好酸球数
目次
- 好酸球数の概要
- 好酸球数の遺伝的要因と環境的要因の比率(%)
- 好酸球数を調べる意味
- 好酸球数の数値の解釈
- 好酸球数の正常値の範囲
- 好酸球数が異常値の場合の対処
- 好酸球数を定量する方法とその理論
- 好酸球数のヒトにおける生物学的な役割
- 好酸球数に関するその他の知識
好酸球数の概要
好酸球は白血球の一種で、寄生虫への防御やアレルギー反応に関与します。末梢血中の好酸球数(AEC: absolute eosinophil count)は、全身の炎症や免疫の状態を反映する指標であり、血算(CBC)と白血球分類で定量されます。臨床では、数値の増減が感染症、薬剤反応、アレルギー疾患、好酸球関連疾患の手掛かりになります。
好酸球は骨髄で産生され、血中を短時間循環した後、主に粘膜や組織に移行します。顆粒内には塩基性蛋白(MBP、ECPなど)を含み、放出されると寄生虫の障害や組織の炎症を引き起こします。そのため生理的役割と病的役割の両面を持ちます。
血液検査では、好酸球数は相対値(%)と絶対数(/μLまたは×10^9/L)の2通りで示されます。臨床解釈では絶対数が重要で、その他の白血球の増減に影響されないため、異常の程度評価に適しています。通常、成人では好酸球は白血球の約1〜3%を占めます。
好酸球数の評価は、症状(咳、喘鳴、皮疹、腹痛)、渡航歴、動物接触、薬剤歴、寄生虫曝露などの情報と組み合わせて行います。単回の軽度上昇は生理的変動のこともあり、再検での確認が推奨されます。
参考文献
- MedlinePlus: Eosinophil count
- Merck Manual Consumer: Eosinophilia
- ARUP Consult: Eosinophil-Associated Diseases
好酸球数の遺伝的要因と環境的要因の比率(%)
好酸球数には遺伝と環境の双方が影響します。ゲノムワイド関連解析(GWAS)では、IL5/IL5RA、IL33、GATA2など免疫調節に関わる座位が好酸球数に関連することが示されています。これらは好酸球の分化・生存を調節し、生得的に高低の傾向を生みます。
一方、寄生虫感染、アレルゲン曝露、喫煙、薬剤、季節性の花粉、地理的要因などの環境因子は好酸球数を大きく変動させます。発展途上地域での寄生虫流行地域では、集団平均の好酸球数が高めになることが知られています。
遺伝率(遺伝によって説明されるばらつきの割合)は研究により幅がありますが、SNPベースの遺伝率は概ね15〜25%程度と報告され、双生児研究では30〜60%程度と推定する報告もあります。したがって目安として、遺伝要因が約20〜40%、環境要因が約60〜80%と考えるのが現実的です。
これらの推定は集団や測定法、年齢構成、寄生虫罹患率などに依存して変わります。臨床現場では、まず環境・後天要因の検索を優先しつつ、家族歴や若年からの高度異常、合併症から遺伝的背景を検討します。
参考文献
- Nature (Astle et al., 2016): The allelic landscape of human blood cell trait variation
- Nature (Vuckovic et al., 2020): The polygenic and monogenic basis of blood traits
- Merck Manual Consumer: Eosinophilia
好酸球数を調べる意味
好酸球の増加(好酸球増多)は、寄生虫感染、薬剤反応、アレルギー疾患(喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎)、自己免疫、悪性腫瘍、好酸球性消化管疾患や好酸球性肺炎などのシグナルになり得ます。早期に把握することで原因検索や治療選択が進みます。
逆に、好酸球の低下(好酸球減少)は全身性または局所のステロイド使用、急性感染、強いストレス、Cushing症候群などでみられます。減少自体は多くが一過性ですが、背景に免疫不全や骨髄抑制がないかの評価に役立ちます。
喘息では、血中好酸球数は一部で気道好酸球炎の指標となり、吸入ステロイド反応性や抗IL-5抗体など生物学的製剤の適応判断に資することがあります。絶対数を定期的に測ることで病勢のモニタリングの一助となります。
健診や術前評価でも好酸球数は一般的に含まれ、無症候性の異常を拾い上げます。異常が見つかった場合は、問診(旅歴、食事、ペット、薬剤)、便検査、胸部画像、IgE、寄生虫血清学など適切な追加検査を検討します。
参考文献
- Testing.com: Absolute Eosinophil Count (AEC)
- ARUP Consult: Eosinophil-Associated Diseases
- Merck Manual Consumer: Eosinophilia
好酸球数の数値の解釈
解釈では、相対値(%)ではなく絶対好酸球数(AEC, /μL または ×10^9/L)が重要です。他の白血球が増減すると%は見かけ上変動するため、絶対数で評価することで真の増多や減少を判断できます。
成人ではAECが500/μL(0.5×10^9/L)を超えると好酸球増多とされ、1500/μL(1.5×10^9/L)以上が持続すると臓器障害リスクが高まるため、精査が推奨されます。重症度は軽度(0.5〜1.5)、中等度(1.5〜5.0)、重度(>5.0×10^9/L)と分類されます。
日内変動や季節変動、運動、ストレス、食事、採血体位、喫煙などでも好酸球は変化します。ステロイドは好酸球を低下させ、抗IL-5薬は著明に低下させるため、投薬状況の確認は必須です。
