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慢性原発性副腎機能不全

目次

概要

慢性原発性副腎機能不全(アジソン病)は、副腎皮質がゆっくりと障害され、ストレス応答や代謝を調整するコルチゾールと、体液・血圧を保つアルドステロンが慢性的に不足する病気です。現代では自己免疫による副腎皮質破壊が最も多い原因で、感染症や遺伝性疾患なども一部に認められます。

ホルモン不足は全身に影響し、だるさ、体重減少、低血圧、皮膚の色素沈着、塩分を欲する、消化器症状などがゆっくり進行します。進行すると副腎クリーゼと呼ばれる急性のショック状態を起こすことがあり、迅速な治療が必要です。

診断には早朝コルチゾールやACTHの測定、迅速ACTH負荷試験(コシントロピン試験)などが用いられます。自己免疫が疑われる場合は21-ヒドロキシラーゼ抗体測定が補助になります。電解質異常や血漿レニン活性の上昇も手掛かりです。

治療は生理的な量のグルココルチコイド(主にヒドロコルチゾン)補充と、アルドステロン欠乏に対するフルドロコルチゾン補充が基本です。感染や手術などのストレス時には増量(ストレス用量)が必要で、患者教育と緊急時対応が重要です。

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症状

慢性原発性副腎機能不全の症状は非特異的で、長期間にわたり徐々に現れます。代表的には全身倦怠感、易疲労感、食欲不振、体重減少、筋力低下、気分の落ち込みなどがみられ、風邪などの軽いストレスでも悪化しやすくなります。

原発性ではACTH高値により皮膚や口腔粘膜の色素沈着が目立つことがあります。アルドステロン不足により低血圧、起立性低血圧、塩分を強く欲する、脱水、めまいなどが生じます。電解質では低ナトリウム血症と高カリウム血症が典型です。

消化器症状としては悪心、嘔吐、腹痛、便通異常があり、原因不明の胃腸炎と誤認されることもあります。低血糖は特に小児や低体重の成人で目立つことがあります。乾燥肌、脱毛、冷えなどの訴えも稀ではありません。

病状が進むと副腎クリーゼを起こし、急激な血圧低下、意識障害、著明な電解質異常、低体温などで生命の危険に陥ります。早期の認識と、適切なホルモン補充・輸液による救命処置が不可欠です。

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発生機序と原因

最も一般的な機序は自己免疫性副腎炎で、自己抗体(21-ヒドロキシラーゼ抗体など)を伴い、副腎皮質束状帯・球状帯が破壊されます。これによりコルチゾールとアルドステロンが低下し、代償的にACTHとレニンが上昇します。

感染症では結核、副腎の真菌感染、HIV関連病変などが慢性破壊の原因となることがあります。過去には結が主要因でしたが、先進国では自己免疫が主因となっています。

出血や血栓症(抗凝固療法、抗リン脂質抗体症候群、敗血症など)は急性障害の機序として重要ですが、二次的に慢性不全へ移行することもあります。腫瘍浸潤や遺伝性代謝異常も稀な原因です。

薬剤性では免疫チェックポイント阻害薬により原発性副腎炎が生じることがあります。また遺伝性疾患としてAIRE変異によるAPS-1やX連鎖副腎白質ジストロフィー(ABCD1変異)などが原発性副腎不全を来します。

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診断と検査

診断の第一歩は早朝(通常8時頃)の血清コルチゾールとACTHの同時測定です。原発性ではコルチゾールが低く、ACTHが高いパターンが典型です。電解質異常(低ナトリウム、高カリウム)や血漿レニン活性の上昇も支持所見です。

確定には迅速ACTH負荷試験が用いられ、合成ACTH(コシントロピン)投与後のコルチゾール上昇が不十分であれば副腎原発の低下が示唆されます。自己免疫が疑われる場合は21-ヒドロキシラーゼ抗体測定が有用です。

原因精査としては胸腹部画像での副腎評価、感染症の検索、他の自己免疫疾患の合併確認などを行います。小児や若年発症では遺伝学的検査(AIRE、ABCD1など)を検討します。

副腎クリーゼが疑われる場面では、採血後ただちに静注ヒドロコルチゾンと輸液を開始し、検査結果を待たずに救命を優先します。診断は後方視的に確定させるのが原則です。

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治療と日常管理

基本はヒドロコルチゾンによる生理的なグルココルチコイド補充(通常1日2〜3回分割)と、アルドステロン欠乏に対するフルドロコルチゾンの補充です。暑熱や運動時には塩分摂取の調整が必要です。

感染、発熱、外傷、手術など身体的ストレス時には一時的にグルココルチコイドを増量する「シックデイルール」を理解し、嘔吐で内服できない場合は救急受診や自己注射製剤の使用を検討します。

患者教育は予後改善の鍵であり、ステロイドカードや医療用IDの携帯、緊急時の行動計画、家族や学校・職場への情報共有が推奨されます。副作用予防として過量投与を避け、骨粗鬆症や代謝への影響を定期的に評価します。

定期フォローでは症状、血圧、電解質、レニン活性、体重、疲労度などを総合的に見て用量を調整します。妊娠時や競技スポーツ参加時は専門医と連携し、個別化した管理を行います。

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