Forest background
バイオインフォの森へようこそ

強直性脊椎炎

目次

概要

強直性脊椎炎は、背骨と仙腸関節(腰の付け根の関節)を中心に炎症が起き、時間とともに骨同士がくっついていく(強直)ことで、痛みやこわばり、可動域の低下を生じる慢性の炎症性疾患です。脊椎関節炎(スパンドyロアルスリーティス)というグループの一つで、ぶどう膜炎や大腸炎、乾癬など身体の他の部位にも症状を伴うことがあります。

10~30代での発症が多く、男性に多い傾向が知られています。朝のこわばりや運動で改善し、安静で悪化する「炎症性腰背部痛」が特徴です。早期にはレントゲンで異常が見えにくく、MRIで仙腸関節炎を確認して診断が進むこともあります。

原因は単一ではなく、遺伝的な素因(代表はHLA-B27)と、腸内細菌叢など環境因子の相互作用が関わると考えられています。免疫の偏り(IL-23/IL-17経路など)が炎症の持続に寄与します。

治療は、運動療法・姿勢指導などの非薬物療法に加え、NSAIDs(消炎鎮痛薬)、生物学的製剤(抗TNF、抗IL-17)、JAK阻害薬などを病状に応じて用います。目的は痛みの軽減、機能の維持、放射線学的進行の抑制です。

参考文献

症状

代表症状は、3カ月以上つづく腰背部痛と朝のこわばりです。じっとしていると悪化し、動くと楽になるのが典型的です。痛みはお尻(仙腸関節)から始まり、左右交互に出ることもあります。

背骨の靱帯が付着する場所(付着部)にも炎症が起こり、かかとの痛み(アキレス腱付着部炎、足底腱膜炎)などの付着部炎がみられます。胸郭が硬くなると息苦しさや深呼吸のしづらさを感じることもあります。

関節外症状としては、片目が赤く痛む急性前部ぶどう膜炎が比較的多く、再発を繰り返すことがあります。乾癬や炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)を合併する例もあります。

進行すると前かがみの姿勢が固定化し、首や腰の可動域が低下します。ただし最近は治療選択肢の向上により、多くの方で日常生活機能を良好に保てるようになっています。

参考文献

原因と発生機序

強直性脊椎炎は多因子疾患で、遺伝要因と環境要因の重なりで発症します。HLA-B27は最大の遺伝的リスクで、欧米人の多くで陽性ですが、日本人では頻度が低いことが知られています。

HLA-B27は抗原提示の性質を変え、自己反応性T細胞を活性化しやすくする可能性があります。さらにERAP1/2などの遺伝子はペプチド切断を変え、免疫応答の質に影響を及ぼすと考えられています。

もう一つの仮説は、HLA-B27の異常な折りたたみ(ミスフォールディング)による小胞体ストレスや、HLA-B27重合体が自然免疫にシグナルを与えて炎症を促進するというものです。

腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)も注目されており、腸管バリアの破綻→免疫活性化→骨付着部炎という経路でIL-23/IL-17軸が駆動され、骨の新生と強直につながると考えられます。

参考文献

診断と検査

診断の柱は、病歴(炎症性腰背部痛の特徴)、理学所見(仙腸関節圧痛、可動域制限)、炎症反応(CRP/ESR)、HLA-B27検査、画像(レントゲン・MRI)です。

早期ではレントゲン変化が乏しいため、MRIで骨髄浮腫などの炎症所見を捉えることが重要です。ASAS分類基準では、MRIの仙腸関節炎所見またはHLA-B27陽性と特徴的症状の組み合わせを重視します。

ぶどう膜炎や皮疹、腸症状などの併存を確認し、感染性脊椎炎や変形性脊椎症など他疾患を除外します。必要に応じて眼科・皮膚科・消化器内科と連携します。

進行評価には、BASDAIやASDAS(疾患活動性)、可動域(Schoberテスト等)、画像(修正ニューヨーク基準の進展)を用い、個々の治療目標を設定します。

参考文献

治療と生活

第一に全員に推奨されるのが運動療法と姿勢・呼吸訓練です。理学療法士の指導下で安全に背骨の柔軟性と胸郭拡張を保つことが、長期の機能維持に役立ちます。禁煙は重要です。

薬物療法は、NSAIDsの定期的な使用が基本で、効果不十分なら生物学的製剤(抗TNF、抗IL-17)やJAK阻害薬を検討します。局所の付着部炎には局所注射が奏功することもあります。

治療目標は「痛み・こわばりのコントロール」「機能維持」「構造的進行の抑制」です。ASAS-EULARやACRの推奨に基づき、共有意思決定で段階的に治療を組み立てます。

就労・学業・妊娠出産などライフイベントに合わせた調整、骨粗鬆症の予防(ビタミンD、負荷運動)、眼の症状の自己管理(早期受診)など、日常生活の工夫も重要です。

参考文献