心室拍動数
目次
定義と臨床的意義
心室拍動数は、1分間に心室が収縮する回数を示し、臨床現場ではしばしば「心拍数」と同義に扱われます。とくに不整脈の文脈では、心房の動きと区別して心室が実際にどれほど拍動しているかが重要です。
洞結節で生じた電気刺激が房室結節を介して心室へ伝わり、心室拍動として現れます。伝導の遅延や遮断、異所性起源のリズムがあると、心室拍動数は洞調律から乖離します。
心室拍動数は血行動態の中心的指標で、血圧や酸素供給と密接に関係します。救急や集中治療では、変動の把握が病態の進行や治療反応の評価に直結します。
心房細動などでは心房の無秩序な興奮に対して、房室結節がフィルターの役割を持ち、結果として心室拍動数が決まります。したがって心室拍動数の管理が予後に影響します。
参考文献
測定法と理論
心室拍動数は心電図のQRS複合の間隔(RR間隔)から算出されます。RR間隔(秒)の逆数に60を掛けると1分あたりの拍動数となります。例:RRが0.8秒なら約75回/分です。
紙速度が25mm/秒の標準心電図では、大きなマス目5個=1秒です。300-150-100-75-60-50の暗算法則で、規則的リズムの大まかな心室拍動数を迅速に見積もれます。
非侵襲的ウェアラブルは光電式容積脈波(PPG)で拍動を検出します。PPGは末梢血管の容積変化を光学的に捉え、拍動間隔から拍動数を導きます。
手首や頸動脈の脈拍触診でも推定可能ですが、不整脈では脈拍欠損が生じるため、心電図での確認が推奨されます。
参考文献
正常範囲と解釈
安静時の心室拍動数は一般に60~100回/分です。アスリートや高い迷走神経緊張を持つ人では50回/分前後でも生理的なことがあります。
活発な運動中や発熱、脱水、ストレス時には上昇します。服薬(β遮断薬、甲状腺薬など)や電解質異常でも上下します。
持続的な>100回/分(洞性頻脈を含む)や<50回/分で症状を伴う場合は、評価が必要です。めまい、胸痛、息切れ、失神は警告サインです。
不整脈(心房細動の高頻拍応答、心室頻拍など)では、心室拍動数のコントロールが症状緩和と合併症予防に重要です。
参考文献
影響因子(遺伝と環境)
双生児研究やGWASから、安静時心拍(多くの場合心室拍動数に一致)の遺伝率は概ね30~60%と推定されます。残りは環境要因の寄与です。
遺伝学的解析では、自律神経機能や電気伝導に関わる遺伝子座が同定され、心拍数やリスクとの関連が示されています。
環境因子としては体力、年齢、睡眠、ストレス、カフェイン・アルコール、喫煙、甲状腺機能、貧血、発熱、脱水、薬剤などが大きく影響します。
個人差は遺伝と環境の相互作用で生じます。生活習慣の最適化により、遺伝的素因があっても心室拍動数を望ましい範囲に整えることが可能です。
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異常時の対応と予防
息切れ、胸痛、失神、冷汗、意識障害を伴う高頻拍・徐脈は救急受診が必要です。AEDや心肺蘇生が必要となる致死的不整脈の可能性もあります。
症状が軽度でも、持続的な安静時>100回/分や<50回/分は医療機関で精査を受けましょう。原因検索(心電図、採血、甲状腺機能など)が行われます。
脱水補正、発熱コントロール、カフェインやアルコールの調整、薬剤見直し、睡眠・ストレス管理、運動習慣の導入が一次対応の柱です。
心房細動では心室拍動数のレートコントロールや抗凝固療法が重要です。基礎心疾患が疑われる場合は循環器専門医の評価を受けてください。
参考文献

