幼児期の頭囲
目次
定義と重要性
幼児期の頭囲とは、乳幼児の頭の周囲長を一定の計測法で測定した値を指します。頭囲は脳や頭蓋骨の発育の指標で、身長・体重と並ぶ成長評価の基本指標の一つです。とくに0~2歳は脳が急速に成長するため、頭囲の追跡は発達のスクリーニングとして重要です。
頭囲は単独の診断名ではなく“計測値”ですが、年齢・性別対照と比べて極端に小さい(小頭)または大きい(大頭)場合、背景に神経発達や頭蓋内疾患が隠れている可能性があります。したがって、定期健診での継続的な測定と成長曲線へのプロットが推奨されます。
頭囲は一般に出生後急速に増加し、生後1年で約12cm前後増えるのが典型です。その後、増加速度は緩やかになります。こうした生理的なパターンから大きく外れるとき、追加評価が必要になります。
臨床では、WHOや各国の基準曲線(パーセンタイル)と比較し、低位(例:3パーセンタイル未満)や高位(97パーセンタイル超)か、またはZスコアでどれだけ乖離しているかを見ます。連続的な推移と家族歴の情報が、単回測定よりはるかに有用です。
参考文献
測定方法と注意点
頭囲は柔らかいメジャーで、前頭結節(前額の最も突出した点)と後頭隆起(後頭部の最も突出した点)を通る最大周囲で水平に測定します。髪の毛を押さえて皮膚に沿わせ、同じ測定者・同じ器具で再現性を高めることが重要です。
測定誤差を避けるため、2回以上測り平均を取る、泣いているときや大きく体動があるときは落ち着いてから測る、帽子やヘアアクセサリーを外すといった配慮が必要です。
計測値は年齢・性別に応じた成長曲線へ即時にプロットし、過去の推移と合わせて評価します。単回で境界値でも、家族性の体格や頭囲が大きい家系では生理的な範囲のことがあります。
電子カルテや母子健康手帳へ時系列に記録し、外来や健診で同じ基準を用いて継続的に比較します。誤差が懸念される際には日を改めた再測定が有用です。
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成長曲線と解釈
頭囲の解釈は、WHOや国内データのパーセンタイル曲線を用います。性別によって曲線は異なり、男児がやや大きい傾向があります。Zスコアでは平均からの標準偏差で離れ具合を数値化でき、縦断的な追跡に便利です。
出生後の頭囲は脳体積の増加を反映します。初年は最も伸びが大きく、その後は緩徐に増加します。急激な増加は水頭症など、伸び悩みは小頭症や栄養・感染・遺伝性疾患などを示唆しえます。
評価では絶対値だけでなく、傾き(増加速度)と家族歴が鍵です。家族性に大きめの頭囲(良性家族性大頭)では発達が正常であることが多く、経過観察で十分な場合があります。
一方で、けいれん・発達遅滞・嘔吐・易刺激性など神経症状を伴う頭囲異常は、画像検査や専門紹介の適応です。反復的なプロットと症状の有無を組み合わせた判断が推奨されます。
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異常(小頭症・大頭症)の背景
小頭症は年齢・性別の基準より頭囲が著しく小さい状態で、一次性(遺伝)と二次性(感染、胎内環境、低酸素など)に分類されます。神経発達の遅れやてんかんを合併することがあります。
大頭症は基準より大きい状態で、脳そのものの過成長(巨脳症)や脳脊髄液の循環障害(水頭症)、頭蓋外液貯留など多様な原因があります。良性家族性大頭は発達が良好なことが多いです。
小頭症の機序には神経前駆細胞の増殖不全やDNA修復異常、シナプス形成障害が含まれ、ASPMやWDR62などの遺伝子変異が知られています。環境要因としては先天感染(例:Zika、風疹)や胎児期の曝露が挙げられます。
大頭症の背景にはPTENやPIK3CA経路の異常(巨脳症)、髄液産生・吸収のバランス破綻(水頭症)などがあり、症候に応じて画像検査や遺伝学的検査が検討されます。
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受診の目安とフォロー
乳幼児健診で頭囲が連続してパーセンタイル帯から外れる、急に増減する、あるいは神経症状を伴う場合は小児科・小児神経科へ相談します。発達評価とともに、必要に応じて頭部超音波やMRI/CTを検討します。
水頭症が疑われるときは緊急性を伴うことがあり、嘔吐・眠気・眼球の下転(落陽現象)などに注意します。小頭症が疑われる場合は周産期歴や感染歴、家族歴と合わせて原因検索を進めます。
フォローでは、頭囲・身長・体重の時系列管理に加え、運動・言語・社会性などの発達マイルストンを併せて評価し、必要に応じてリハビリや療育につなげます。
家庭では母子健康手帳への記録と、健診受診の継続が重要です。疑問がある場合は計測時に医療者へ遠慮なく相談し、再測定や専門紹介の機会を確保してください。
参考文献