無症状の軽度増多は再検で正常化することもあります。臨床症状、持続性、臓器障害所見、末梢血塗抹や骨髄所見、好酸球顆粒蛋白やトリプターゼなどを踏まえ、反応性かクローン性かを区別します。
参考文献
好酸球数の正常値の範囲
一般に成人のAECは0〜500/μL(0.0〜0.5×10^9/L)が多くの施設の基準範囲です。白血球に占める割合では約1〜3%ですが、施設差があり0〜6%を基準とする場合もあります。基準値は検査法や人種、地域、年齢で違いがあります。
小児では相対的に好酸球が高めに出ることがあり、年少児では上限がやや高く設定されることがあります。また、寄生虫流行地域やアレルゲン曝露が多い地域では集団レベルの平均値が高くなる傾向があります。
妊娠中は生理的変化や希釈効果により白血球分画が変動することがあり、個別の妊婦基準範囲を参照することが望ましいです。検査室ごとに定めた基準値を確認し、同一施設・同一法での経時的比較が有用です。
基準範囲は「健康な集団の95%が入る区間」を意味し、範囲外であっても必ずしも疾病とは限りません。臨床症状や他の検査と合わせて総合的に判断します。
参考文献
好酸球数が異常値の場合の対処
軽度の無症候性増多では、薬剤やサプリの中止、寄生虫曝露の有無の確認、アレルゲン回避策などを行い、1〜3か月での再検を行います。持続する場合や中等度以上では、追加検査や専門医紹介を検討します。
原因検索としては、詳細な問診、身体診察、末梢血塗抹、便虫卵検査、胸部画像、肝機能・腎機能、IgE、トリプターゼ、寄生虫血清、自己抗体、必要に応じ骨髄検査や融合遺伝子(例:FIP1L1-PDGFRA)の評価を行います。
重度または臓器障害を伴う場合は早急な対応が必要です。寄生虫症には駆虫薬、薬剤性は原因薬の中止、喘息や鼻炎には吸入/点鼻ステロイドや抗ロイコトリエン、好酸球性消化管疾患には食事療法やステロイド、クローン性ではチロシンキナーゼ阻害薬など、原因に応じて治療します。
好酸球減少は多くが一過性ですが、持続する場合は薬剤性、内分泌異常、感染、造血低下などを検討します。ステロイド中止や基礎疾患治療で回復することが多いです。
参考文献
好酸球数を定量する方法とその理論
好酸球数は通常、全血で行う完全血球計算(CBC)と白血球分類で測定されます。自動血球計数装置は、白血球をサブセットに分けてカウントし、好酸球の絶対数と割合を報告します。測定は採血後速やかに行うのが望ましく、時間経過や保存条件で分画が変化することがあります。
計数の基本原理の一つはCoulter原理です。微小孔を通過する細胞によって電気抵抗が変化し、パルスの大きさから細胞の体積を推定して数をカウントします。白血球分画は、体積・電気伝導度・散乱光(VCS)やレーザー散乱を組み合わせることで区別されます。
一部の装置は蛍光色素で核酸や顆粒を染色し、フローサイトメトリー様の多次元解析で好酸球を識別します。これにより好中球や単球、リンパ球、好酸球、好塩基球の識別精度が向上します。
異常フラグが出た場合や精度確認のため、手作業の末梢血塗抹標本での顕微鏡下分類(手分類)を併用することがあります。検査室は外部精度管理を行い、機器校正や試薬管理で再現性を担保します。
参考文献
- Beckman Coulter: Coulter Principle
- Testing.com: Complete Blood Count (CBC)
- Sysmex Technology (Hematology)
好酸球数のヒトにおける生物学的な役割
好酸球は寄生虫(特に線虫)に対する防御で重要です。IL-5により活性化・増殖し、主要塩基性蛋白(MBP)、好酸球陽イオン蛋白(ECP)などの顆粒蛋白を放出して標的を傷害します。IgE依存性の機序も関与し、肥満細胞や好塩基球と連携します。
アレルギー疾患では、好酸球は気道粘膜や皮膚、消化管で炎症を維持・増悪させ、組織リモデリングに関与します。喘息の一部表現型では好酸球が中心的役割を担い、抗IL-5/IL-5R治療が有効です。
一方で、好酸球は組織恒常性の維持にも関わります。例えば脂肪組織でのIL-4/IL-13を介した代謝調節、創傷治癒、免疫応答の調整など、生理的役割が近年明らかになってきました。
過剰な活性化は臓器障害を引き起こします。心筋、肺、神経、消化管、皮膚などに浸潤し、サイトカインや顆粒蛋白で組織傷害や血栓傾向を招くことがあり、早期の診断と管理が重要です。
参考文献
- Nature Reviews Immunology: Eosinophils in health and disease (review)
- Merck Manual Consumer: Eosinophilia
好酸球数に関するその他の知識
好酸球には日内リズムがあり、夜間にやや高く日中に低い傾向があります。採血時間や直前の運動、ストレス、体位の違いでも値が変わるため、経時的な比較は条件を揃えると解釈が安定します。
吸入・経口ステロイドは好酸球を低下させ、抗IL-5/IL-5R抗体は著減させます。逆に、寄生虫感染や薬疹、アスピリン過敏喘息などでは上昇します。薬剤歴の聴取は解釈に不可欠です。
地理的・季節的要因も重要です。寄生虫の流行、花粉飛散、ダニ曝露などで集団レベルの好酸球数や個人の季節変動が起きます。海外渡航後の上昇は寄生虫感染の可能性を考慮します。
検体の取り扱いも重要です。長時間の放置や温度管理不良は白血球分画のアーチファクトを招くことがあります。異常値は臨床情報と合わせ、必要なら再採血で確認します。
参考文献

