝子にはATP2B1(カルシウム排出)、SH2B3(免疫シグナル)、GUCY1A3(NO-可溶性グアニル酸シクラーゼ)、UMOD(腎髄質タンパク)、CACNB2(カルシウムチャネル)などがあります。

各変異の効果は非常に小さく、個別に数mmHg未満です。多因子・多遺伝子性であり、累積効果を示すポリジェニックスコアが研究に用いられています。

薬理遺伝学的にはRAASやナトリウム輸送関連の遺伝子が反応性に影響しうると示唆されていますが、日常診療での遺伝学的検査の活用は現時点では限定的です。

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その他の知識

正確な測定には、5分以上の安静、適正カフサイズ、測定前30分の喫煙・カフェイン・運動回避、背もたれと足底の支持、上腕心臓位が重要です。家庭血圧は診療室より予後予測に優れます。

生活習慣の改善(減塩、減量、節酒、運動、DASH食)は拡張期血圧を低下させるエビデンスがあります。特に減塩と体重管理は効果が大きい介入です。

若年発症や治療抵抗性では二次性高血圧(腎実質性疾患、原発性アルドステロン症、睡眠時無呼吸など)を鑑別します。原因治療により拡張期血圧が改善しうるためです。

薬物治療では利尿薬、ACE阻害薬/ARB、カルシウム拮抗薬などを個別リスクに応じて組み合わせます。目標血圧は合併症や年齢で調整し、低すぎる拡張期には注意します。

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