少関節炎 若年性特発性関節炎
目次
定義と分類
少関節炎(oligoarticular JIA)は、若年性特発性関節炎(JIA)の下位分類の一つで、発症6か月時点で罹患関節が4関節以下の病型を指します。膝や足首など大関節に非対称性に起こりやすく、多くは6歳未満の女児に多いのが特徴です。持続性(終始4関節以下)と拡大型(経過中に5関節以上へ拡大)に分けられます。
国際的にはILAR分類が広く用いられてきましたが、最近はPRINTO/ACR/EULARの見直しで、臨床像・生物学的背景をより反映した枠組みに整理されつつあります。ただし臨床現場では依然としてILARの実務上の有用性が高く、少関節炎という臨床概念は保たれています。
少関節炎ではリウマトイド因子(RF)は通常陰性で、抗核抗体(ANA)が陽性のことが多く、この背景が眼の合併症である慢性前部ぶどう膜炎の高リスクと関連します。関節症状は穏やかに始まり、痛みよりも腫れや可動域制限、朝のこわばりが目立つことがあります。
診断は、6週間以上持続する関節炎が16歳未満に発症し、他原因が除外されることを前提に、罹患関節数や検査所見、経過から総合的に行います。画像検査では超音波が滑膜炎や関節液貯留の評価に有用で、X線やMRIは関節障害の評価や鑑別に用いられます。
参考文献
- PRINTO 患者向け解説:若年性特発性関節炎(日本語)
- NIAMS: Juvenile Arthritis
- Ravelli & Martini. Juvenile idiopathic arthritis. Lancet (PubMed)
疫学と患者像
JIA全体の発症率は世界で年間1~22/10万人、小児人口当たりの有病率は16~400/10万人と地域差があります。欧米では少関節炎がJIAの中で最も一般的で、約半数を占めると報告されています。日本でも女児優位で幼児期発症が多い点は共通ですが、全体の頻度は欧米よりやや低い傾向が示唆されています。
日本における正確な発症・有病率は研究により幅がありますが、概ね有病率で10~20/10万人程度と推定されています。診断や医療アクセス、登録の制度差が数値のばらつきに影響します。
性差としては女児が男児の約2~3倍多く、特に6歳未満発症のANA陽性少関節炎で顕著です。関節の罹患部位は膝、足首、肘が多く、手関節や股関節は比較的少ないとされます。
拡大型少関節炎は初期は少関節でも経過中に5関節以上へ拡大し、治療方針が持続型と異なることがあります。眼合併症のリスクはANA陽性・若年発症で高く、無症状で進行するため系統的なスリットランプ検査が重要です。
参考文献
- CDC: Arthritis in children
- PRINTO 患者向け解説:若年性特発性関節炎(日本語)
- ACR/Arthritis Foundation guideline for JIA-associated uveitis (2019)
症状と合併症(ぶどう膜炎を含む)
少関節炎の主症状は、1~4関節の腫れ、熱感、可動域制限、朝のこわばりです。痛みは軽度~中等度で、幼児では痛みを訴えず跛行や活動性低下で気づかれることがあります。全身症状は通常軽度ですが、活動性が高いと倦怠感や微熱がみられることもあります。
慢性前部ぶどう膜炎は重要な合併症で、視力低下の原因となり得ます。多くは無症状に進行するため、特にANA陽性・6歳未満発症では3~12か月ごとの定期的な眼科スクリーニングが推奨されます。
長期的には、罹患肢の過成長や脚長差、関節の変形や拘縮が生じることがあります。適切な抗炎症治療とリハビリで多くは予防・軽減可能です。
検査では炎症反応(ESR/CRP)は軽度上昇~正常のこともあり、ANA陽性が多い一方、RFは陰性です。画像では関節超音波やMRIで滑膜炎・関節液貯留が確認でき、X線は慢性変化の評価に有用です。
参考文献
- NIAMS: Juvenile Arthritis
- ACR/Arthritis Foundation guideline for JIA-associated uveitis (2019)
- PRINTO 患者向け解説:若年性特発性関節炎(日本語)
病因・遺伝と環境
少関節炎は多因子性の自己免疫・自己炎症性疾患で、HLAクラスIIを中心とする抗原提示の遺伝的素因に、環境因子(感染、腸内細菌叢変化、抗生物質曝露など)が重なり、滑膜の免疫応答が破綻して慢性炎症が続くと考えられています。
免疫学的には滑膜での樹状細胞・マクロファージ活性化、Th17/Tregバランスの破綻、TNFやIL-6など炎症性サイトカインの産生亢進が関与します。これが血管新生や滑膜増殖、関節軟骨・骨への二次的障害につながります。
遺伝学研究では、HLA-DRB1やHLA-DPB1などのクラスII領域、非HLAではPTPN22、STAT4、IL2RAなどが関連候補として再現性を持って報告されています。オリゴ関節炎に特異的なHLAハプロタイプの関与も示されています。
一方で、一卵性双生児でも不一致例が多く、遺伝のみで説明できません。小児期の抗生物質使用歴とJIAリスク上昇の関連が報告されるなど、環境因子の影響が注目されていますが、因果関係や個々の寄与割合は確定していません。
参考文献
- Prahalad S. Genetic basis of JIA (PubMed)
- Hinks A et al. Immunochip study implicating multiple loci (PubMed)
- Antibiotic Exposure and Risk for Childhood JIA (Pediatrics)
診断と治療
診断は臨床像と除外診断が中心で、関節超音波やMRIを補助に用います。鑑別には感染性関節炎、反応性関節炎、血液腫瘍、外傷などが含まれます。
治療は活動性・罹患関節数・合併症で層別化します。まずNSAIDsや関節内ステロイド注入(特にトリアムシノロン・ヘキサセトニド)が推奨され、持続活動性や拡大型ではメトトレキサート等の従来型DMARDsを追加します。
効果不十分な場合は生物学的製剤(TNF阻害薬:エタネルセプト、アダリムマブ等、場合によりアバタセプト、トシリズマブなど)を段階的に導入します。ぶどう膜炎合併ではアダリムマブなどエビデンスの高い薬剤選択が重要です。
理学療法・作業療法、生活指導、定期的な眼科スクリーニングを組み合わせ、寛解維持を目標に薬剤の漸減・中止を検討します。ワクチンは不活化を基本に、免疫抑制下の生ワクチンは慎重に扱います。
参考文献

