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平均心拍数

目次

平均心拍数とは

平均心拍数とは、一定の時間枠における心拍数(1分あたりの鼓動数:bpm)の平均値を指します。臨床では安静時平均心拍数や24時間平均心拍数(Holter心電図)など、文脈によって計算区間が異なります。安静時は通常、座位で数分休んだ後に測定され、成人ではおおむね60〜100 bpmが「正常域」とされます。

この指標は自律神経(交感神経と副交感神経)のバランス、体力や持久性、年齢、体温、脱水、服薬(甲状腺ホルモン、β遮断薬、カフェインなど)といった多因子の影響を受けます。持久系アスリートでは副交感神経優位により40〜50 bpm台の低めの値が観察されることがあり、必ずしも病的ではありません。

一方で、持続的に高い安静時心拍(例:90〜100 bpm超)は、長期的な心血管イベントや死亡リスクの上昇と関連することがメタ解析で示唆されています。ただし、単一測定ではなく、複数回・複数日での再評価や併存症の確認が重要です。

平均心拍数はウェアラブル機器の普及で日常的にも取得可能になりました。ただし光学式(PPG)測定は運動中や冷え・皮膚色・装着具合で誤差が生じやすく、必要に応じて心電図(ECG)での確認が推奨されます。

参考文献

測定と評価のポイント

安静時平均心拍数を評価する際は、前提として安静状態の確保(座位・数分安静・カフェインや喫煙の直前回避・解熱)を行います。少なくとも別日を含む複数測定の平均を用いると、偶然的な変動をならせます。

24時間平均心拍数はHolter心電図で評価され、睡眠時の低心拍や日中活動による増加が加味されます。夜間の十分な低下(dipping)は自律神経機能の健全性の指標となり、非dippingは心血管リスクと関連しうると報告されています。

運動負荷に伴う心拍反応(加速度)と回復(減速)は心肺フィットネスや自律神経調整の手がかりになります。回復の遅延は予後不良と関連する研究があり、トレーニングにより改善が見込めます。

評価では年齢・性・体格・服薬歴・甲状腺機能・貧血・脱水・発熱・睡眠不足・ストレスの確認が不可欠です。高値・低値が持続する場合や症状(動悸、息切れ、めまい、失神)がある場合は、医療機関でECG・甲状腺機能・電解質・貧血などの精査が推奨されます。

参考文献

平均心拍数に影響する要因

短期的には体温上昇、発熱、脱水、疼痛、心理的ストレス、カフェインやアルコール、ニコチン、甲状腺ホルモン、β作動薬などが心拍を上げます。β遮断薬、非DHP系Ca拮抗薬、デジタリス、アスリートの高迷走神経緊張は心拍を下げます。

長期的には有酸素運動習慣や体重管理、睡眠の質改善、禁煙、過度の飲酒回避が安静時心拍の低下と関連します。逆に慢性的なストレス、睡眠時無呼吸、貧血や甲状腺機能亢進症は上昇要因となります。

年齢によって最大心拍数は低下する傾向があり(220−年齢は一つの目安)、活動時の目標心拍設定に用いられます。ただし個人差が大きく、服薬や疾患の影響を加味する必要があります。

遺伝的素因も平均心拍数に寄与します。双生児研究やゲノムワイド関連解析(GWAS)では、安静時心拍の遺伝率は概ね30〜50%(SNPベースでは約20〜25%)と推定され、環境要因と相互に作用します。

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臨床的な意味と解釈

安静時平均心拍数の持続的上昇は、交感神経優位、体力低下、潜在的な疾患(甲状腺機能亢進、貧血、感染など)を示唆しうる指標です。複数の前向き研究で、心拍が高いほど全死亡・心血管イベントリスクが漸増することが示されています。

一方で、低心拍(<50 bpm前後)はアスリートや睡眠時に生理的にみられることがあります。めまい、失神、運動耐容能低下などの症状が伴う場合は病的徐脈の可能性があり、精査やペースメーカーの適応評価が必要になります。

解釈では絶対値だけでなく文脈が重要です。発熱時や急性ストレス下の一過性上昇は病的とは限らず、鎮静・補液・原因治療で改善します。薬剤の影響(例:β遮断薬内服中の低値、甲状腺薬の過量)も必ず確認します。

生活介入(有酸素運動、禁煙、節酒、睡眠・ストレス管理)や心疾患・甲状腺疾患の適切な治療により、平均心拍数は改善し得ます。目標設定は個別化し、合併症や症状の有無、患者の価値観を踏まえて行います。

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関与する遺伝子と変異

GWASではHCN4、RGS6、GNB5、SCN10A、MYH6などが安静時心拍や心臓伝導に関連する座位として同定されています。これらは洞結節の自動能、房室伝導、交感・副交感調節に関わります。

HCN4は洞結節のペースメーカ電流(If)を担い、機能低下変異は家族性徐脈や洞不全症候群と関連します。一方、一部のバリアントは心拍の微小な差異として一般集団の変動に寄与します。

SCN10Aは心臓のNa+チャネルの修飾に関与し、QRS幅や房室伝導、心拍との関連が報告されています。RGS6やGNB5はGタンパク質シグナリングを通じて自律神経の拍動調整に関わります。

個々のSNPの効果量は小さく、総じて多因子・多遺伝子の寄与で平均心拍数が規定されます。したがって遺伝的リスクは環境介入(運動、体重管理、睡眠改善など)で相当程度修飾可能です。

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